福祉サービス第三者評価ガイドラインを活用した介護事業経営~記録と共有がつなぐ「安心・信頼・成果」~
2025.09.12 |投稿者:神内秀之介
介護の現場において、利用者へのサービスがどのように実施されているかを正確に記録し、それを職員間で共有することは、業務の核となります。一人ひとり異なるニーズを持った利用者に対して、一貫性のある支援をチーム全体で提供するには、記録と共有が欠かせません。福祉サービス第三者評価ガイドライン「Ⅲ-2-(3)-①」では、この記録と共有の適切な運用が求められています。
「記録はただの作業ではない」。それを活用し、組織全体で支えるしくみ作りについて一緒に考えてまいりましょう。
- 記録と共有がもたらす3つの効果
① 利用者へのサービス品質の向上
記録を正確に残し、職員間で共有することで、利用者の状態や変化、目標に合わせた一貫性のあるケアを提供できます。「誰がどの時間に担当しても同じ質のサービスを受けられる」ことが利用者の安心につながります。
② 職員間の連携強化
記録の共有はチームワークを支えます。普段接していない職員であっても、一目で利用者の状態や必要なケア内容を把握できれば、円滑な業務が可能になります。
③ トラブルの防止・早期解決
記録が適切に行われていれば、トラブルや事故が起きた際も、その原因をしっかりと追求できます。また、早めにサインを見逃さず対応することで、大きな問題を未然に防ぐことができます。 - 適切な記録を行うためのポイント
① 記録内容を的確かつ簡潔に記載する
• 利用者の状態や対応の経過を、具体的かつ分かりやすい言葉で記録します。
• 長文にする必要はなく、「いつ・どこで・何をした」の3点を押さえることが重要です。
例:
• 悪い例:「少し元気がない」
• 良い例:「午前10時、リハビリ後に疲れた様子あり。表情が乏しく声掛けも少なかったため、ベッドで休息を促し観察を続ける」
② スピード感を重視
イベントが起こった直後に記録するクセをつけます。時間が経ちすぎると詳細やニュアンスを忘れ、正確な記録が難しくなるためです。
③ 客観的な表現を用いる
記録では、自分の主観を避け、事実を明確に記載することが求められます。「利用者が何をしたか」「どう答えたか」に焦点を当てましょう。 - 職員間での共有をスムーズに行う工夫
① デジタルツールの導入
ペーパーベースでは情報共有が遅れる場合、デジタルツールを導入すると改善できます。電子記録システムを活用することで、リアルタイムに情報を共有できます。特にクラウド型のシステムなら、多くの職員が同時にアクセス可能です。
② 情報の重要度を明確化
記録の中で特に重要な内容(状態変化や医療対応の必要性など)については、職員全員が一目で分かるようにマークや色分けを利用すると効果的です。
③ 朝夕の定例ミーティングで共有
全職員が集まれる短時間の定例会を活用し、利用者の状態や重要事項を共有します。この場で、「誰が・何を・どのように」対応すべきかを明確にしましょう。 - 記録・共有の成功事例
事例①:転倒防止策の記録と連携で成功
施設Aでは、ある利用者が「足元がふらついて危ない」という記録が共有されました。早速チーム全体で話し合い、転倒防止用の歩行器導入を決定。その後、効果が記録に反映され、「転倒の心配が大幅に改善」したと職員全員が安心し、利用者からも感謝の声がありました。
事例②:栄養状態の改善
施設Bで、新しい利用者が食事時に「食べる量が少ない」と記録され、職員間で共有されました。その結果、好みに合わせた変更や食事リズムの調整が行われ、1か月後には摂取量が増加。これも職員全員が状況を共有し、早期対応ができた成功例です。 - 朝10分でできる「記録・共有」の習慣化
• 昨日の状況の確認
「○○さんは昨日こんな様子でした」「この対応が特に効果的でした」と話し合うだけでも、共有のスタートになります。
• 記録の振り返りポイントを確認
朝礼で「記録の力を意識しよう」という一言を投げかけ、職員の意識を整理する場を設けます。
• 特に注意すべきポイントを共有
「体調が変化しつつある方や、今日の予定に配慮が必要な利用者」を明確に挙げておく。
朝の10分間では全職員が集まりやすいため、ちょっとした情報共有や記録の振り返りの場として活用するだけで、現場全体の連携が深まります。
まとめ
介護現場での記録と共有は、単なる業務フローではなく、利用者の安全と安心を守り、職員間の信頼と働きやすさを支える重要な土台です。適切な記録と共有の徹底は、施設全体のサービス品質を高め、利用者や家族、職員すべての満足度を向上させます。
「記録は未来のために活用する」。
その意識を胸に、朝の10分を効果的に使い、チーム全体で記録と共有を再確認する習慣を始めましょう。それが利用者の笑顔をつくる第一歩です。
#福祉サービス第三者評価を広げたい