❖春の報酬改定前の振り返り③


2021.12.15 |投稿者:神内秀之介

前回では、後半から「規制改革の推進に関する答申」の医療・介護分野の2つ「1持続可能な社会保障制度の基盤整備」及び「2健康づくり・高水準の医療サービスの創出」の大きな柱とそれに関連する課題として「ICTの利活用」について6つの項立中の2番目の項、介護サービスの生産性向上のうち「ア・介護事業者の行政対応・間接業務に係る負担軽減」についてお伝えしました。私個人では、署名捺印の課題と行政のローカル・ルールの課題と事業所独自帳票の課題の3つそれぞれ関連ある項目なので一気に一緒に早急に、ホップ・ステップ・ジャンプで解決されることを期待しています。その前に各施設・事業所でも先を見越した課題整理を先行して行いたいものですね。今回はもう一つの「イ・ICT・ロボット・AI等の導入推進」に関係した雑感をお伝えしたいと思います。

「イ ICT・ロボット・AI等の導入推進」では、基本的な考え方として、「介護利用者の安否確認の方法として、センサーや外部通信機能を備えた見守り支援機器の活用によって定時巡視が効率化されることについて周知し、施設基準において、ICT・ロボット・AI等の活用によって人が行う業務の効率化を積極的に認めていく。」としています。これは、2018年(平成30年)介護報酬改定の際に一部先行導入された介護職員の夜勤配置基準の更なる推進を示唆しています。今後の連載でお伝えしていきますが、先行施設ではすでにかなりの有益な実証データが出ています。とある社会福祉法人の特養では、介護職員1名での見守り体制が介護職員1名対利用者2.8名までケア品質を下げずに改善された事例が報告されています。しかもそれは、調子の良い時の一瞬ではなく定着した状態でのことです。最近では夜間の定期巡回の廃止ルールやさらにコロナ禍での見守りを含めた非接触介護の在り方についてもかなり有益な実践とそれに伴うデータが報告されています。

このような様々な先行成功事例については、答申の中で「また、介護施設におけるテクノロジーの導入の有無による比較対象を設定した効果検証を実施し、当該検証結果を踏まえながら、介護報酬等への評価につなげる。」としており、次回の2021年(令和3年)改定やさらに地域包括ケアシステム構築達成目標年の2025年前最後の改定となる2024年(令和6年)改定で人員基準の見直しや加算の見直しを行うことを示唆しています。

また、在宅へ話題を向けると、在宅ケアの要となる介護支援専門員の業務についても言及しています。「介護支援専門員のモニタリング訪問、サービス担当者会議については、テレビ会議、ビジネスチャット等のICT活用による訪問等の代替を含めた業務負担軽減について検討する」と言及されています。こちらも奇しくも今回のコロナ禍の特例措置で先行実施されており、全国で現状実施されている様々な先行事例や実施データを元に具体的に検証が進められることが想定されます。

こちらも2018年(平成30年)改定ではリハビリテーション 関係の会議については医師のテレビ会議参加について認め済でしたので、これを一連の流れで想定すると介護支援専門員がこれまで苦手とされてきた医師との連携や医師のサービス担当者会議の参加についてもI C Tを活用して業務としてデフォルト化(初期値設定化)されるが期待されそうです。またさらにすでに進められているケアプラン策定のA I活用とも相まってかなり大胆な業務の効率化が求められ、リモートでの情報処理能力やI Tリテラシーが介護支援専門員の基礎スキルとして必要になってくることは、容易に想定されます。こちらも奇しくも介護支援専門員の実務研修などの法定研修が従前からe-learningが導入され、今回の新型コロナウイルス対応では更にweb化されたことを踏まえれば、ケアマネ事始の入り口からそのスキルが求められていることは言わずもがなです。

今後は、施設介護並びに在宅支援にあたってもICTの普及や、標準仕様の活用、効率的なICT・ロボット・AI等が普及され、効果の高いICT・ロボッ ト・AI等の効果的なテクノロジーの活用モデルが推進されていきます。

答申の中では、あと2項目介護関連として「ウ 介護アウトカムを活用した科学的介護の推進」と「エ 介護事業経営の効率化に向けた大規模化・効率化」について言及されていますが、後半の「エ」については前回の連載で社会福祉法の一部改正の中でお伝えしたので今回は割愛して、「ウ」の介護アウトカムを活用した科学的介護の推進についてお伝えしたいと思います。

