137.職場での学び合いを促進する方法
2025.08.18 |投稿者:神内秀之介
職場での学び合いを促進する方法――「知識の共有」が生むチームの成長
介護現場は、利用者さん一人ひとりに対するケアが中心となる、とても実践的な職場です。その中で、スタッフ同士が日々の経験やアイデアを共有し合い、相互に学び合う環境を作ることは、現場全体をより良い方向へと導く大きな力となります。
学び合いが生まれる職場では、個人が持つ知識やスキルがチームの財産となり、やりがいを感じながら働く土壌が育まれます。では、どうすれば学び合いを自然と促進できる環境を作り出せるのでしょうか。ここでは、職場全体の成長を支える「学び合いを育む方法」について考えてみます。
- 「教え合い」を自然な行動にする文化をつくる
学び合いが機能する職場にするには、教え合いを「特別なこと」ではなく、自然な日常の一部として根付かせることが大切です。そのためには、「教える側・教わる側」という一方向の関係ではなく、お互いに「助け合う」という意識を共有する文化を醸成しましょう。
たとえば、新しい技術や知識を身に付けたスタッフに「ぜひみんなに教えてあげて」という場を設けることで、スキルや情報を共有しやすい雰囲気を作る。誰もが「学び」や「教え」を持ち寄る意識が生まれれば、個々の成長が職場全体の力となります。 - 日々の経験を「言葉にする」機会を設ける
介護現場では、一人ひとりがさまざまな気づきや経験を日々持ち帰っています。しかし、それを心の中に留めるだけでは、個人の学びで終わってしまいます。それをチーム全体の知識に昇華させるためには、日々の経験を「言葉」にし、共有する機会を意図的に作ることが必要です。
たとえば、ミーティングの中で「この1週間で利用者さんから学んだこと」「現場で感じた小さな気づき」を発表してもらう時間をつくる。これにより、個人の経験がチーム全体の共有財産となり、ほかのスタッフの学びにもつながります。 - 「フィードバック」を受け取りやすい環境を整える
学び合いは「教えること」にとどまらず、「フィードバックを受け取る」ことにも直結しています。しかし、受け手側にとってフィードバックがただの批判に感じられる場合、それは学びの機会として活かされません。
そこで、「意見を伝えるトーン」や「ポジティブな視点からアドバイスをするルール」を明確にするなど、相手が安心してフィードバックを受け取れる環境を整えましょう。たとえば、「こうしたらもっと良くなると思うよ」「ここは本当に素晴らしいと思ったよ」といった具体的かつ前向きなフィードバックを奨励すること。これにより、全員が「学び合い」に貢献しやすい職場になります。 - チームとして「学びのテーマ」を設定する
個々の学びをチーム全体の成長につなげるためには、共通の「学びのテーマ」を設定するのも効果的です。職場全体で同じゴールを意識しながら知識を深めることで、スキルアップの一体感が生まれます。
たとえば、「認知症ケア」をテーマにした勉強会や、「記録の効率化」を目指した情報共有の場を設定します。ここにスタッフ全員が自分なりの視点や経験を持ち寄ることで、個人では気づかなかった知識やアイデアの幅が広がり、チーム全体の成長が促進されます。 - 学びを「行動」につなげる場をつくる
学びは職場の中で共有されるだけでなく、実際の行動や改善に結びついて初めて価値を持ちます。そのため、学びを取り入れるための試行錯誤を許容する環境を整え、「試してみる」という文化を育むことが重要です。
たとえば、「こんなケアを試してみたらどうだろう?」「この方法をやってみた結果、良くなったことがあった」といった実験的な取り組みを奨励し、その成果を全体でフィードバックする習慣を構築します。実戦的な学びが積み重なれば、現場の質も自ずと向上します。
まとめ
職場での学び合いを促進するには、「教え合いを自然な文化にする」「経験を共有する場を設ける」「フィードバックを安心して受け取れる仕組みを作る」「共通の学びテーマを設定する」「学びを行動に変える」の5つのポイントを意識することが大切です。それはチームとしての成長を支えるだけでなく、働く一人ひとりのやりがいを高めることにもつながります。