福祉サービス第三者評価ガイドラインを活用した介護事業経営~しっかりした記録管理体制が施設全体の信頼と安心感を築く~
2025.09.13 |投稿者:神内秀之介
介護施設で日々記録される、利用者に関する膨大な情報。これらの記録は、利用者の安全・安心、そして職員間の連携を保つための貴重な財産です。しかし、適切な管理体制が整っていなければ、その記録が十分に活用されず、かえってトラブルを招く可能性もあります。福祉サービス第三者評価ガイドライン「Ⅲ-2-(3)-②」では、この記録の管理体制の確立が明確に求められています。
「記録は宝物。だからこそ守り、活かす仕組みを」。本稿では、記録を適切に管理し、施設全体で有効に活用する方法についてお伝えします。
- 記録管理体制を構築する重要性
① 利用者情報の安全を守る
介護記録には、利用者の健康状態や生活に関する重要な個人情報が含まれています。これを適切に管理することで、プライバシーの保護が徹底され、利用者や家族が安心して施設を利用できる環境がつくられます。
② サービスの質を向上させる
記録が適切に管理されていれば、職員全員が必要な情報に迅速にアクセスでき、利用者に対して一貫したケアが提供できます。また、過去の記録をもとにサービス改善が行えます。
③ 施設の信頼性を高める
記録の管理体制が確立していれば、外部からの指摘や監査にもきちんと対応できます。整然とした記録は、施設運営の信頼を高める要素となります。 - 適切な記録管理体制を整えるポイント
① 記録のアクセス制限を明確にする
• 誰が扱うべきかをルール化:利用者記録にアクセスできる職員を限定し、権限を明確化します。
• ログ管理の実施:電子記録の場合、誰がいつ記録を閲覧・編集したのかを確認できるシステムを導入する。
② 保管場所とセキュリティ対策
• 紙媒体記録の場合:記録を鍵付きキャビネットに保管し、未承認の職員がアクセスできないようにする。
• 電子記録の場合:ID・パスワードを個人ごとに設定し、サーバーやクラウドストレージのセキュリティ対策を強化する。
③ バックアップの確保
• 定期的なデータバックアップ:災害やシステム障害に備え、重要な記録データを定期的にバックアップする。クラウドや外部ストレージを活用すると安心です。
• 紙記録の場合の防災対策:火災や水害を想定した保管方法(耐火キャビネットの使用など)を取り入れる。
④ 記録の保存期間を明確に設定
• 保存期間をルール化し、法令や施設の規定に基づいて適切に管理する。不要な記録は廃棄時にシュレッダーなどを用いて情報漏洩を防止する。 - 記録管理体制を現場で運用するための仕組みづくり
① 職員教育の徹底
記録管理の重要性を全職員が理解し、正しく実践できるよう教育や研修を定期的に行います。
• 具体的な指導内容の例:
o 情報漏洩のリスクとその予防策。
o 記録にアクセスする際のルールやマナー。
o 電子記録の正しい入力方法と操作方法。
② 定期的な点検と見直し
• 記録の管理体制が適切に運用されているか定期的に監査する。特にアクセス記録や保管場所の状況を確認する。
• 改善が必要な点が見つかった場合は、すぐに対策を講じる。
③ トラブル発生時の対応マニュアル作成
万が一、記録に関する問題が発生した場合(データ漏洩や紛失など)に備え、迅速に対応できるマニュアルを整備し、職員がすぐに対応できるようにします。 - 記録管理の成功事例
事例①:電子記録システム導入で効率化と安全性を両立
施設Aでは、紙ベースの記録を電子記録システムに移行しました。これにより、記録管理が格段に効率化され、必要な情報に職員がいつでも迅速にアクセス可能に。一方で、個人ごとのアクセス権限を設定し、不正アクセスのリスクを防止しました。また、データのバックアップも定期的に実施し、災害時の安全性を確保しました。
事例②:アクセス権限の見直しでトラブル防止
施設Bでは、職員全員が記録にアクセスできる体制だったため、記録の修正ミスや情報漏洩のリスクが生じていました。この課題を解決するため、職員別にアクセスできる範囲を明確化し、不必要な操作や閲覧を防止する体制を整備。結果的にトラブルが大幅に減少しました。 - 朝10分でできる「記録管理体制」意識向上の習慣
• 記録管理の基本ルールを共有:「情報漏洩を防ぐためにどのルールを徹底するか」を職員間で確認。
• 最新の注意点をアップデート:「最近こんな記録ミスがありました」「こういう改善をしました」と共有する時間を設ける。
• バックアップ状況を点検:システムや紙の記録の保管状況を朝一で確認する担当者をローテーションで決める。
朝の短時間でできるこうした取り組みが、記録管理意識を大幅に向上させます。
まとめ
利用者記録の管理体制を確立することは、施設全体の信頼性やサービス品質に直結します。適切な記録管理が行われている施設では、利用者の安全が守られるだけでなく、職員間の連携がスムーズになり、さらなるサービス向上が実現できます。
「守り、活かし、繋げる記録管理」。
この意識を持ちながら、朝の10分を活用して記録管理ルールを再確認し、チーム全体で意識を統一していきましょう。その姿勢が利用者への安心と信頼を届ける基盤になります!
了
#福祉サービス第三者評価を広げたい