❖個人的には、訪問介護事業が一番好きです
2021.12.21 |投稿者:神内秀之介
みなさんこんにちは、今回は具体的サービス種別として訪問介護事業をベースにA IやI C Tソリューション導入についての事例などをお伝えしたいと思います。なぜ一番初めの具体的な事例に訪問介護事業を選んだのかという理由は、簡単です。私がこれまでの介護・福祉の仕事の中で、現場で実際の介護員をしていて一番好きで、管理運営もしていた中で楽しかったサービス種別だからです。全然楽でもなく、苦行のような毎日でしたが。また、楽しくて好きだっただけではなく居宅介護支援事業所や計画相談以外の在宅サービスの中で基準などのルールや組織管理も含めて基本中の基本となる枠組みが多くとっても参考となると思うからです。
訪問介護事業を経営(運営)している中で発生している課題感として、いつくかの事業所から聞いた話では、例えば、「月末月初になると伝票の確認作業で忙しく、ミスが発生してしまうなど、大きな事務負担が発生している。また記録を回収するまでにタイムラグが発生するので、サービス状況が把握しづらく、情報共有をもっと密にできない。」であるとか「1カ月分の訪問記録の伝票を確認しながら、予定と実績の突き合わせを行い、利用者毎にファイリングをしなくてはいけないが、整理された状態で伝票が提出されないので、時間以上のストレスを感じている。」とか、「従来は複写式のペーパーのサービス実施記録で、ヘルパーさんには日々、利用者様の状態の変化や細かい事に気を配りながら業務をこなしているが、その中で現場に集中するあまり「記録の提出」を忘れてしまわれることもある。そうするとサービス提供責任者が「未提出の実施記録は無いか?」「記録の内容はしっかりと記入されているか?」など確認作業に時間をとられてしまい、業務効率が低下している。」など、事務作業やサービス提供責任者のバックオフィス的な業務を含めた業務負荷が大変だとの声が聞こえてきます。
また、事務作業とももちろん関係しますが「特定事業所加算の算定のために、指示と報告のための別紙もあるので、大量の紙が発生している。」であるとか「特定事業所加算算定要件に該当する指示出しを携帯やP Cのメールで行っていたが、その指示メールをヘルパーが見逃したり、指示に対しての報告が返ってこなかったりタイムラグがあったりなど。」特定事業所としての体制を維持するための運用管理が大変だという声もよく聞きます。
さらに最近では、「高齢者の訪問介護以外に、自費サービス、総合事業サービス、障害福祉サービスなどを行っており、いくつか複数の請求ソフトやワードやエクセルなどのOfficeの基本ソフトを使用しているが、利用者も増え始め、請求はもちろん、スケジュール調節なども難しくなってきた。」であるとか「シフト管理を、手書きのシフト表を使っていたので、予定の変更があった場合、手書きで修正して。変更の件数も多く、修正したシフト表はヘルパーにとってもサービス提供責任者にとってもとても読みづらいものになっている。変更を聞いたサービス提供責任者がそのままケアの現場に出てしまい、シフト表に記載していないために、他のサービス提供責任者が他のシフトを組んでしまうなど、ダブりや訪問の漏れが発生していた。」とか「様々な対策を講じても、ヒューマンエラーによる訪問の抜けが年に数回でてしまうことあり、ご利用者様から「ヘルパーが来ていない」と連絡を頂き、判明する場合が多かった。ヘルパーの訪問状況を見える化し、事業所から先にアクションを起こすことができないか」などシフト管理の課題など先程の事例も含め細かい課題を挙げるときりがありませんが、アナログで高度な業務管理をしていると時間も人がいくらあってもいつも大変な状態が続いていきます。
事業収入を考えると特定事業所加算を算定したいが、事務負担なども相当大変だし、サービス提供責任者や管理者のあらゆる負担が増えて、もし、今のサービス提供責任者や管理者に何かあったら次の担い手がいない。さらにそもそも現場で働いていてくれる常勤や非常勤のヘルパーがいない。そして利用者の年齢よりも高齢なヘルパーが増えて事業所の従業員の平均年齢が高齢化していくなど悩みが尽きないのが、訪問介護事業の現場かと思います。
