146.チーム全体を成長させるリーダーシップ
2025.08.27 |投稿者:神内秀之介
介護の現場で問われるリーダーシップは、強い声で引っ張ることではありません。目の前の利用者さんに最善のケアが届き、スタッフ一人ひとりが自分の力を発揮できる「場」を設計し、成長の循環を生み出すことです。人は安心の中で挑戦し、挑戦の中で学び、学びの中で誇りを得ます。ミドルマネジャーであるあなたが整えるのは、その連鎖が自然に回る職場の仕組みです。
ここでは、チーム全体を成長させるための、実践的で思想の通った5つの観点を提示します。
- 目的を一行で語れるようにする
• 毎朝、「私たちが今日守る最重要は何か」を一行で示す。例「誤薬ゼロのための二重確認」。
• 目的が短く明瞭であるほど、現場の判断は揃い、学びの方向も揃う。
• 掲示・朝礼・申し送りの三点で同じ文言を繰り返すことで、価値観が行動に落ちる。 - 安心と挑戦の「幅」を設計する
• 新しい試みを小さく試せる安全地帯を用意(1週間トライ→振り返り→固定化/撤回)。
• 失敗は個人ではなくプロセスで検証。「誰が」ではなく「どうすれば」で語る。
• 成功基準を事前に数値と出来事で定義(転倒率/時間短縮/表情の変化など)。 - 権限移譲は「責任・権限・支援」をセットで
• 任せる時は、決めてよい範囲、使える資源、相談窓口を明確化。
• 例:「物品発注の金額上限3万円/週、在庫基準表あり、迷ったら水曜15時の窓口へ」。
• 「任せっぱなし」にしない設計が、主体性と安心感を同時に育てる。 - 学びを「循環」させる仕組みを持つ
• 週1回の3分ハイライト「今週の学び」を全員リレーで共有(事実→気づき→次の一手)。
• 良い実践は“ミニ手順書”として1ページに昇華、共有ドライブにタグ付け保存。
• 新人の質問はFAQに追記。問いが資産化されると、チームの学習速度が上がる。 - 認知される努力を増やす
• 行動を見える化する小さな指標を作る(声かけ件数、ダブルチェック率、申し送りの質など)。
• 具体名で称賛する。「夜勤の◯◯さんの観察記録、翌朝の対応が速くなった。ありがとう」。
• 評価は“今の強み”と“次の一歩”の二枚組で返す。自己効力感が次の成長を呼ぶ。
すぐに始められる3つの一手
• 明日から:朝礼で一行の「今日の目的」を宣言し、同文をボードに掲示。
• 今週から:ミニ実験スロット(1週間トライ枠)をひとつ設定し、結果を3分で振り返る。
• 今月から:学びのリレーとミニ手順書1ページ化を開始、タグ「安全/効率/関係性」で整理。
まとめ
リーダーシップは、個人のカリスマではなく、場の設計と意味の提示、そして小さな成功の増幅です。目的が一行で通り、挑戦の安全地帯があり、学びが循環し、努力が見える――そのとき、チームは静かに、しかし確かに強くなります。
あなたが整える“場”が、スタッフの誇りを育て、利用者さんの安心につながります。今日の一行から始まる設計が、明日の成長曲線を変えていきます。