第27章『つながりの地図を描く——社会資源は、ケアの外側にある力』
2025.08.27 |投稿者:神内秀之介
「このケース、施設だけじゃ限界かもしれません」
ある職員が、認知症の利用者の支援について悩みを口にした。
家族との連携、医療機関との調整、地域包括支援センターとの情報共有。
沙耶はその言葉に、ケアの“外側”にある力の必要性を感じた。
法人では、社会資源の一覧が整備されていた。
医療機関、行政窓口、地域包括支援センター、障害福祉サービス、ボランティア団体。
でも沙耶は思った。「一覧があるだけじゃ、つながりにはならない。
“誰と、どんな関係で、何を共有しているか”が見えていなければ」
彼女は「つながりの地図づくりプロジェクト」を立ち上げた。
目的は、施設が活用できる社会資源を“関係性の視点”で再整理すること。
まず、過去1年間の支援事例を振り返り、
どの機関と連携したか、どんな成果があったか、どんな課題が残ったかを記録した。
その結果、以下のような分類が生まれた:
- 【医療連携】訪問診療・服薬管理・緊急時対応
- 【地域支援】包括支援センター・民生委員・自治会
- 【生活支援】配食サービス・移動支援・買い物代行
- 【相談支援】成年後見・生活保護・家族支援団体
- 【教育・交流】学校連携・ボランティア・地域イベント
沙耶はこの分類をもとに、「連携マップ」を作成。
それぞれの機関との“連携の窓口”“共有する情報”“連携の目的”を明記した。
さらに、職員向けに「連携ハンドブック」を作成し、
「このケースには、どの資源が活かせるか」を考えるワークショップを開催した。
ある日、職員が「この利用者、地域の移動支援を使えば通院がスムーズになるかも」と提案。
その一言が、支援の幅を広げた。
また、地域包括支援センターとの定例会議では、
施設側から「現場の声」を共有し、
「制度の隙間を埋める連携」の可能性が語られた。
評価項目【25 Ⅱ-4-(2)-①――「福祉施設・事業所として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われているか」。】
それは、「“資源の一覧”ではなく、“関係性の地図”が描かれているかどうか」が問われる。
沙耶は記録の余白にこう書いた。
「今日、地域の支援者と“この人の暮らしを守るには何が必要か”を語り合った。
その時間が、社会資源の意味だったと思う」
社会資源とは、制度の外側にある“人の力”。
その力とつながることで、ケアは“施設の中”から“地域の中”へと広がっていく。
そしてその広がりが、利用者の“暮らしの可能性”を育てていくのだ。
#福祉サービス第三者評価を広げたい