そこで、必然というか自然な流れで課題解決の一つとしてI C T化について検討していく段階になると思いますが、当然のようにここでも新たな課題が発生してしまいます。例えば、「全く周りにICTが普及していないため、ケアマネから利用者様のお宅に複写式の紙の記録が残らないということに対して少し不満のような声が出る。」であるとか、今では少なくなったと思いますが、「実地指導のために保険者である役所が紙で必ず準備しておいて欲しいと言われた。」とか、I C Tソリューション導入あるあるですが「登録ヘルパーの半数近くが60代以上の方で、ヘルパーからは、「スマホを持っていない」や「使いこなせるかわからない」といった不安の声が上がる。」など。また、場合によってはサービス提供責任者や管理者がそもそもスマホなどを使いこなせないなど、なかなか思い切ってI C T化が進められない、労働集約型・感情労働型サービス特有の悩ましい状況に陥ってしまいます。また、小規模の事業者では費用の問題からなかなか活用に踏み切れないという声もよく聞かれます。
しかし、冒頭のような多様な課題を解決するには、I C Tソリューションの導入を躊躇しているわけにはいきません。確かに導入時には費用やツールの使用方法などを覚えて使いこなすまでの間は効率も一時下がり、負担がそれ以前より増します。どんな良いもので便利なツールでも必ず効率は一時下がります。ヘルパーなどからの反発で心も折れそうになります。ですがその後の全体で使いこなせるようになると、あの時のヘルパーの不平・不満や事務作業などの間接的業務の負担はなんだったんだろうと思うくらい改善されることが期待できます。
実際に、I C Tソリューションを導入して、正しく活用し業務の中心に据えたところではこんな声も聞かれています。例えば、「I C Tソリューション導入前当時は、実績の確認作業が深夜に及ぶ事が何度かあり、スタッフの負担がかなり大きかったが、今は当日の実績は翌日には完了できているため、月末最終日にはすでに実績の集計ができている状態が取れている。」であるとか「日々のシフト管理においても、導入前はソフト上で組んだ予定を各ヘルパーさんへ電話やF A X連絡という方法を取っていたが、導入後は予定を反映させて各自で確認してもらう方法に切り替えたことで連絡する手間も省け、調整の効率化ができた。」とか、「サービス提供責任者が本来の業務に集中できる体制が取れるようになり、以前より新規の利用者を受け入れる負担が軽減できたとか、ケアマネからの信頼度もあがった。」などの声も聞いています。さらに「もともとはスマホに不安感があったヘルパーさんも、申し送りやケアの履歴は全てスマホを使いこなして確認できるようになった。」とか「情報共有がうまく取れるようになったのでヘルパーさんの中でも意識が変わってきてサービスの質も上がって、文書に不安があったことが心理的に軽減できた。」という声も聞かれています。
当然I C T化の前には、導入準備も必要です。事前に会議などで資料配布し説明を行い、スマホやタブレットの使用方法に不安がある方にはしっかりと説明を行うことや導入前に実機を使っての研修なども必要です。また現場でスマホを破損させないように、スマホや用具類を安全に持ち運べる携行バッグの検討など周辺の不安にもあらかじめ対処しておくことが重要です。また、B O Y Dで導入をする場合は、スマホを持っていない方や対応機種ではない方には事業所から端末を貸与するとか、自分のスマホを活用してもらえるヘルパーには「支援金」などの名目で費用を負担する制度をつくって、不公平感がないようにルールを決めておくことも大切です。運営面でもスタートから数か月は、手書きの実施記録と新しいI C Tのツールの両方を活用して始めから移行期間を計画的に設けておくことも重要です。その中で戸惑っているスタッフなどを個別に支援するなどで安心してもらうことができます。
最後にどんなI C Tソリューションを導入すれば良いのかという検討ポイントですが、私個人的には、以下の5つを基本的に確認します。①スケジュール(シフト)作成がスピーディに可能か。②予定と実績の管理が簡単にできるか。 ③ペーパーレス化がどこまでできるか、それによるコスト削減がどれくらいか。 ④特定事業所では必須ですが、サービス提供責任者が、ヘルパーの活動内容や報告をいち早く確認することが可能か。⑤機能の拡張性とバージョンアップやアフターなどがきちんとしているか。という点です。もちろんこれらのポイントを踏まえた価格感も当然検討すべき内容ですね。まだ、I C Tソリューションの導入がレセプト (報酬請求)などの一部に留まっている事業所や、全く導入していない事業所はこの機会に、今どこまでI C Tツールが進化しているかをリサーチしてみてはいかがでしょうか。