❖デジタルシフトはマインドシフト(前編)


2021.02.13 |投稿者:神内秀之介

 私たちは、新型コロナウイルスと付き合い「ニューノーマル(新しい日常)」へ第一歩を否応なしに歩み始めることとなりました。所謂(いわゆる)「3密」を回避し「ソーシャルディスタンス」(私はこの言葉も状況も好きではありませんが。ここで好き嫌いを言ってもしょうがありませんが、これまで介護や福祉の現場で「社会正義的」なキーワードを盾に、それに関わる人々が相対化されたり分断されたりといった権利や人権などが蔑(ないがし)ろにされることがままあったので・・・素直な皆さんはそのままいうことを聞かざるを得ないし・・・自粛警察が出回るし・・・)を確保するといった新しい生活様式において、職員や利用者・入居者、関係機関・地域住民や社会などを含めたステークホルダーとのつながりを再構築し事業所・施設の事業経営(運営)を再始動するという大きな挑戦を走りながら行わなくてはなりません。

 またそれは同時に、これまでの事業継続のサステナビリティやSDGs(持続可能な開発目標)などの新しい課題への取り組みなど、新型コロナウイルス前から取り組んでいた課題への対応も継続的に必要となっています。

 私個人としてはこれら全てを包摂した課題に対し個々の事業所・施設や介護・福祉の業界全体が果たす役割は、新しい日常において、社会からの期待も含めてより一層大きくなっていると感じています。

 これまでも介護・福祉業界・現場のイノベーションであるとか、社会福祉法人の体質改善などと声高らかに唱えられてきましたが、まさに今こそ私たちの培ってきた英知と経験、緊張感とスピード感を持った実行が試されていると思います。

 新しい日常は、特に私たちと職員や利用者・入居者、関係機関・地域住民や社会などを含めたステークホルダーとのつながりなどの関係構築において、後戻りすることのない大きな2つの転換(シフト)が余儀なくされていると思います。

 まず1つ目は、「デジタルシフト」です。日常生活では、ネットショッピングや電子決済などの購買行動(デジタルコマース)、一部予備校などではすでに取り入れら得ていましたが義務教育や公立高校などの教育現場でのオンライン授業やe-ラーニング・タブレット学習、先行して試験導入された医療現場でのオンライン診療、そして私たちの業界でもこの連載でも取り上げたオンライン会議や面談、テレワークやリモートワークなどにおける急速なデジタルシフトは、今まで「当たり前」であった、人と人とが実際対面形式で行なっていたつながり方を瞬く間(この緊急事態宣言のおよそ2ヶ月半程度)にデジタル(非対面式・間接対面式)でのつながり方へと変えてしまいました。

 また私たちの業界もそうでしたがオンライン化が困難と言われる他の業界においても、自動化やAIの導入、ロボティックスの活用が急速に進んでいます。日常が、社会が変わってしまったのです。

 そこで共通するのは、業種業界を問わず、また事業規模の大小を問わず。皮肉にもあんなに国や経営者や管理者がA I・I C Tの導入加速を提唱していてもなかなか進まなかったにも関わらず、この事態によってスピード感を持ってこの「デジタルシフト」に対応せざるを得ない状況になってしまったのです。

 そして、こちらの方が重要ですが2つ目は「マインドシフト」です。まったなしのデジタルシフトの急速な拡大は、介護・福祉サービスを提供する側と介護・福祉サービスを受ける利用者・入居者・家族という受益者のつながり方・関係に大きな変化をもたらします。特に提供サービス対する期待はこれまで以上に高いものになってしまう可能性があります。

 なぜなら、介護・福祉サービスの一部または全部がデジタル化することにより、これまでブラックボックス(見えない・わからない・信用で任せていた)だったサービスの内容が見える化されることにより、サービスを提供するスピードや質に対する期待はこれまで以上にシビアになり、より一層の誠実さや正確さが要求されることが想定されます。(限られたリソース(資源)の中でサービスを提供している側としては、酷な話になりますが・・・事前の重要事項説明もさらに大切になりますね。)

 また変化に対応しリアクティブ(即時的・事後的)に対応するだけではもはや期待に応えることができずというか、それがスタンダード(当たり前)とされ、長期的に利用者・入居者・家族などの満足を維持することが難しくなってきます。

 そこで介護・福祉サービス提供者側はデジタル化の先回りをして、「見える化された先」には、利用者・入居者・家族などがサービス提供に対するどんな期待の変化が生まれるかを想定しておくことが必要となります。利用・入居者・家族等の新たなニーズを専門職の集団・専門性の高い業界として事業所・施設自らが創造していくというマインドシフトがますます重要になってくる可能性があります。


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