❖いつもお仕事見直ししませんか。


2021.12.08 |投稿者:神内秀之介

引き続き、ガイドラインの概要ですが、4つのChapter(チャプター)で構成されており、Chapter(チャプター).1では「 介護サービスにおける生産性向上のとらえ方」として介護サービスにおける生産性向上の必要性と、取り組む意義や考え方を紹介しています。Chapter(チャプター).2では「生産性向上に向けた改善活動の標準的なステップ」として改善活動の進め方、具体的な手順やポイントを紹介しています。ここまでが実際に改善活動に取り組むまでの準備についての説明です。

そして、中心的な内容のChapter(チャプター).3では「ツールを活用した改善活動の取組」として支援ツールの効果的な活用方法について、具体的な手順やポイントを紹介しています。ここでは、ガイドラインに掲載された事例を動画で解説し、文章では読み取れない実際の雰囲気や取組のポイントについて理解の促進を図る「e-ラーニングツール」や事業所の課題の見える化や解決に向けた方針決定等を支援する「課題把握ツール」、事業所でどのように時間が使われているのかを見える化する「業務時間見える化ツール」の3つのツールが示されている上、ただやり方、取り組み方が文字で綴られているだけではなく、ツールの取扱説明書が動画で見ることができます。

最後のChapter(チャプター).4では「取組事例」として改善活動の参考例が取組別に紹介されています。

 さらにそれぞれのChapter(チャプター)の内容を詳しくお伝えすると、Chapter(チャプター).1は先ほどもお伝えした通り具体的な取組のためのChapter(チャプター).3の前段としてというよりChapter(チャプター).3のツールを正しく効果的に活用するために、前回の連載でもお伝えした介護サービスにおける生産性向上とは、要介護者の増加やニーズがより多様化していく中で、業務を見直し、限られた資源(人材等)を用いて一人でも多くの利用者に質の高いケアを届けることや改善で生まれた時間を有効活用して、利用者に向き合う時間を増やしたり、自分たちで質をどう高めるか考えていくことという「介護の価値を高める」ために「人材育成」や「チームケアの質の向上」、「情報共有の効率化」が生産成向上の意義であって、働く人のモチベーションの向上、楽しい職場・働きやすい職場作りが「介護サービスの質の向上」と「人材の定着・確保」につながるということを再確認し、Chapter(チャプター).2は、このガイドラインが単なる手引きとしてだけではなく、Chapter(チャプター).3で説明されている生産性向上支援ツールを活用し、6つの標準的な手順(ステップ)に沿った改善活動への効率的な取組方法が案内されています。この標準的な取り組みということが重要なのです。

 その6つの標準的な手順では、図1に示されているようにP D C Aをいかに回すかということについて、手順1「改善活動の準備をしよう」(・改善活動に取り組むプロジェクトチームを立ち上げ、プロジェクトリーダーを決める。・経営層から事業所全体への取組開始を宣言する。・「e-ラーニングツール①」を通じ、背景を理解し、取組意欲を高める)、手順2「現場の課題を見える化しよう」(・「e-ラーニングツール②」で生産性向上の一連のプロセスを学ぶ。・「課題把握シート」を使い課題を見える化し、取り組む課題を洗い出す。・「業務時間見える化ツール」で業務を定量的に把握する。)、手順3「実行計画を立てよう」(解決する課題を絞り込み、プロジェクトチームで意見交換を行うことで、優先的に取り組むべき課題を決定する(課題分析シート)。・課題解決のために必要な取組内容や職員の役割を決定する(改善方針シート)。3ヶ月程度の取り組み期間(Plan,Do,Check)を目安として、具体的な計画を立てる(進捗管理シート))、手順4「改善活動に取り組もう」(・まずはとにかく取り組み、試行錯誤を繰り返す。・大きな成功は小さな成功の積み重ねから生まれるため、まずは小さな成功事例を作り出す。)、手順5「改善活動を振り返ろう」(・取り組みの途中経過を把握し、改善活動におけるゴールを達成するために必要な軌道修正を図る。・取り組みの成果を検証する。)、手順6「実行計画を練り直そう」(上手くいった点、上手くいかなかった点について分析を加える。・優先度が低いと位置付けた課題を含め、改めて取り組む改善活動を検討する。・実行計画の取組期間(3ヶ月目安)を含めて、1年を目安にP D C Aサイクルを回し改善活動を継続させる。)ことが案内されています。

 そして、核となるChapter(チャプター).3 ではツールを活用した改善活動の取組について、図2にて紹介しているとおり単なる読み物ではなく、各種ツールを活用しながら実際に介護事業所の生産性向上に取り組む際の手順や取り組み方の詳細を紹介しています。取組ステップとして「準備」・「見える化(現場把握・課題抽出)」・「Plan(課題分析・方針決定)」・「Do」・「Check」・「Action」と3つの使用ツール組み合わせが各取組ステップの具体的内容とともにフローが示されています。

そして最後のChapter(チャプター).4では、7つの取り組むべきテーマとその期待される成果として事例を元に整理されています。①職場環境の整備(5Sの視点で安全な介護環境と働きやすい職場を整備する)。②業務の明確化と役割分担(業務の明確化と役割分担の見直しにより、ムリ・ムダ・ムラ(3M)を削減して、マスターラインを再構築する)。③手順書の作成(理念やビジョンを基に職員の経験値、知識を可視化・標準化することで、若手を含めた職員全体の熟練度を要請する道筋を作る)。④記録・報告様式の工夫(項目の見直しやレイアウトの工夫等により、情報を読み解きやすくする)。⑤情報共有の工夫(ICT等を用いて転記作業の削減、一斉同時配信による報告申し送りの効率化、情報共有のタイムラグを解消する)。⑥OJTの仕組みづくり(日常業務を通じた人材育成の仕組みをつくる。職員の専門性を高め、リーダーを育成するため、教育内容の統一と指導方法の標準化を図る)。⑦理念・行動指針の徹底(組織の理念や行動指針に基づいて、自律的な行動がとれる職員を育成する)。となっています。このように必ずしも、デジタルツールがなくても介護現場の生産性向上は叶うことが示されていると同時に、このような取り組みですらまだまだできていない介護・福祉業界の産業としての弱さも露見しています。また、現場がこれまでサービスの提供についてあまりにも人的依存が強かったことが反省されます。介護・福祉現場の業務の平準化・均質化・仕組化がまず先行して取り組む課題です。先ほどのChapter(チャプター).4のテーマでも⑤の情報共有の工夫でやっとI C Tの活用が提案されています。それは当然で、I TやI C T・I O Tがもつそもそもの意味が情報を取り扱うテクノロジーであるからです。介護や福祉そのものを変えるわけではありません。是非ご紹介したガイドラインを活用し改善活動に取り組んでみてはいかがでしょうか。


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