29.「質問の力」で介護現場を成長させる
2025.05.01 |投稿者:神内秀之介
介護現場での人材育成は、利用者さんへのケアの質を高めるためにも、職場の未来を支える重要なテーマです。そして、ただ答えを教えるだけではなく、共に考え、学び合う方法が、育成の成功の鍵を握っています。古代ギリシャの哲学者ソクラテスが用いた「対話法」は、介護現場での教育や人材育成に大いに活用できる考え方です。
「質問の力」で考える力を引き出す
ソクラテスは、答えを一方的に教えるのではなく、相手に問いかけを続けることで、自ら答えに気づく道を示しました。介護の人材育成でも、この「質問の力」を活用することで、スタッフ一人ひとりの考える力を引き出すことができます。例えば、スタッフがケアに迷ったときに、「どうすれば利用者さんにもっと安心してもらえると思う?」と問いかけることで、自ら考え、答えを見つけるプロセスを促すことができます。
「知っているつもり」に気づかせる
ソクラテスは、「何もわかっていないのに、わかっていると思い込むこと」が人を成長から遠ざけると指摘しました。介護現場でも、新人スタッフや経験の浅い人が「これが正しいケアです」と固定的な考えを持ってしまうことがあります。しかし、現実の介護には多様性があり、一つの正解では対応できない場面が多いものです。質問を通じて、「なぜその方法が良いと思ったのか?」「他の方法は考えられないかな?」と問いかけることで、柔軟な思考と学びの姿勢を育てることができます。
普遍的な真理を問い直す勇気
ソクラテスの哲学は、「これが正しい」という普遍的な真理そのものを疑うことから始まります。介護現場でも、業界の常識や従来からのやり方をそのまま鵜呑みにするのではなく、「本当にそれが最適か?」を問い直すことが大切です。新しいスタッフの視点や、現場で感じた違和感を活かしながら、「もっと良い方法はないか?」と職場全体で考え続ける姿勢が、ケアの質をさらに向上させる原動力になるでしょう。
まとめ
ソクラテス式の問いかけを活用することで、介護現場の人材育成はより深く、実践的なものになります。「答えを与える」のではなく「問いかける」ことで、スタッフ一人ひとりが自ら考え、成長する力を引き出します。そして、それはただのスキル向上だけでなく、チーム全体の活性化や利用者さんへのより良いケアへと繋がっていくのです。
