第14章『流れを整えるという指導力——業務の実行性は、納得の設計から生まれる』
2025.08.14 |投稿者:神内秀之介
「この記録、毎回同じこと書いてる気がする…」
夜勤明けの職員がぽつりとつぶやいた。
沙耶はその言葉に、ふと立ち止まった。
“業務の流れ”が、どこか滞っている。
それは、現場の疲れとして表れていた。
その月、法人の経営会議で「業務の実行性と効率性の見直し」が議題に上がった。
記録業務の負担、申し送りの重複、加算取得のための手続きの煩雑さ。
それらが、職員の“ケアに集中する時間”を削っていた。
沙耶は、記録業務改善チームのリーダーに任命された。
彼女はまず、現場職員にヒアリングを行った。
「どこで手が止まるか」「何が“意味のない繰り返し”に感じるか」
その声を集め、業務フローを一枚の図に描き出した。
そこには、無駄な往復、重複する記録、曖昧な責任分担が浮かび上がっていた。
沙耶は言った。
「業務の流れって、“誰が何を、どこで、なぜやるか”が見えると、納得できるんです。
納得できると、動きが自然になる。
それが“実行性”の正体だと思います」
彼女は改善案をまとめた。
- 記録様式の統合と簡素化
- 申し送りの音声記録導入(希望制)
- 加算取得手続きの“見える化”マニュアル作成
- 業務分担表に“目的欄”を追加(例:「この業務は〇〇の安心のため」)
その提案は法人に採用され、数か月後には職員の業務満足度が向上。
「記録が“意味ある言葉”になった」
「申し送りが“つながり”になった」
「加算取得が“制度の誇り”に感じられるようになった」
管理者は沙耶に言った。
「あなたの改善って、“制度の効率”じゃなく、“職員の納得”を軸にしてる。
それが、経営改善の本質かもしれないね」
評価項目【13Ⅱ-1-(2)-②――「経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している」。 】
それは、「“制度の流れ”を、現場の納得と誇りで整える力があるかどうか」が問われている。
沙耶は記録の余白にこう書いた。
「今日の業務は、流れが自然だった。
誰が何をして、なぜそれが必要かが見えていた。
その“見える化”が、ケアの質を底上げしてくれる」
業務の実行性とは、マニュアルの正確さではなく、
“働く人の納得”が流れに宿ること。
その流れを整える力こそが、リーダーの指導力なのだ。
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