107.チームの目標を明確化する方法
2025.07.19 |投稿者:神内秀之介
介護現場において、チームが目指すべき目標を明確にすることは、利用者さんへのケアの質を高めるだけでなく、スタッフ一人ひとりのやりがいを引き出す鍵となります。しかし、日々の忙しさの中で、「誰のための目標なのか」「本当に達成すべき目標は何なのか」が曖昧なまま進んでしまうこともあるでしょう。その結果、チーム内にズレや混乱が生じることも少なくありません。
ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、チーム全員が共通のゴールを共有し、一丸となって取り組むための「目標の明確化」について考えてみましょう。
- 「何のための目標か」を問い直す
哲学者アリストテレスは、「すべての行動は目的を持つ」と語りました。チームの目標を設定する際には、まず「この目標は何のためなのか?」という問いをチーム全員で共有することがスタート地点です。
たとえば、「利用者さんが笑顔で過ごせる時間を増やしたい」「スタッフが安心して働ける環境を作りたい」といった大きな目的を明確にすることで、目標がチーム全体の共通のビジョンとして捉えられるようになります。目的をはっきりさせることで、目標に説得力と意味が生まれるのです。
- 「シンプルで具体的な目標」を立てる
哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、「言葉は明確でなければならない」と述べました。複雑で抽象的な目標は、チーム全体が共有しづらく、行動に結びつきにくくなります。そのため、シンプルで分かりやすい目標を立てることが重要です。
たとえば、「利用者さんの食事中の会話を一日5分増やす」「月に一度、スタッフ同士で情報共有の時間を設ける」といった具体的な目標を設定することで、誰もが取り組むべき行動をイメージしやすくなります。シンプルで具体的な目標は、行動の指針となります。
- 目標を「チームの声」で作る
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話は共通の理解を生む」と説きました。目標を上から一方的に示すのではなく、チーム全員で話し合いながら作り上げることで、目標が「自分たちのもの」として受け入れられやすくなります。
たとえば、ミーティングなどで「私たちのチームが次に目指すべきものは何だと思いますか?」と問いかけ、各々の意見を集約していく。そうすることで、目標が現場のリアルな声に基づいた具体的で実現可能なものになります。対話を通じた目標設定が、チームの結束力を高めます。
- 「進捗確認」と「振り返り」を習慣化する
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「成長とは振り返りの中で起きる」と語りました。目標が明確に設定されたら、それをただ掲げるだけでなく、定期的に進捗を確認し、振り返りを行うことが必要です。
たとえば、「先月の目標『利用者さんとの会話を増やす』はどのように進めたか」「どんな成果や課題が見えたか」を共有し、次の行動への具体的な改善策を話し合います。振り返りの習慣が、目標を形骸化させず、チーム全体の成長につなげます。振り返りの時間が、目標を現実的な行動へと結びつけます。
- 小さな成功を「共有」する
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「喜びは分かち合うことで倍増する」と語りました。チームが目標に向かって進む中で得られる小さな成功を見逃さず、それを全員で共有することで、達成感とモチベーションを高めることができます。
たとえば、「先週から取り組んだ挨拶の声かけが、利用者さんの笑顔を増やしている」という成功体験をチームで共有する。このように、目標達成の過程にある喜びをみんなで感じ、次のステップへの意欲に変えていきましょう。小さな成功を共有することが、目標への確かな道筋を示します。
まとめ
チームの目標を明確化するためには、「目的を問い直す」「シンプルで具体的にする」「対話を通じて作る」「進捗確認と振り返りを行う」「小さな成功を共有する」という5つのポイントが重要です。それは、チーム全体の力を一つに結び、目標に向かって進む力を生み出すプロセスでもあります。
介護現場のミドルマネジャーとして、あなたの役割は、チーム全員が共通の目標に向かって歩む道を示すことです。哲学的な知恵を活かしながら、目標をただ掲げるだけでなく、「共に進む」ための指針となる目標を作り上げてください。その取り組みが、利用者さんの笑顔とスタッフのやりがいを生む力となるはずです。