福祉サービス第三者評価ガイドラインを活用した介護事業経営~災害時でも利用者の安全を守るため、今こそ備えを強化~


2025.09.07 |投稿者:神内秀之介

地震や台風、大雨などの自然災害が頻発する日本において、介護施設が担う最大の使命は、災害時における利用者の安全をいかに確保するかにあります。高齢者は体力的にも移動が難しい場合が多く、災害に弱い存在と言えます。そこで重要になるのは、施設全体で組織的に取り組む災害対策です。福祉サービス第三者評価ガイドライン「Ⅲ-1-(5)-③」では、利用者の安全を守るための災害対策を整備し、具体的な行動計画を実践することが求められています。
では、どのようにして災害時にも利用者を安全に守る体制を作り、継続的に強化することができるのでしょうか?

  1. 災害時の対応力が「信頼」を決める
    災害への備えが万全であれば、利用者やその家族に「安心して任せられる施設」という信頼感を与えることができます。一方、準備不足や組織的な対応が不十分であれば、万が一の際に施設経営に重大な影響を及ぼしかねません。
    具体的に災害対策への取り組みには以下のメリットがあります:
    • 生命の安全を優先した迅速な行動が可能:準備がしっかりしていれば混乱を最小限に抑えられる。
    • 施設への信頼が高まる:利用者やそのご家族に「災害時でも安心していられる」と感じてもらえる。
    • 職員の連携が強化される:平時から災害対応を意識することで、チームワークが向上する。
    災害が起きたときの対応力が、施設の評価を大きく左右するのです。
  2. 災害対策体制を構築するポイント
    ① 災害対応マニュアルを整備する
    施設内で統一された災害対応のルールをつくり、職員全員で共有します。
    • 具体的な避難計画:地震や火災など、災害ごとに避難動線や集合場所を設定。
    • 支援の優先順位:動きが不自由な利用者への助け方や、避難時の役割分担を明確化。
    • 連携方法:家族や医療機関、地域の避難所との協力体制をマニュアル化。
    ② 定期的な訓練の実施
    頭で考えただけでは、災害時に冷静な行動を取ることは難しいものです。実際の訓練を通じて行動を習慣化することが重要です。
    • 避難訓練:年に2~3回実施し、緊急時の動きが職員全員の体に染みつくまで訓練。
    • シナリオ型訓練:火災や地震、水害などを想定した具体的なストーリーで訓練をリアルに行う。
    • 机上訓練:職員全員で災害発生時の役割分担と対応をシミュレーションする。
    ③ 必要物資の備蓄を点検する
    物資が不足していては、いくら完璧な計画があっても対応できません。
    • 水・食料:3日分以上の備蓄を確保。
    • 医療用品:緊急時に使用する簡易医療キット、予備の処方薬。
    • 防災グッズ:懐中電灯、毛布、携帯用トイレなどを定数で管理。
    • リストの整備:物資の管理リストを作成し、定期的に更新・点検。
  3. 災害時を想定した職員間の連携強化
    災害が起きた際には、職員の連携がスムーズであればあるほど対応のスピードが上がります。普段から連携を意識した取り組みを行いましょう。
    • 情報共有の仕組み化:避難経路変更や物資状況など、新しい情報を即共有できるホワイトボードやアプリアプリの活用。
    • 役割分担の明確化:「避難誘導係」「連絡係」「医療物品管理係」など、役割を平時のうちに設定する。
    • フィードバック体制:訓練後には必ず反省会を行い、「次回はどこを改善するか」を話し合う。
  4. 利用者や家族と一体となる防災対策
    災害対応は職員だけでなく、施設を利用する全ての方々と一緒に行うことが重要です。
    • 家族向け説明会の実施:災害時の施設の対応方針や、家族に協力してほしい取り組みを説明する場を設ける。
    • 利用者にも分かりやすい訓練:普段の行動訓練を取り入れ、避難経路や行動を安全に理解してもらう。
    • 日々のコミュニケーション:「もし災害が起きたらどうしますか?」と日常会話の中で安心感を育てる。
  5. 朝10分でできること
    日常業務の中でリスク意識を高めるためには、朝の短い時間を活用する習慣が大切です。例えば:
    • 前回の訓練結果を共有:「ここがうまくいきました」「改善点はここです」と簡潔に確認。
    • 災害対策のポイント確認:朝礼で「今日は火災の場合の避難経路を確認しましょう」といった具体的アクションを取り入れる。
    • 備蓄品のチェック担当を決める:担当者をローテーションで決め、備蓄品や防災設備を定期的に点検する習慣を作る。

まとめ
介護事業における災害対策は、利用者の命を守るだけでなく、職員や家族の安心感を高め、施設全体への信頼を築く重要な取り組みです。災害はいつ起きるかわかりませんが、備えがあればどんな状況でも冷静かつ迅速に対応できます。
「備えが命を守る」。そんな信念を持ち、朝の10分から対策強化を始めてみませんか?小さな取り組みを積み重ねることで、いざという時に利用者の命をしっかりと守る頼れる施設をつくりあげましょう。

#福祉サービス第三者評価を広げたい


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