❖ここまで進んでいるI C T活用と業務改善・・・中編
2022.01.05 |投稿者:神内秀之介
早速前回の続きとなります。ワークフロー全体を改善しケア品質の向上を目指しているHitomeQケアサポートシステムの具体的な業務改善につながる機能を紹介します。
①起床や離床、転倒・転落をナースコールの通知時に入居者のライブな様子が手元のスマートフォンの映像で確認可能となり、状況を判断してから行動することができる『状況を「見て行動」機能』。
当然のことですが、常時見守りと言っても、入居者のプライバシーは保護されており、起床や離床、転倒・転落のナースコールの通知時がない限り、職員のスマートフォンから入居者の様子を確認することはできません。こちらから勝手に覗き見や監視はできない仕組みになっています。
②呼吸による体動の異常を通知できるため、スタッフの人数が少ない夜間の巡回業務負荷を軽減できる。『胸の動きによる体動異常通知で「安否確認」機能』。これによりベッド上の状況やしっかりと睡眠しているかわかり入居者のライブでの状況とで定量的な覚醒・非覚醒状況が把握できます。
③転倒・転落発生時、事故前後1分間(現時点)の状況が動画で記録できるため、原因究明や適切なケアを行うことができる『転倒・転落時の「エビデンス」機能』。これにより目の前でそのアクシデントを見ていなくても、密室である居室で起こった転倒転落の内容を正確に把握することができ、事故の本当の原因と再発防止策策定の根拠を確認することができます。
また、映像記録は、転倒・転落時以外はレコードされないため、プライバシー保護にも配慮されています。
④介護職員などはスマートフォンを使い、その場でケア記録の入力ができます。記入ミスや転記ミスを防止し、記録作成時間を削減できる『その場で「ケア記録作成」機能』。
この機能を活用することで、記録のミス・転記ミスの低減はもちろんですが、複数の記録用紙に記載することやステーションなどに戻っての記録がなくなり業務の効率化につながるとともに、即時記録によりケア提供時間と内容の精度が向上し、入居者の生活パターンや行動パターンの正確な把握につながり、施設サービス計画書などへの反映される記録の精度向上につながります。
⑤スマートフォンを使いリアルタイムに入居者情報を他の介護職員などに配信できるため、情報共有の時間を削減できる『即時・確実な「情報共有」機能』。誰がどの支援をいつ誰にしたのか、また今、他の職員がどこにいて誰に対してどんな支援をしているのかが手元のスマートフォンで確認できます。
それまでのそれぞれの入居者への支援の内容も把握できるので、ミーティング前後にも職員が各々確認できるので、現在課題となっている密になってのミーティング時間の短縮も可能となります。また当然ですが、スマートフォンなので都度通話もできます。
⑥起床や離床、転倒・転落、ナースコールの通知時に入居者の様子を映像で確認できるため、状況を見ながら声がけができます。事実に即して入居者に行動を促すことで「自立支援」につながる『入居者の自立を促す「お声がけ」機能』。
事故発生防止のための予防的な静止や効率優先な職員の介入による過介護を避け、入居者自身の動き出しや自立を促進するコミュニケーションをとることができます。
その上で、このシステムの優れているところは、単純にカメラによるセンシングにより居室での入居者のイベントやスタッフの行動を可視化するだけではなく、その収集したデータを解析・行動分析してケアにフィードバックする機能があることです。
その機能であるケアルーペは入居者やスタッフの行動データを自らタイムスタディーなどで観察分析することなく分かりやすく可視化するツールです。
ケアルーペの活用により、入居者の状態変化や、スタッフの対応状況を定量的に把握、客観的に判断し適切なケアを実行することができます。ケアサポートシステムから得られた入居者とスタッフの行動データを蓄積、そのデータを分析・見える化し、得られた情報を基にして客観的な判断をし、入居者に合わせた最適なケアやスタッフの業務効率化に活用することができます。
入居者の状態、スタッフの業務状況を様々な切り口で分析した結果がレコメンドとして提供されます。
例えば入居者の睡眠状態にケア実績を重ねることで、ケアの効果確認と方針検討ができます。入居者の一日ごとの起床通知数の推移から、夜間の起床が増えていることに気付き、生活リズムの変化に対応できます。ユニットごとのスタッフのナースコール対応までの時間から業務負荷を把握し、平準化対策が検討できます。
しかし、I C Tソリューションの活用で介護現場のワークフローを変えていくためには、A I・I C Tや取得したデータを使いこなす必要があります、しかし介護現場ではこれまで専門の職員がいない、もしくは少ないのが現状です。
そこでコニカミノルタでは、介護施設の人材を、現場でITを使いこなすことができる「ケアディレクター」として育成するサービスを提案しています。
ケアディレクターサービスでは、システムに蓄積されたデータを活用し、業務ルールの抜本的見直しなどを、現場のスタッフとともに構築していきます。
例えば、データを分析した結果、夜間巡回が実は入居者の安眠の妨げになっていることがわかりました。そこで、夜間巡回廃止の実証実験を行ったところ、入居者の起床回数も減り、良眠が得られるという結果になりました。
起床回数が減ることで、転倒のリスクを下げることにもつながります。介護スタッフも夜間訪室回数が減少し、業務負荷を低減することができます。
このようにデータを活用することで、将来的に入居者一人ひとりが必要とするケアを予測できるようになり、介護スタッフの動き方が変わり、介護サービスの質がより高くなっていく改善が導き出されます。
これらが提案しているシステムは本来であれば各施設などで、これまで人を募集し採用し、人材を育成し人財化する中でできていたものが、(なかには出来ているところもありますが)人手不足や時間不足などから出来なくなってしまったのが多くの施設の現状です。I C Tソリューションとうまく付き合いながら、次の準備をすることも一つの戦略かもしれません。