❖LIFEに至るまでのお話し


2021.12.16 |投稿者:神内秀之介

前回までは最近の国の様々な会議で議論されている内容のコンテクスト(文脈)について雑感をお伝えしてきました。そこでは、労働集約型で、人と人とが織りなす介護・福祉の業界であってもデジタル化の渦からは逃れられないことをお伝えしました。中でもデジタル化の身近なところの実施事項にとして、「CHASE情報を収集するシステムについて、入力するデータ形式の共通化、アウトカム指標の標準化を行い、収集データを用いた経年分析や事業者間の比較によってアウトカムベースでの介護報酬の検討や事業者自らのサービスの改善が可能となるようなデータベースの構築に引き続き取り組む。」、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下「NDB」という。)及び介護保険総合データベース(以下「介護DB」という。)と通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ(VISIT情報)、CHA SE情報を連結し、更に充実した経年分析や事業者間の比較等により、患者・介護利用者が継続性のある適切な医療・介護を受けることを可能とする。」となっていることをお伝えしました。

そこで、今回は最近よく耳にする「C H A C E 」や「N D B」・「介護D B」、「V I S I T」について改めてお伝えしたいと思います。

まず、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(N D A)」と「介護保険総合データベース(介護D B)」ですが、こちらは、保険者、医療・介護関係者などのデータベース構築に関わる関係主体の理解・協力を得て、公益目的で、サービスの利用分析、提供体制分析、保健医療・福祉分野等の学術的な分析などを行うために、それぞれの診療(介護)報酬請求などを匿名で悉皆的に国が収集しているものです。

具体的に収集している情報としては、「N D B」では、傷病名、投薬、診療開始日、診療実日数、検査 等の医療レセプト(平成21年4月~) ・健診結果、保健指導レべル特定健診データ(平成20年4月〜)、「介護D B」では、サービスの種類、単位数、要介護認定区分等の介護レセプト(平成24年4月~) ・要介護認定一次、二次判定情報の要介護認定情報(平成21年4月~)となっています。

主な用途としては、それぞれ医療費適正化計画の作成、実施、評価・医療計画、地域医療構想の策定や市町村介護保険事業計画の作成、実施、評価・都道府県介護保険事業支援計画の作成、実施、評価となっており、医療情報では平成23年度から、介護では平成30年度から有識者会議の審査を経て第三者である国、自治体、独法、大学、保険者の中央団体、医療(介護)の質向上を目的とする公益法人等の研究者へ提供できることになっています。つまり医療・介護保険に関わる実態に即した大量のデータを個人情報に配慮しながら、質の向上と公益を目的に、審査をクリアした第三者が研究データとして活用できるようになっているわけです。より実態に近い精緻な分析による様々な大切な計画を策定できる足掛かりができたわけです。

次に「V I S I T」・「C H A C E」、ですが、こちらは介護領域のケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築のために整備された枠組みで、「V I S I T」とは通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業によるデータベース(Monitoring & Evaluation for Rehabilitation Services for Long-term Care)のことで、「C H A C E 」とは前述の介護保険総合データベース、VISITという既存のデータベースでは介護サービスのエビデンス構築には不十分だったそれらのデータベースを補完するデータベースとして開発されたもので、介護サービスの介入を示す「Care&HeAlth」利用者の状態を示す「Status」利用者の情報を示す「Events」を組み合わせた造語「CHASE(Care, Health Status & Events)」です。どこを切り取ってこの名称となったのかわかりにくいですね。

V I S I Tでは、通所リハビリテーション 、訪問リハビリテーション の利用者の心身機能・活動・参加・環境因子等の状態情報や実施しているリハビリテーションの目標・具体的な支援内容などの介入情報とリハビリテーション 会議録の記載等からの情報を収集しています。一方C H A S Eでは合計201項目がデータベースに用いる初期項目として設定されています。今後の状況次第で修正・追加が検討されていく予定とされています。201項目の内訳はそれぞれ利用者の基本情報や既往歴、ADLなどの「総論」、食事形態や誤嚥性肺炎の既往などの「口腔」、診断からケアの実施とその評価を一連の流れとする「認知症」、食事摂取量や栄養状態といった「栄養」の4つに分類されています。科学的介護の実装のため、これまで個別で現場に埋まっていた情報が収集されビックデータとなり分析の対象となるのです。

ところで、みなさんは日本酒「獺祭(だっさい)」をご存知ですか。お酒、特に日本酒がお好きな方であれば一度はお飲みになったことがあるかもしれませんね。高品質の大吟醸酒として国内外で人気が高まってきていてブランドもほぼ安定しているように見えます。まさに匠の技の極致と言えそうですが、その酒蔵に杜氏の姿はありません。

実は、獺祭の蔵元旭酒造さんは1999年に新規事業に失敗し、杜氏に去られてしまったそうです。そこで酒造りのノウハウが杜氏の頭の中にブラックボックス化されていた匠頼りの製造現場の旧弊を改め、IT(情報技術)で匠の技術を極めた末に出来上がった逸品なのです。

今では、品質にばらつきがないことが獺祭の大きな特徴となっています。杜氏の勘に頼った酒造りでは、年により品質にばらつきが出ていましたが、データで管理された獺祭にはそれがなくなりました。

感の良いみなさんはもうお気づきだと思いますが、この方程式はどこかの分野にも当てはまる感じがしませんか。従前人海戦術で行っていたことを少ない人数で、まさに少数精鋭で品質を保ち、時にはそれ以上の品質を上げるためには、どんな取り組みをしなくてはいけないのか。

かつて、農業も沢山の人が携わっていた時には、人海戦術で田植えや収穫を家族・親戚など総出で行っていました。今はどうでしょか。機械化や品種改良など農業機械やデータなどを活用し、いかに少人数で効率的に成果(収穫)を出せるようにすることで産業を維持しています。

今後、介護・福祉の業界は支援する側の人数が激減していきます。しかも急速に激減していきます。今は品質を守りながら、更なる多様な価値に応えるべく高品質を創出しなくてはなりません。これまでのやり方・考え方で太刀打ちできるでしょうか。

幸いA I・I C Tソリューションがどんどん進化していっています。先ほどの獺祭ではないですが、杜氏的な存在のこれまで現場を支えてくれているベテランや先輩職員の持っている知識や技術がオープンデータ化されデジタル化されていくことや、目の前で実行されたことや、対面のコミュニケーションしかわからなかった入居者・利用者の様々な情報などがデジタルデータ化されることによって、ブラックボックスであった介護や福祉の見える化が可能になります。躊躇せず、いち早く取り入れてみませんか。


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