❖春の報酬改定前の振り返り


2021.12.09 |投稿者:神内秀之介

こんにちは。聞くところによると時間には、量的時間(ニュートン時間)と質的時間(ベルクソン時間)のふたつがあり、前者は時計の針ではかることができる所謂(いわゆる)客観的な時間、後者の質的時間はひとりひとりの主観的なものみたいです。なんでも早く感じてしまうのは、当然ですが主観的な方ですね。しかも、歳をとると余計に早いらしいです。楽しい時間は早く過ぎる。このような「主観的」な時間と「客観的」な時間の違いは誰もが経験するものですね。余談になりますが、この主観的時間ついては、ノルウェーの研究者たちが、「時間感覚」を体験する際に働く脳細胞ネットワークを発見したそうで、その領域は「内嗅皮質側部(lateral entorhinal cortex:LEC)」と呼ばれ、「空間」を処理する領域の真隣に位置しているそうです。まんざら根拠の無い話では無いようです。

さて、話を連載の方へ近づけたいと思いますが、通常例年の流れであれば皆さんが注目されている来年度(昨年2020年時点の話)の介護報酬改定に向けた会議である「社会保障審議会介護給付費分科会(第 178 回)」が令和2年6月25日にオンラインで開催されました。その中でこの連載でも取り扱っているA I・I C Tについて今後の期待される、いや政策誘導されることが議論されました。また、その前後で政府は6月22日に経済財政諮問会議を開催し、令和2年7月2日には規制改革推進に関する答申がなされました。本日はその一連の流れから私の感じたコンテクスト(文脈)についてお伝えしたいと思います。

まず、政府は6月22日に経済財政諮問会議を開き7月半ばにまとめられる予定の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」の骨子案を示しました。その取り組みを短期と中期の2つのフェーズに分けて方向性が示されましたが、中期の取り組みは、社会全体のデジタル化に集中投資するデジタルニューディールなど5本柱を設定するというものでした。ニューディールなんて聞くと、ケインズやテディベアでお馴染みのルーズベルトを思い出しちゃいます。

それはさて置き中期の取り組みは、1「新たな日常構築の原動力となるデジタル化への集中投資・活用とその環境整備(デジタルニューディール)」、2「新たな世界秩序の下での活力ある日本経済の実現」、3「人への投資の強化・新たな日常を支える生産性向上」、4「新たな日常を支える包摂的な社会の実現」、5「新たな日常を支える地域社会の実現、安全・安心の確保」と示されました。2つ目の柱以外は、私たちの介護・福祉業界も直接的な影響がありそうです。とは言いつつ2についても影響がないとも言えませんが。

さらに短期の取り組みでは、「医療提供体制などの強化」、「雇用の維持と生活の下支え」、「事業の継続と金融システムの安定維持」、「消費など国内需要の喚起」について示されました。また会議終了後に会見した西村康稔経済再生担当相は、「(今回の骨太方針で)一丁目一番地がデジタル化への集中投資と思っている」と強調し、「政府自らの投資、民間の呼び水となる投資、民間自らの投資を組み合わせて、政府と民間のデジタルトランスフォーメーションを進めていく」と明言されました。

誌面の関係で全部は説明することができないため私たちの業界に直に関係のありそうなところのポイントだけお伝えしますが、令和2年6月 22 日 規制改革推進会議「デジタル時代の規制・制度について」という資料の中では、「現在、新型コロナウイルス感染症の拡大への対応が、国としての最重要課題となっている。新型コロナウイルスの感染防止のためには、人と人との接触を最小限にする必要があり、デジタル技術を用いたオンライン等の活用が有効である。」とか、「デジタル化のもたらす便益・社会的価値の向上」では、「医療・介護、教育等の公共サービスの分野では、AI・ロボットの活用、高度な通信技術の活用、データの利活用、オープンシステムやシステム連携などの先進技術の活用によって、質の高いサービスを低コストで提供することが可能となる。医療の分野では、医師の行う診察や画像診断をAIで高度化できるようになり、データの蓄積によってより正確な診療が可能となる。効率化・質の向上だけでなく、大きな成長分野として国民に還元される。オンライン診療・服薬指導は患者の利便性の向上に資する。また、遠隔教育等の教 育分野でのデジタル技術の活用は、教育の質を高めるとともに、地域格差の解消に資するものである。」と明示され、コロナを常套句になんでもデジタルで解決する勢いです。

なかでも「テシタル時代の規制・制度の見直しの方向性と重視すべき視点」では、 1「デジタル化を促進する規制・制度改革、現行の規制・制度が新技術の活用を阻害している場合には、そのような規制・制度の見直しが必要。」、2「デジタル化により生じる課題に対応する規制・制度改革」として従来の規制・制度によって法益の保護が不十分な場合には、デジタル化に伴う新たな課題に対応した規制・制度への見直しが必要だと掲げているのは良いのですが、「デジタル時代の規制・制度見直しにあたって重視すべき視点」の中では、先ほどの2つの方向での規制・制度改革を進めていくにあたっては、以下の点に留意する必要があるとして、「その際、デジタル化がデフォルトであって、デジタル化しないのが例外であるという「デジタルファースト」の姿勢で検討を進めるべきである。」とまで明示されたのです。

「デジタル化がデフォルトで、デジタルファースト」これには、流石に痺れました。この連載の中でも何度もお伝えしていましたが、介護・福祉に限らずデジタル化は社会全体の時代の流れではありますが、あくまでも何かしらの目標や目的があってのツール(道具)です。それを前面に出してくるなんて、よっぽど少子高齢化の加速・生産者人口減少の加速・新型コロナウイルスによる経済的打撃が大き過ぎて、その解決方法としてこれくらい大胆にパラダイムシフトしなければならないのかと驚きました。

ニュースなどで見た書面規制の再検証と見直しで、法令による書類の作成や保管、押印文化の見直しや、行政機関向けの手続については、社会全体として、デジタルガバメントの実現による効率化や医療・介護に関するデータベース化などは、私たち生活者レベルの効率化・ブラックボックスの見える化程度ではすまされないようです。

 さらに、その後令和2年7月2日には規制改革推進に関する答申がなされ、具体的な「I C T・ロボット・A I等の導入推進」が項目立てされ、基本的な考え方が示されました。その中では「介護利用者の安否確認の方法として、センサーや外部通信機能を備えた見守り支援機器の活用によって定時巡視が効率化されることについて周知し、施設基準において、ICT・ロボット・AI等の活用によって人が行う業務の効率化を積極的に認めていく。また、介護施設におけるテクノロジーの導入の有無による比較対象を設定した効果検証を実施し、当該検証結果を踏まえながら、介護報酬等への評価につなげる。」また、「介護支援専門員のモニタリング訪問、サービス担当者会議については、テレビ会議、ビジネスチャット等のICT活用による訪問等の代替を含めた業務負担軽減について検討する。」と平成30年の報酬改定の際に導入された施設でのI C T・ロボット活用での報酬加算や前回はリハビリテーション関係の医師のテレビ会議参加程度だったオンラインによる会議や面会も広く活用が推進されそうです。まさにデフォルト化です。

 その他にも「介護アウトカムを活用した科学的介護の推進」や「介護事業経営の効率化に向けた大規模化・効率化」などについても項目立てされ具体的な考え方などが示されております。こちらについては次回お伝えしたいと思います。前回までにお伝えした介護現場における生産性向上のための基本である5Sや3Mの改善は、さらに急ピッチで施設・事業所で進めなければ、いよいよ次の大きな波が来そうですね。では次回もよろしくお願いいたします。


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