❖これだけは準備しよう!介護ソフト選定前に・・・前編
2021.12.29 |投稿者:神内秀之介
最近(とわ言っても昨年2020年ですが)、施設や事業所の経営者や管理者、また現場の方々、結局みなさんなのですが、お会いする方々から連載の影響もあるのでしょうが、介護ソフト何がいいの?介護ロボットどれ買ったら良いの?I C T機器はどれにしたら良いのなどと問い合わせを頂戴いたします。ありがとうございます。斡旋業者ではないので、メリットはありませんが。
そこで今回は、間接業務改善で一番活用する基本的なツールとしての介護ソフトの選定についてお伝えしていきたいと思います。A IやI C Tソリューションの導入についても基本的には同様の考え方やプロセスとなりますので、どうぞ是非参考にしていただければと思います。
現在介護や福祉のレセプトや記録を支援する介護ソフトメーカーは、大手やベンチャーなど大小合わせて100社くらい存在しています。その介護ソフトメーカーから、結果1つか、またはその用途によって2、3つの介護ソフトに絞り込みを導入することとなります。しかし、あまりに選択肢が多いため、冒頭にあったように、結局どれを選んでいいかわからないから、何を買ったら良いのと聞きたくなるといった状況に陥るのかと思います。
しかしながら、適当に価格やパンフレッドだけで安易に選んでしまうと、最悪の場合、全く希望したイメージで使えないことや業務改善どころか業務効率の悪化につながってしまう恐れがあります。
だいたい介護ソフト選びで失敗する大きな原因として、正しい考え方・方法できちんと比較をしていないことにあると言われています。そしてその比較がうまくいかない原因が大きく3つあると言われています。この先を読んでみて、自分たちが引っ掛かりそうな事柄があれば、気をつけてください。
①「広告戦略にハマってしまう」です。わかっていることだとは思いますが、大手などの経営体力があるメーカーほど、広告戦略に多額の費用を投じることができます。最近では私たちもほとんどインターネットサイトでの検索だと思いますので、介護ソフトメーカーはGoogleやYahoo、TwitterやFacebookなど様々な広告を出しています。
しかし、これも少し考えれば納得ですが、先ほどのように広告を多く出しているのは、比較的大手であることが多いため、小・中規模やベンチャーなどのメーカーの介護ソフトを知ることなく介護ソフトを決定してしまうケースも少なくありません。
最近では、「通所型特化ソフト」や「訪問介護特化型ソフト」・「訪問看護特化型ソフト」などそのサービス種別に合わせた開発をしている中小規模の企業もあります。
大切なのは、自施設・事業所の課題解決に役立つソフトです。ハイスペック・フルサービス・フルパッケージが必ずしも良いとは限りません。自分たちの考えで納得して最適なソフトを選び出すことが重要です。
②「価格の安さを第一優先にしてしまう」です。これが一番多いかもしれません。しかし、「安さ」だけを第一優先として選定した事業所は高確率で何らかの失敗していることがあります。
もちろん課題が解決できるのであれば価格は安ければ安いに越したことはありません。しかし、いつの間にか選択価値の第一定義を価格に奪われ、安さを最重要視するあまりに、ただ新しい介護ソフトを導入しただけで、何も業務改善がなされていなくて、機能の一部だけしか活用できていない事業所が結構借ります。
確かにこの連載でも幾度となく、A I・I C Tソリューションの導入障壁の第一位は導入費用で、限られた介護報酬の下厳しい経営を強いられ「無い袖は振れない」という状況は痛いほどわかりますが、介護ソフトは一度購入すると短期間使用するものでなく、少なくても3年から5年、場合によってはバージョンアップや更新しながら10年以上の年数を使い続けることになります。
ですから中長期的な視点での「業務改善」を最優先の価値として介護ソフト選びをすることが大切です。
③「営業・担当の対応で判断してしまうこと」です。まれにではありますが、営業や担当の説明(セールストーク)がすごく良かったとかその営業や担当者ならサポート体制が期待できる、先代からの付き合いがあるなどを一つの評価として選定することがありますが、営業や担当次第で介護ソフトを決定してしまうのは注意が必要です。
そもそも介護ソフトの導入目的は「課題解決」や「望む結果を得るため」であって、営業や担当の対応云々は全く関係ないためです。もちろん機能や価格、課題解決効果が期待できることが比較検討済みで営業や担当が良いことは尚良いことです。
しかし、かりに自施設・事業所にとって最高の介護ソフトが目の前で紹介されているのに、営業や担当の対応が気に入らなかったとか新人だから信用出来ないなどという理由で選択候補から外してしまえば、大きな機会損失となり後々不利益を被るのは施設事業所ということになります。
ただ営業や担当に課題があるのであれば、その方を変えてもらえばよいだけです。こちらが冷静に対応することが必要です。このようなこと惑わされないように気をつけて、しっかりと必要な数を比較することが重要です。
もし介護ソフト選定で失敗した場合大きな代償を払うのは施設事業所側です。典型的で一番残念な代償が、「導入の原因となった課題が解決できていない」です。たくさん機能がついているのに一番改善を期待していた機能がそれほどでもないとなると、他にどんな良い機能があっても台無しです。
さらに「いつまでたってもスタッフが操作を覚えられない」です。「多機能な介護ソフト=良いソフト」ではありません。機能が優れていても高度な操作や知識などが必要では効率はいつまでたってもあがりません。少なくてもスタッフが最低限の操作は何も見なくてもできる程度でなくてはなりません。
そして、「想定以上にトータルコストが高くついた」です。介護ソフトによっては、契約後に追加費用が発生するものもあります。ソフト導入したパソコンが故障した、パソコンの入れ替えがあったことで介護ソフトの「再インストール費用」が必要となり、法改正のたびに「バージョンアップ費用」が伴うなどです。また、最近よくありますが、メーカーが北海道などに支店や営業所がなく、オンサイトのサポートが対応していない場合など、再操作や設定の説明を依頼すると想定以上の費用が請求されることもあります。
また最近流行のサブスクモデルで月額制の介護ソフトにおいては後々想定以上の「値上げ」もありえます。初めから導入費用が低く後から高くなることがわかっていれば良いですが、確認漏れなどがあると後から痛い目に遭います。介護ソフトを契約する前にトータルコストをしっかりと確認しておくことが重要です。
また、初めに確認する事項として、「サポート体制に不満や不安があること」です。実際に「コールセンターから何時間も折り返しがなく、翌日になった」とか、自動音声メッセージで肝心なことを聞くまでに時間と手間がかかる、そもそもチャットでしか対応していないなど、問い合わせ一つでも大変だったという事例も耳にします。
介護ソフトなどの仕組みがわからないものは、正直自分たちでなんとか直すとかの代物ではありません。どうすることもできません。またその間、スタッフ一人がその対応に奪われたり、最悪全体の作業が止まったりと被害は甚大になります。大切な事柄なので、いざという時の対応についてあらかじめ様々なシチュエーションを想定して、一つひとつ確認しておくことも忘れないようにしましょう。
今回は、介護ソフト選定のための心構え的な準備のお話をしました。次回はより具体的な選定までの流れとポイントについてお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。