48.実務経験の棚卸と振り返りの技術


2025.09.13 |投稿者:神内秀之介

〜主任ケアマネジャーが築く「次の一歩」のために〜
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)として働く中で、多岐にわたる業務と役割に日々向き合う中で、ふと「あのケースをもっと良くできなかっただろうか」「自分のスキルは本当に高められているのだろうか」といった疑問や考えが浮かぶ瞬間があるかもしれません。
そんなときこそ、自分が経験してきた実務を改めて振り返り、「棚卸」することが必要です。経験を体系化し、自分の成長や次のステップに役立てることで、主任ケアマネジャーとしての実践力が一層深まります。今回のコラムでは、実務経験の棚卸と振り返りを効果的に行う技術について、ソーシャルワークの理念を基に解説します。

1️⃣ 実務経験の棚卸とは?
実務経験の棚卸とは、これまで自分が経験してきた業務や支援内容、成果、課題を可視化し、それを体系的に整理することです。このプロセスを通じて、自分の強みや弱点を把握し、改善点や次の学びのテーマを見つけることができます。
• 棚卸の目的
o 自分の成長を確認する:積み重ねてきた経験やスキルを振り返り、進歩を実感する。
o 課題の発見:見えなかった課題や業務の改善の余地を発見する。
o 未来への準備:自己成長やキャリアアップのための方向性を明確にする。
• 棚卸を行う効果的なタイミング
o 資格更新や研修受講の前。
o チームや業務内容が変化したとき。
o 日々の忙しい業務の中で一息ついて振り返りが必要だと感じたとき。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「プロセス志向(Process-Oriented)」を基盤に、経験の振り返りを成長の軌跡として捉えましょう。

2️⃣ 棚卸を行うステップ
実務経験を整理するための棚卸のステップを以下にご紹介します。このプロセスを繰り返すことで、効率よく自分自身の成長を俯瞰できるようになります。
ステップ1:経験を書き出す
• これまで対応した主なケースや業務内容、関わったプロジェクトを時系列で書き出す。
• 例:居宅サービス計画の作成、認知症利用者のケース対応、緊急時の訪問調整、多職種連携会議の運営など。
ステップ2:成功体験と課題を整理する
• 成功事例:良い結果を生んだ支援や行動を具体的に挙げる。
• 課題事例:困難を感じたケースや反省点を整理する。
ステップ3:詳細を振り返る
• 「何が成功の要因だったか」「なぜ課題が生じたのか」を分析する。
• 例:利用者目線で話を聞いたことで信頼関係が深まった、一方で多職種の意向すり合わせに時間がかかった、など。
ステップ4:学びや改善点を抽出する
• 成功事例からは「自分の強み」、課題事例からは「改善すべき点」を明確にし、それぞれを次に活かすためのアクションプランを考える。
ステップ5:記録を残す
• 振り返った内容をまとめて記録に残し、定期的に見返す習慣をつける。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「反省(Reflection)」を行い、成功と課題を両軸で整理することで、次のステップの方向性が明確になります。

3️⃣ 振り返りを深める質問例
振り返りを効果的に進めるためには、具体的な質問を立てて考えるのが有効です。以下にいくつかの質問例をご紹介します。
• 成功体験についての質問
o どうしてこの支援がうまくいったのか?
o 自分のどのスキルや行動が影響を与えたのか?
• 課題についての質問
o この事例での課題は何だったのか?
o 別のアプローチを選ぶとしたら、どうすれば良かったか?
• 将来についての質問
o この経験を通じて何を学び、どう成長できるか?
o 次に同じような状況に直面したら、どのように対応するか?
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「共感(Empathy)」を自分自身にも向け、振り返りの中で成長を一歩一歩認めることが重要です。

4️⃣ 振り返りを実務やキャリアに活かす方法
棚卸して得られた「気づき」や「経験」を、日々の実務やキャリアにどう活かしていくかが肝心です。単なる振り返りで終わらない行動計画を立てましょう。
• 日々の実務への反映
o 振り返りで得られた教訓をケアプランの改善や利用者支援に活用する。
o 「次回から気をつけるべき点」を記録して実行に移す。
• 研修や学びの方向性を見定める
o 棚卸から見つけた課題をもとに、必要な研修や資格取得に挑戦する。
o 例:多職種連携の課題を感じた際にはそのテーマの研修に参加する。
• チームや後進への共有
o 自分の成功や課題をチームに共有し、新しい視点やスキルを伝えることでチーム全体の成長を目指す。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「共有(Collaboration)」を意識して、得られた学びを他者と分かち合うことで、一人では達成できない影響力を広げましょう。

5️⃣ 棚卸と振り返りを定期的に行うメリット
こうした振り返りを日常的に行うことは「点の学び」を「線の成長」につなげる大切な習慣です。定期的な棚卸の実施が、自分のキャリアデザインやスキルアップの源となります。
• 定期的な振り返りのメリット
o 自分の成長を可視化し、さらなる学びへの意欲が湧く。
o 常に次の目標や挑戦が明確になることで、仕事へのモチベーションが向上する。
o 自分の経験から得た知見を地域やチームに還元できる。

🌟 最後に:経験の整理が未来を拓く
主任ケアマネジャーとしての日々の実務で得られる経験や学びは、自分だけでなく利用者、家族、チーム、地域に対して大きな価値を持つ「財産」です。それを棚卸しし、振り返ることで、次の一歩を力強く踏み出す土台を築くことができます。
ソーシャルワークの理念を土台に、自分の軌跡を大切にしながら、目指すべき未来像を具体的に描いていきましょう。その取り組みが、利用者支援の質を高め、あなた自身のキャリアを輝かせる力となるのです!


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