❖介護現場生産性向上・・・
2021.12.22 |投稿者:神内秀之介
医療介護総合確保推進法に基づく「地域医療介護総合確保基金」(国2/3、県1/3) を活用した独自提案事業として、三重県老人保健施設協会が平成27年度から実施し、都道府県における「先駆的な取組事例」として、厚生労働省主催の「介護人材確保地域戦略会議」で紹介されました。
その後、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月9日閣 議決定)において「実際に生産性向上に取り組む地域の中小企業、サービス業に対する支援を図る」ことを目標値して介護業界に対しても、「介護サービスにおける生産性向上のガイドラインの作成等を行い、事業者団体等の横展開を支援する。」として、現在に活用されているガイドラインの第一版が出来上がりました。
さらに、平成30年12月11日に、全国規模のパイロット事業として第1回介護現場革新会議顔合わせ・キックオフを開催し、老施協・全老健・日本医師会・GH協・日慢協の各団体の会長・副会長や理事と厚労省で、具体的なテーマとして、「①業務仕分け・ロボット・ICT・元気高齢者活用の三位一体型効率化 、② ロボット・ICTの活用、③介護業界のイメージ改善について」議論しました。
その後、2019年2月14日(平成31年2月14日)・委員からの発表・意見交換、2019年3月14日(平成31年3月14日)・基本方針のとりまとめ、2019年3月28日(平成31年3月28日)・「介護現場革新会議 基本方針」の公表という流れで進められ、平成31年度パイロット事業として7つの自治体が実際に取り組み、2020年3月5日(令和2年3月5日)・パイロット事業実施自治体からの報告(新型コロナウイルスの影響のため参集なしの、報告書配信のみ)に至りました。
それぞれどんな取組を行ったかというと、宮城県は、①物品調達等の合理化、介護職員のキャリアパスモデルの構築、②ICT機器を用いた業務効率化の実証,効果分析等 (うち,インカムの導入)。
福島県は、①若手経営者による業務仕分け(タイムスタディ) 、②ロボット・ICT等の実証、③センサーを活用した高齢者の見守りの実用性に関する検証、④高齢者による介護の補助(介護助手)・見守り支援、⑤介護オープンラボの開催(介護現場の将来像〔課題とその解消〕) 。
北九州市は、①ICT・介護ロボット等を活用した新たな介護の働き方の実証、②ICT・介護ロボット等活用の介護の専門人材育成、③ICT・介護ロボット等を活用した働き方改革の好事例集、④多世代・多分野のワークショップ等介護職の魅力度アップ。
神奈川県は、①施設でのロボット・ICT実証実験 (記録支援・見守り支援・移乗支援・排泄支援・コーチング支援)、②大学と連携した音楽活動のマニュアル化、③介護施設用記録ソフトの開発に向けた協働、④AIを活用したケアプラン点検の試行、⑤かながわ感動介護大賞。
三重県は、①介護助手の効果的な導入方法の検討、②インカムを活用した介護業務の負担軽減、③介護現場の魅力発信の強化。熊本県は、①介護現場(介護職自身)からの魅力発信、②人材不足の状況でも介護の質の維持・向上を可能とする介護現場のマネジメント 、③働きやすい職場づくり、介護の質の向上につながる事業所運営の促進、④介護分野への若者の新規参入を促す取組の深化。
横浜市は、①業務の「標準化」「簡素化」「平準化」、②ICTを活用したシステム導入、③携帯翻訳機による外国人介護職員のコミュニケーション支援、④ eラーニングによる介護知識、技能、介護の日本語等の教育支援、⑤外国語版「介護の仕事PRビデオ」の作成(ベトナム・インドネシア・中国)。というその自治体それぞれが抱えている課題を解決するために様々なアイデアを凝らした先進的で参考となる取組を行いました。(詳細を知りたい方は、厚生労働省のホームページ「介護現場革新会議(第5回)資料」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00024.html を確認ください。)
そして今年度(2020年度)は、各県で介護現場革新会議が設置され始め、北海道においても名称を「北海道介護現場生産性向上推進会議」として、第1回会議が2020年8月20日に開催されました。構成メンバーは、北海道老人福祉施設協議会や北海道ホームヘルプサービス協議会、北海道介護ロボット普及センターなど福祉団体11団体や学識経験者、民間企業となっています。
会議は、所管の北海道保健福祉部高齢者支援局長の挨拶から始まりました。冒頭の挨拶の中では、北海道では1年間で旭川市と同程度の30万人の人口減少しているのにも関わらず、高齢者人口が34万人増加し、高齢化が加速しているのにも関わらず、特に若い介護人材が不足し、将来的な担い手不足の課題が深刻な状況であることや、北海道としてあらゆる施策を講じている中で、他産業と比べ遅れているI C Tなどの活用を福祉の業界の中でも推進していき、好事例の発信や介護サービスの質の向上、働く人のモチベーション向上を目指していきたいと考えが伝えられました。
議事の中では、事務局からの説明で、今後「介護事業所実態調査」の実施や今年度北海道で取り組む「生産性向上推進モデル事業」の紹介もあり、このモデル事業では応募15事業所のうち用件に該当しない1事業所以外の14事業所の中から、先に開催された選定審査会で7事業が選定されたことが説明されました。
内容は、訪問・通所系サービスが3事業、居住系サービスが3事業、介護保険施設系が1事業で、道内5つの市町で展開されることとなっており、それぞれI C Tソリューションの活用はもとより、そもそもの目的である介護サービスの質の向上を達成するために、働く人のモチベーション向上・楽しい職場・働きやすい職場作り、人材の定着・確保につながる先行好事例となるべく取り組まれます。また、モデル事業がそれぞれの事業所へ事業を丸投げするのではなく、会議の委員が現地に赴き状況などの把握や助言などを行うことも確認されました。
併せて、「令和2年度介護ロボット導入支援事業補助金」について説明があり、こちらは事前協議件数が365事業所(内訳・重複事業所有り:介護ロボット導入事業119事業所、見守り機器導入に伴う通信環境整備93事業所、I C T導入事業149事業所)となっており、今後8月下旬から9月上旬に内示がされ、その後交付申請書受付・交付決定が行われることが説明されました。
第1回目の会議の中心的な議論テーマとして「北海道介護現場の生産性向上推進への対応方針骨子(案)」について意見交換などが行われました。まず前段として「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」の中身や活用度についてなどの情報共有がなされましたが、存在は知っているけど中身まではよく理解していない、活用までには至っていないなどの声が多く聞かれ、まだまだガイドラインそのものが浸透していない現状が確認されました。ただ、全てではないけれど事例を参考にし、一部を活用しているなどの意見も少数ながら聞かれました。
骨子(案)についての意見交換では、I C Tなどの活用は施設系にはマッチするが、在宅系では中々導入が難しいことや、そもそも現場の人員・担い手が既に足りていない厳しい現状、現行の介護報酬ではイニシャルコストもさることながら、ランニングコストの負担も大きく経営に影響し導入することが困難な課題が確認されました。
また、多くの委員から改めて、介護現場の生産性や効率性イコール人員削減やI C Tなどの導入ではなく、あくまでも介護サービスの質の向上が目的であることが共通理解され、骨子では言葉の選定や表現についても北海道独自の工夫を盛り込むことや、広域広大な地域性や長期の降雪地帯である特色などにも配慮した骨子にしてはどうかなどの意見も提案がなされました。
ちなみに、今年度(2021年度)は、12月24日が締め切りです。あと2日しかありませんが、是非我こそはという方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/r3gyoumukaizenn-model-.html
昨年度の結果は、こちらでみれます。https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/gyoumukaizen.html