87.介護現場の「気づき」を行動に繋げる方法
2025.06.29 |投稿者:神内秀之介
介護の現場は「気づき」の宝庫です。利用者さんの表情や仕草、チームメンバーとのやりとり、あるいは自分自身の対応一つひとつの中に、新たな視点や改善点を見つけるチャンスが溢れています。しかし、本当に大切なのは、その「気づき」をただ心に留めておくだけでなく、それを行動に繋げ、現場や自分自身をより良くしていくことです。ここでは、哲学者の教えをヒントに、「気づき」を行動へと結びつける方法を考えてみましょう。
- 気づきを「言葉」にする
哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、「言葉は世界の境界である」と述べました。気づきは、頭の中に留めておくだけでは忘れられてしまうものです。しかし、それを言葉にして形にすることで、具体的な行動へと結びつける力が生まれます。
たとえば、「利用者さんの歩行が昨日より少し不安定だった」という気づきを、メモや申し送りで記録に残すことで、チーム内で共有し、具体的なケアプランに反映させることができます。気づきを「言葉」にすることは、それを行動に変える第一歩です。
- 小さな行動から始める
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「大きな変化は小さな行動から始まる」と語りました。気づきを行動に移す際に大切なのは、完璧を目指すのではなく、小さな一歩を踏み出すことです。
たとえば、「利用者さんが食事を残していた」という気づきがあれば、その日のうちに「今日はどうして食事が進まなかったのですか?」と声をかけてみることができます。すぐに大きな改善を求めるのではなく、小さな行動を積み重ねていくことで、徐々に気づきが形になり、成果が見えてきます。行動は小さくても、その積み重ねが大きな変化を生むのです。
- チームに「共有」する
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話は理解を深め、行動を導く力を持つ」と述べました。介護の現場での気づきは、個人だけでなくチーム全体で共有し、協力して行動に移すことで、より大きな成果を生むことができます。
たとえば、「ある利用者さんが最近静かになりがち」という気づきをミーティングで共有することで、他のスタッフもその状況に注意を払い、一緒に対応策を考えることができます。チームの力を借りることで、気づきが実践へと広がっていくのです。
- 自分の「役割」を考える
哲学者ジャン=ポール・サルトルは、「人間は行動を通じて自らを定義する」と説きました。気づきを行動に繋げるためには、その気づきに対して「自分が何をできるか」を考えることが大切です。
たとえば、「利用者さんがいつも同じ椅子に座りたがる」という気づきがあった時、ただそれを見過ごすのではなく、「自分がその椅子をいつも清潔に保つ」という小さな行動を実践することで、利用者さんにとっての安心感を生み出すことができます。自分の役割を意識し、具体的に何ができるかを考えることが、行動へのエネルギーとなります。
- 振り返りを習慣化する
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「振り返りの中に成長がある」と述べました。気づきを行動に繋げたら、その結果を振り返る時間を持つことが重要です。
たとえば、「利用者さんに寒くないか声をかけたら、暖房の温度を少し上げてほしいと言われた」という行動があった場合、「自分の声かけが役立った」と感じることが、次の行動への自信と成長に繋がります。そして振り返りを通じて、「次はいつ声をかけるべきか」といった新たな改善点も見えてきます。振り返りの習慣が、気づきを行動に繋げるサイクルを作り出します。
まとめ
介護現場の「気づき」を行動に繋げるためには、「言葉にする」「小さな行動から始める」「チームで共有する」「自分の役割を意識する」「振り返る」という5つのステップが大切です。それは、ただの気づきを超え、利用者さんや職場全体の改善へと繋がる力を持っています。
