❖春の報酬改定前の振り返り②


2021.12.14 |投稿者:神内秀之介

前回は、令和2年6月22日開催「経済財政諮問会議」、令和2年6月25日開催「社会保障審議会介護給付費分科会(第 178 回)」、令和2年7月2日の「規制改革推進に関する答申」についてその一連の流れから私の感じたコンテクスト(文脈)について、答申の具体的な内容に入るまでの前段についてお伝えしましたが、本日は、いよいよ答申に示された具体的な内容をお伝えしたいと思います。

 といきたいところですが、と書くとすでに感の良いみなさんは、神内こりゃまた書かないなとお思いになったかと思いますが、そう、お察しの通り脱線します。この連載ではA I・I C Tと介護について、今後A I・I C Tソリューションの導入や共存なしでは介護・福祉の業界はやっていられません的な情報提供ですが、それはもちろんそうなのですが、介護現場の生産性向上については、まだそれ以前のアナログであり、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)・3M(ムリ・ムダ・ムラ)の低減をしっかり実施することが急務だということは、みなさんもご理解いただき済みだと思います。

そんな現在の状況下で、2025年の地域包括ケアシステムの構築、2040年の地域共生社会の実現に向け、少子高齢化・生産年齢人口激減の中でいかに福祉を展開していくかというA I・I C Tというツールの活用を検討する大前提となる抑えるべき事柄の一つとして前回紹介していなかった社会福祉法などの一括改正法が令和2年6月5日、参議院本会議で可決、成立したことについて少し触れたいと思います。なぜなら、何をしようとして、どこに進もうとしているかということをしっかり理解した上で、どんな戦略や戦術・道具の準備が必要か検討をする必要があるからです。

今回の改正法では、市町村が任意で行う新事業を設け、既存制度の国の補助金を再編して交付金を創設することとしています。これは、新たな課題として、また世代を超えた課題として認識されている「孤立した人が社会とのつながりを取り戻せる」よう、専門職が継続して所謂(いわゆる)対象者別の縦割りを超えて伴走できるようにするためです。その機能・運用に当たってはソーシャルワークを重視するとされています。地域社会で住まう全ての国民がそのソーシャルワーク機能を果たし運用されることが期待されています。施行は2021年4月1日となっており、もう来年(今年でした)です。

新事業は、「重層的支援体制整備事業」となっており、引きこもりなど制度のはざまで孤立した人や家庭を把握し、伴走支援できる体制をつくることなど、  困りごとの解決を目指すだけでなく、社会とのつながりを取り戻すことで困りごとを小さくするような関わりも重視されます。「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくり」をセットで行うことを想定されています。

『「断らない相談支援」では属性や年齢を問わずに相談を受け止め、関係機関との協働を進める』、『「参加支援」は就労、学習など多様な形の社会参加を促す』、『「地域づくり」は交流や参加の機会を増やす』、ことが期待されています。新しい交付金がどのように算定されるかなど詳細はこれからとなっています。今後の動向に注目が必要です。

また、新事業は社会福祉法人などに委託できることになっています。運用に当たっては、ソーシャルワーク機能が重要だとする意見が多く、参議院の付帯決議では「新事業の実施に当たり社会福祉士や精神保健福祉士が活用されるよう努めること」とされたことも注目です。

改めて、地域共生社会とは、「ニッポン1億総活躍プラン」(平成27年6月2日閣議決定)で政府が掲げた理念です。これまでのように支援する専門職と支援される利用者などと支え手と受け手に分かれず、あらゆる住民が役割を持って参加できる社会を目指すということです。それを踏まえて社会福祉法は、前回の改正で孤立を含む「地域生活課題」(同法第4条2項)を解決できる体制を整えるよう市町村に努力義務を課し、平成29年度から施行されています。

今回の新事業は、この取り組みを強く後押しするものです。このほか社会福祉法には、複数の社会福祉法人が事業運営で連携する際の選択肢として「社会福祉連携推進法人制度」を設けることが挙げられています。同制度に参加する法人間で資金を貸し借りできるように規制を緩和し、グループ運営による大規模化や事業の継続性の担保を期待しており、災害時の対応や人材確保・育成・定着などで協働しやすい環境をつくるが求められています。

今回の改革では、新事業は体制だけが示されただけで、具体的に誰がやるのかが十分に示されていません。しかし、社会福祉法人には、前回改正で示された期待よりもさらに具体的に体質改善を求め、参議院の付帯決議でソーシャルワーカーの活用が明記されたことは大きな一歩であると言えます。伴走支援、多機関協働、アウトリーチなど専門性のある職員が活躍できるだけの雇用と保障が必要となってくるのです。

この前提で今後の方向性を押さえると、社会福祉法人をはじめ、介護・福祉を営む事業所が、明日の日本・社会課題解決の為に担う役割が見えてきます。そうなった時に、令和2年度から令和5年度まで予定されているI C T機器の導入補助金や今回の新型コロナウイルスのために追加された令和2年度の追加の補正予算でI C T機器などの導入がどんな意味があり、短期・近視的で無く、中長期的に捉えた時に、如何に活用すべきかがわかると思います。

