第23章『見えるという安心——情報公開は、信頼のかたち』


2025.08.23 |投稿者:神内秀之介

「この施設って、何を大切にしてるんですか?」
見学に来た家族がそう尋ねたとき、沙耶は一瞬言葉に詰まった。
理念はある。計画もある。評価報告書もある。
でも、それらが“語られている”とは言いがたかった。

法人では、運営情報の公開が制度的に整備されていた。
ホームページに事業計画、第三者評価結果、財務状況、苦情対応の件数。
掲示板には月次報告、感染症発生状況、研修実施記録。
でも沙耶は思った。「情報はある。でも、“伝わっている”だろうか」

彼女は「語る情報公開」への転換を提案した。
まず、施設玄関に「今月の取り組みと想い」を掲示。
事業計画の一部を抜粋し、職員の語りを添えた。

例:
「今月は“生活支援の質向上”に取り組んでいます。
職員の声:『利用者さんが“自分で決められる”場面を増やしたいと思っています』」

次に、法人ホームページに「ケアの現場から」というコラムを連載。
沙耶や他職員が、日々のケアの中で感じたことを綴る。
制度の言葉ではなく、現場の温度で語る情報発信だった。

さらに、利用者家族向けに「運営報告カフェ」を月1回開催。
事業計画や評価結果を、図解と語りで共有し、
「この数字の裏に、どんなケアがあったか」を説明する場。
家族からは「数字だけじゃなく、職員の想いが伝わって安心した」との声が届いた。

沙耶はこう語った。
「情報公開って、“見せる”ことじゃなく、“伝える”こと。
そして“伝える”ことは、“信頼を育てる”ことなんです」

評価項目【21 Ⅱ-3-(1)-①――「運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。」】
それは、「“制度的に開示されているか”だけでなく、“人の言葉で語られているか”が問われる。」

沙耶は記録の余白にこう書いた。
「今日、見学者が『ここは、言葉があたたかいですね』と言った。
その一言が、情報公開の成果だと思う」

透明性とは、制度の義務ではなく、
“見えるという安心”を育てる営み。
そしてその営みは、ケアの信頼を支える土台になる。

情報は、語られてこそ、信頼になる。
その語りがある限り、制度は“人の安心”に変わっていく。

#福祉サービス第三者評価を広げたい


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