143. 現場の情報共有をスムーズにする工夫


2025.08.24 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、同じ出来事でも「誰が・いつ・どのチャネルで」伝えるかによって、意味合いも優先度も変わってしまいます。忙しさの中で情報が分散し、重要な連絡が見落とされると、ケアの質や安全に直結するリスクが生まれます。情報共有の目的は、単に「知らせること」ではなく、「同じ理解で、同じ方向に動けること」。ミドルマネジャーには、その“通り道”を設計する役割があります。
ここでは、現場の情報共有をなめらかにするための実践的な工夫を提案します。

  1. ひとつの「拠り所(Single Source of Truth)」を決める
    • 情報の置き場所を統一し、「最新はここ」をチームで合意する。
    • 例:日次は電子申し送りボード、週次は共有ドライブの「週報」、月次はカンファレンス議事録。更新者と更新日時を明記し、版管理を徹底。
    • ポイントは「探させない」。リンクを固定化し、どこからでも1クリックで到達できる導線を作る。
  2. 伝え方は「結論→事実→依頼」の型でそろえる
    • 例:結論「Aさんの食事形態を本日から刻みに変更」→事実「嚥下評価とむせの頻度増加」→依頼「夜勤帯も配膳前確認・家族へ明日説明」。
    • フォーマットをテンプレ化(タイトル、対象、期限、責任者、影響範囲)。書式が揃うと読み手の負担が減り、誤解が減る。
  3. チャネルと緊急度の「交通ルール」を決める
    • 緊急(安全・医療判断)は電話/口頭+ボード即時反映、重要(運用変更)はチャット固定メッセ+日報、参考(知見共有)は週次ナレッジへ、など。
    • 就業外通知の基準、既読の取り方(リアクション必須/口頭確認)を明確化。連絡ミスは仕組みの不備と捉え、個人責めにしない。
  4. 「見える化」とチェックリストで落とし穴を塞ぐ
    • 早番・日勤・遅番それぞれの引継ぎチェックリストをA4一枚で可視化。転倒・配薬・食事変更・感染症・家族連絡などの定型項目を網羅。
    • 重要情報は色分けとアイコンで視認性を上げる(赤=安全、青=手順、緑=気づき)。
    • 週1回、3分間の「ハイライト共有」(今週の3大変更)を実施。
  5. 暗黙知を「ナレッジ」に変換する
    • 現場のコツを30秒で書ける「ミニTips」フォームを用意(タイトル/状況/手順/注意点)。よく読まれるものは手順書へ昇格。
    • 失敗から学ぶ文化を守るため、責めない振り返り(事実→要因→次の一手)を定例化。学びは人ではなく仕組みに刻む。
  6. 情報の「鮮度・期限・責任者」をセットで運ぶ
    • すべての共有に「適用開始日」「見直し期限」「責任者」を付与。期限切れの運用を自動的に棚卸す“賞味期限”の概念を導入。
    • 小さな運用変更も「リリースノート」を月次で発行し、検索可能にする。

すぐに始められる3つの一手
• 明日から:朝礼で「本日の一番大切な1件」を30秒で宣言し、ボードに同じ文面で掲示。
• 今週から:申し送りフォーマットを「結論→事実→依頼」に統一し、テンプレを配布。
• 今月から:ナレッジのミニTips募集と、月次リリースノートの発行を開始。

まとめ
情報共有の品質は、発信者の努力だけではなく、経路の設計・型の統一・見える化・学びの蓄積という「場の力」で決まります。誰が入っても同じように迷わず動ける“道筋”を整えること。それが安全と効率、そしてチームの信頼を同時に高めます。


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