そもそも論となってしまいますが、介護・福祉事業においては、一次産業や二次産業、また三次産業の他のサービス業にも増して自事業所・施設だけの課題だけが解決され経営が良くなれば良いということではありません。公器としての役割や位置付けを理解し、地域や社会全体の中で自事業所・施設の事業がどのように連関しているかを把握することが重要です。A I・I C Tソリューションの導入も同様でその際に、もう一つ視座の高いところでのバリュー(価値)を見出すことが大切です。

そして、ここからやっと「規制改革の推進に関する答申」をみてみると、1.総論、2.雇用・人づくり分野、3.投資等分野、4.医療・介護分野、5.農林水産分野、6.デジタルガバメント分野となっており、私たちに一番関係の深い4.医療・介護分野では、「1持続可能な社会保障制 度の基盤整備」及び「2健康づくり・高水準の医療サービスの創出」を大きな柱に掲げ、この2つに関連する課題として「ICTの利活用」についても議論を中長期的な課題として継続的に検討するとしてさらに、6つの項立てがなされています。

その中の2番目の項には、介護サービスの生産性向上が挙げられています。この項ではさらに「ア・介護事業者の行政対応・間接業務に係る負担軽減」、「イ・ICT・ロボット・AI等の導入推進」の2つの項目が示されています。

まず、「ア・介護事業者の行政対応・間接業務に係る負担軽減」の基本的な考え方として、高齢者をサポートする介護職が2025年には約38万人もの不足が生じることが見込まれているとして、介護の質を確保しながら今後とも必要なサービスを提供するためには、オンライン化によるペーパーレス等のデジタル・ガバメントへの取組を進めることが挙げられており、対行政・事業者間で必要となる文書の作成・保管などにかかる事務負担は思い切って削減し、限られた介護人材が利用者のケアに集中できる環境を整える必要があることが示されています。 

具体的な例示として、行政が求める帳票や介護現場で必要とされるケアプラン等の実施記録において、ローカルルールにより地方公共団体ごとに異なる様式・添付書類の作成・提出が求められていることや、地方公共団体と介護事業者との間や介護事業者間でやり取りする文書が紙で行われており電子化が進んでいないこと、及び、統計調査書類の作成において介護事業者プロフィール情報が調査の都度求められていること等が介護事業者の事務負担となっていることやまた、e-文書法に基づく厚生労働省令において、電磁的記録による保存が認められている書類が定められているが明確ではないこと、さらに、サービス提供等の 記録の保存期間は2年間とされているものの起算日の解釈が明確に示されていないため、事業者は保守的に長期間保存する傾向にあり、管理の煩雑さや保存場所の 確保が負担となっていることなどの指摘が挙げられています。こういった困った現状は、みなさんも普段から感じていてなんとか解決して欲しいと思っていたことだと思います。

この課題解決の為、6つの実施事項を4段階(令和2年度措置。令和2年度検討開始、結論を得次第速やかに措置。令和2年度検討・結論。令和2年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)で行うと明記しています。

それぞれ、令和2年度措置では「行政への提出書類及びケアプラン等の事業所が独自に作成する文書における介護事業者の負担感と原因について現状を把握した上で、利用者への影響等も踏まえつつ、文書量の半減に向けて簡素化・標準化・ICT活用等の目標・対策・スケジュールを具体的に示し、生産性向上に資する取組を引き続き行う。また、対策についての地方公共団体への周知を徹底する。」・「ローカルルールによる介護事業者の負担を軽減するため、国が定める標準様式においての見直しを行うとともに、地方公共団体が独自に過剰な記載を求めることがないよう行政提出文書の取扱指針をガイドライン等で示す。」の2つです。

令和2年度検討開始、結論を得次第速やかに措置では、「ICTの活用に向けて、介護事業者とベンダーとの検討の場を設け、介護データの項目を標準化し、利便性の高い全国共通の電子申請・届出システム及び介護 事業者等の間でのデータ連携が可能となる環境の整備に取り組む。」・「電磁的記録による保存が可能な文書及びサービス提供等の記録の保存期間に係る定義を明確化し、周知を徹底する。」の2つです。

令和2年度検討・結論では、「署名・捺印で行われている介護利用者のケアプランへの同意については、原本性を担保しつつ、電子署名などの手段による代替を可能とすることも含めて、介護支援専門員の業務負担軽減について検討する。」の1つ。

最後の令和2年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置では、「介護事業者に統計調査資料の作成を求める場合、情報公表システムの活用により、事業者プロフィールなどについて何度も同じ情報を求める重複をなくし、書類を簡素化する。」の1つが挙げられています。どれもI C Tと切り離せない内容で、その示された段階から、自事業所・自施設でどこから速やかに着手すれば良いのかについてヒントになります。もう一つの「イ・ICT・ロボット・AI等の導入推進」については、次にお伝えしたいと思います。


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