30.結果よりも「動機」を大切に
2025.05.02 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、日々の小さな行動一つひとつが利用者さんやご家族、そしてチーム全体に影響を与えます。その中で「これで良かったのか?」と自分の行動を振り返る瞬間もあるでしょう。そんな時、ドイツの哲学者イマヌエル・カントが説く「倫理観」の視点が、私たちに道しるべを示してくれるかもしれません。
欲求のままに動くのではなく、理性に従う
カントは、「欲求に従って思うがままに行動することは自由ではない」と言います。介護の現場でも、忙しさや感情の波に流されて行動してしまうことがあるかもしれません。例えば、「時間がないからこれで良いだろう」と急いで対処したり、「利用者さんに厳しい言葉をかけてしまった」と後悔することもあるでしょう。しかし、そんな時こそ、感情や欲求に流されるのではなく、理性の命令に従い、「今、自分が本当にすべきことは何か」を冷静に考えることが大切です。理性に基づいた行動が、介護者としての信頼を築きます。
結果よりも「動機」を重視する
カントが何より強調したのは、「行動の結果ではなく、動機が重要」であるということです。介護の仕事では、全てが理想通りに運ぶわけではありません。どれだけ努力しても、結果が思わしくないこともあるでしょう。しかし、そこで重要なのは、「なぜその行動を取ったのか」。利用者さんのためを思い、善を実行しようとする動機があれば、その行動には倫理的な価値があります。たとえ結果が完璧でなくても、あなたの善意と誠実さは、きっと誰かに伝わるはずです。
不利益を恐れず「善」を選ぶ勇気
カントはまた、「自分が不利益を被っても善を実行すべき」と述べています。介護現場では、自分にとって損だと感じる選択を迫られることもあるかもしれません。例えば、「自分の休憩時間を削って利用者さんの話を聞く」「責任を取ってチームの失敗をフォローする」といった行動です。しかし、その選択が「正しい」「善である」と信じられるならば、不利益を恐れずに行動してみてください。その勇気ある行動は、利用者さんや周囲の人々の信頼を得るだけでなく、自分自身の心の満足感にも繋がるでしょう。
まとめ
介護の仕事は、判断や行動の結果だけを追い求めるのではなく、何を動機として行動したのかが重要です。カントの哲学が教えてくれるのは、感情や結果に流されるのではなく、理性と善意に基づいて行動することの価値です。目の前の利用者さんに誠実に向き合い、良い動機を持つことで、介護者としての倫理観がより深まるでしょう。
