福祉サービス第三者評価ガイドラインを活用した介護事業経営~定期的な見直しで、利用者に最適なサービスを提供する仕組みを継続~


2025.09.11 |投稿者:神内秀之介

介護業務において、利用者一人ひとりのニーズは時間の経過や体調の変化とともに変わっていきます。そのため、一度立てた福祉サービス実施計画をそのまま進めるだけでは、利用者にとって適切なサービスを提供できない場合があります。福祉サービス第三者評価ガイドラインの「Ⅲ-2-(2)-②」では、利用者の状況や必要性に応じて、定期的に計画を評価・見直すことの重要性が強調されています。
では、この「評価・見直し」を具体的にどう行い、計画に反映させていくべきでしょうか?

  1. 見直しがもたらすメリット
    ① 利用者に常に最適なサービスを提供できる
    利用者の状況が変化しても、その変化に合わせて計画を柔軟に対応すると、利用者は安心してサービスを受けられます。例えば、リハビリの成果が見られた場合には、新たな目標を設定してさらなる改善を目指すサポートが可能です。
    ② 利用者満足度の向上
    計画が利用者のニーズにしっかりと寄り添っていることで、満足度が上がり、家族からの信頼感も深まります。「自分の意見が反映されている」と感じてもらうことが重要です。
    ③ 職員のサービス提供の効率化
    サービス実施計画が現場の現状と噛み合っていることで、職員一人ひとりがスムーズに対応できるようになり、無駄が減ります。
  2. 実施計画の評価・見直しのステップ
    ① 定期的なモニタリング
    利用者の状況を把握し、計画が適切かどうかを確認するための「定期的なチェック」が最初のステップです。
    • 日々の記録や報告を基に、利用者の体調や反応、必要なサポートの変化を確認します。
    • モニタリングは月1回、もしくは3か月ごとの周期でチーム内で実施すると効果的です。
    ② 利用者や家族とのコミュニケーション
    評価・見直しの際には、利用者やその家族との対話を重視しましょう。計画が生活実態に寄り添っているかどうかは、直接話を聞くことでしか分からない部分も多くあります。
    • 「現在のサービスに改善点はないか」を家族や利用者に尋ねる。
    • 利用者自身の希望や目標を聞き取り、新たなサービス内容に反映させる。
    ③ 課題点を把握し、具体的な修正を実施
    モニタリングや対話の結果を基に、「どの部分がうまくいっていて、どの部分を変更すべきか」をチーム全体で検討します。
    • 計画の目標や内容が曖昧なら、具体的かつ測定可能な形に再定義(例:「筋力向上」→「リハビリを通じて30m歩けるようになる」)。
    • 現場で実行可能な改善案に落とし込むことで、無理なく計画を運用できるようにする。
  3. 見直しを効果的に行う工夫
    ① チームミーティングを活用
    全職員が参加する場を定期的に設け、計画内容や実施状況を話し合うことが大切です。
    • 一つの利用者についてリーダーだけでなく、担当スタッフ全員が意見を出し合う。
    • 現場からの「気づき」や「改善の提案」を積極的に取り入れる。
    ② 改善点をわかりやすく可視化
    見直し後の内容や目指すべき改善のポイントを「見える化」することで共有がスムーズになります。
    • グラフやチェックリストを活用して、サービスの進行状況や成果を全員把握できるようにする。
    • 職員の全員が簡単に確認できるフォーマットで記録をアップデートする。
    ③ 定期的な研修を導入
    計画を見直す際、最適な判断が行えるように職員を対象とした研修を取り入れることも重要です。
    • 福祉サービスに関する新しい知識を共有することで、計画変更の質が向上します。
    • 実例をテーマにしたグループディスカッションが効果的です。
  4. 評価・見直しの成功事例
    事例①:リハビリ計画の柔軟な修正
    80代の利用者が「散歩中にふらつく」と相談。他スタッフに報告して集団でモニタリングを実施した結果、新たなバランス訓練を追加し、「距離を短めで回数を増やす」という変更を実施しました。短期間でふらつきが改善し、利用者の満足度が高まりました。
    事例②:食事サービスの見直し
    初期の計画では「家族同様の献立」が希望されたが、利用者の体調変化により糖質制限が必要に。栄養士が状況を見直し改訂した結果、体調が安定し、「安心して生活できる」という声が寄せられました。
  5. 朝10分でできる「見直し」習慣のスタート
    • 職員間の簡単な情報共有:「今気になる利用者はいますか?」という問いかけから課題を洗い出す。
    • 過去のモニタリングポイントを確認:「前回の見直しで気をつける点を意識できていますか?」と振り返るだけでも良い習慣になります。
    • 利用者からの声をシェア:「○○さんは最近さらに歩ける距離を増やしたいと言っていました」などの小さな情報を共有する場を作る。
    朝の10分を見直しのきっかけにすることで、日々の改善活動がスムーズに行えます。

まとめ
福祉サービス計画をただ立てるだけでなく、利用者の変化や現場の声を反映した「評価・見直し」の仕組みを構築することは、サービスの質を向上させ、利用者満足度を高める重要なプロセスです。
「必要なサービスを、必要なときに、最適な形で届ける」。
そのために、朝の10分を見直しの第一歩として活用し、みんなでより良い計画づくりを進めてみませんか? 小さな積み重ねが、大きな満足感と信頼を生み出す力になります。

#福祉サービス第三者評価を広げたい


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