もう既に耳タコのように言われていることですが、将来推計で団塊の世代が高齢者の仲間入りする2025年や後期高齢者となって実際に介護などを必要とする割合が高くなる2035年には介護人材が180万人足りないとかいうセンセーショナルなニュースに始まり最近では35万人から38万人が足りないとかいう都市伝説のような本当の話で、介護職人材を確保することが厳しくなる中、人手によることを前提とされてきた業務を補完する手法としてICT・ロボット・AI等の活用が注目されてきていることは、この連載を読んでいる方は百も承知のことです。

でもそういった取り組みは先行する一部の介護事業者においては有効に活用されていますが、依然介護サービスの実施・報酬請求等に係る規則や行政上の取扱いにおいては最新の技術が反映されておらず、こうした手法の活用が、対面での会議開催、巡視などの従来からの手法に代替可能であることは、まだまだ全体で認識されているとは言えない状況です。こういった取り組みが標準的な規格を備えた製品の生産・提供が行われ、導入を通じて得られる効率化効果に見合った介護報酬上の取扱いがなされるように以下のことが実施されることになっています。

実施事項について答申では、「介護サービスの提供・利用とそれを支える介護保険制度の効率的運営を確保するためには、サービスの提供・介入による要介護状態の予防・改善効果が最大限に図られるサービス提供のかたちが不可欠である。2020年度に本格運用を開始した高齢者の状態・ケアの内容等の情報(以下「CHASE情報」という。)を収集するシステムは、科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護の実現に大きく寄与するものであり、収集・蓄積された広範なデータ等を活用することで、各事業者においては適切な評価指標の下に自らのサービスの評価・改善を進めるとともに、今後の介護報酬についても、かけた手間や体制等を評価するストラクチャー評価やプロセス評価に加えて、高齢者の自立支援効果に応じて報酬上のアウトカム評価がより行われるような見直しが不可欠となっている。」と明示されています。

つまり、これまで何度も議論されてきたテーマではありますが、ついに介護をデジタル化しデータを活用し、介護に必要なストラクチャーとプロセスから派生した結果や効果の関係を定量的に測定し科学化することで、報酬などを決定する準備段階に入ったということなのです。これまでは、施設や設備・人員などがまずストラクチャー(サービス提供するための土台・構造)として揃っていて(施設・設備基準がクリアしていて、介護福祉士やセラピストなどのナショナルライセンスホルダーが、一定以上揃っていて)、プロセスが遵守(アセスメントから始まり各種計画が立案されてP D C Aサイクルで運営)されていれば加算などで評価されていたものが、それは前提条件として、だから結果はどうだったのか、効果はどうだったのかが問われるということです。また今後の少子高齢化・生産年齢人口減少社会においては、結果や効果が認められれば、反対にストラクチャーである施設・設備・人員の基準が見直されるということです。

そこで実施事項についてどのように明示されているかと言うと、「a CHASE情報を収集するシステムについて、入力するデータ形式の共通化、アウトカム指標の標準化を行い、収集データを用いた経年分析や事業者間の比較によってアウトカムベースでの介護報酬の検討や事業者自らのサービスの改善が可能となるようなデータベースの構築に引き続き取り組む。」、「b レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下「NDB」という。)及び介護保険総合データベース(以下「介護DB」という。)と通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ(VISIT情報)、CHA SE情報を連結し、更に充実した経年分析や事業者間の比較等により、患者・介護利用者が継続性のある適切な医療・介護を受けることを可能とする。」となっています。

ところで、みなさんはしっかりとこの「C H A C E 」について理解しているでしょうか。また「N D B」や「介護D B」・「V I S I T」についてご存知でしょうか。既に「C H A C E」や「V I S I T」について実践している施設・事業所もあるかと思いますが、まだまだよくわからないと言う方も多いと思います。これからの介護事業所運営ではとても大切ことになりますので、次回改めてそれぞれについてお伝えしたいと思います。今後介護事業運営のプラットフォームとなる大切な事柄なのでぜひ読んで理解していただければと思います。よろしくお願いします。(今は既にLIFEと言うことで、かなり加速しましたね)


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