37.地域支援事業の理解と活用方法


2025.09.01 |投稿者:神内秀之介

〜主任ケアマネジャーがつなぐ「地域力」で実現する豊かな生活〜
地域支援事業は、介護保険制度の中で、要支援状態の高齢者やその予備群となる人々の健康をサポートし、自立した生活を維持するための重要な仕組みです。これは、利用者本人や家族だけでなく、地域全体の福祉力を高める上でも欠かせないシステムです。
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の役割はただ利用者支援を行うだけでなく、地域支援事業を正しく理解し、それを利用者や家族、さらには地域住民全体に適切に活用することで、地域包括ケアの実現を後押しすることにあります。今回は、地域支援事業の概要と、その実践的な活用方法について解説します。

1️⃣ 地域支援事業とは何か?
地域支援事業は、市区町村が主体となり、高齢者が住み慣れた地域で健康的かつ自立した生活を送れるよう支援する仕組みです。この事業は、要介護状態となるリスクを軽減すると同時に、元気な高齢者を支え、地域の中で活躍できる場を作ることを目的としています。
• 地域支援事業の目的
o 介護予防:高齢者が健康で元気に生活できる期間を延ばす。
o 地域力の向上:地域で高齢者を支える仕組みづくりを推進する。
o 安心できる生活環境の提供:高齢者が孤立せずに地域社会の一員として生きる助けとなる。
• 地域支援事業の主な内容
o 介護予防・生活支援サービス事業
例:通所型サービス(介護予防教室、デイサービス)、訪問型サービス(軽度の介護サポート)。
o 一般介護予防事業
例:地域での健康教室、フレイル予防活動、運動指導。
o 包括的支援事業
例:地域包括支援センターが行う相談業務や権利擁護。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「利用者中心(Person-Centered)」の視点を大切にし、地域支援事業が個々の高齢者の生活の質を向上させる基盤であることを理解しましょう。

2️⃣ 地域支援事業を活用するメリット
地域支援事業を適切に活用すると、利用者支援だけでなく、地域全体での福祉活動が活性化します。主任ケアマネジャーとして、事業の活用がもたらすメリットを意識しながら支援に取り入れましょう。
• 地域支援事業を活用する主なメリット
o 利用者の介護予防が促される
運動教室や生活支援を通じて、利用者が要介護状態になるリスクを軽減できる。
o 地域住民の関係を深める
支援事業に参加することで、高齢者が地域の人々とつながりを持てる場となる。
o 介護サービスと補完できる
要支援状態の場合でも、地域支援事業を活用することで、補完的な支援を行える。
o 多職種連携の基盤を強化
地域包括支援センターや行政、地域住民の協力が進むことで、支援の輪が広がる。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「共感(Empathy)」を基盤に、利用者や住民が地域支援事業を通じて社会参加や自己実現を果たせるようサポートしましょう。

3️⃣ 地域支援事業を実務に活かす方法
地域支援事業を現場で具体的に活用するには、そのシステムをよく理解した上で、利用者や家族への提案、支援計画への組み入れを行う必要があります。
• 活用の実務的な方法
o 利用者への提案
例:「毎週行われている地域の健康教室に参加してみませんか?」といった声かけで、介護予防活動への参加を促す。
o ケアプランへの反映
区分支援などの軽度サービス利用を希望する場合、地域支援事業の該当サービスをケアプランに組み込む。
o 地域包括支援センターとの連携
地域包括支援センターを活用し、必要な情報や支援策について連絡を密に取り合う。
o 家族や関係者への説明
介護保険サービスではないからこそ、「地域の中で支えられることで生活がどう改善するか」を分かりやすく説明する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「エコロジカルアプローチ」を意識し、利用者が地域資源を効果的に活用できるよう働きかけましょう。

4️⃣ 地域支援事業の課題とその解決に向けて
地域支援事業には課題も多くありますが、主任ケアマネジャーとして積極的に問題を整理し、解決策を見いだすことが必要です。
• 主な課題と解決策
o 参加者の偏り
課題:参加者が意欲的な高齢者に偏りがち。
解決策:対象となる利用者全体を見渡し、参加の声かけを工夫する。
o 周知不足
課題:サービスの存在や内容が十分に伝わっていない。
解決策:地域のミーティングでの情報提供や、パンフレット配布で周知を図る。
o 接続が難しい
課題:制度と実際の支援の間にギャップがある。
解決策:行政との連携を強化し、柔軟な支援が提供できるよう調整する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「権利擁護(Advocacy)」を意識し、課題があれば声を上げ、運用が利用者にとってより良い形になるよう提案しましょう。

🌟 最後に:地域支援事業は「つながる力」
地域支援事業は、単なる介護予防のための仕組みではなく、地域全体を支え合う基盤を構築するための重要な手段です。主任ケアマネジャーとして、その理解と活用を深め、制度を地域住民や利用者に最大限役立てる視点を持ちましょう。
ソーシャルワークの理念を基盤に、地域支援事業が「誰もが支えられる地域づくりの仕組み」へと進化するための橋渡し役となりましょう。その取り組みが、地域包括ケアシステムを強化し、住みやすい社会を実現する力となります!


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