27.職員との感情的衝突への対処法
2025.08.22 |投稿者:神内秀之介
〜主任ケアマネジャーが築く「対立から信頼へ」の道〜
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)として、チームを率いる中で避けて通れないのが「職員間の感情的な衝突」への対応です。感情的な対立は、時に業務や支援の質に影響を与えることもありますが、その反面、適切に対処すればチームの結束力を強め、職場の雰囲気をさらに良くするきっかけとなることもあります。
今回は、職員との感情的衝突に直面した際、主任ケアマネジャーとしてどのように対処し、「信頼に基づく職場づくり」を進めていけば良いのか、ソーシャルワークの理念を基に考えてみましょう。
1️⃣ 感情的衝突の背景を理解する
感情的な衝突は、それが起こる「背景」や「理由」を見極めることから解決が始まります。多くの場合、感情的な対立は表面的な言動よりも、深いところにある原因に根ざしています。
• 感情的衝突の背景にあるもの
o 価値観の違い:それぞれの職員が持つ価値観や優先順位に違いがある場合。
o 過剰なストレス:仕事量の過多やプレッシャーが原因となっている場合。
o コミュニケーション不足:誤解や情報不足が原因で対立が生じた場合。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「個別化(Individualization)」を基盤とし、一人ひとりが置かれている状況や背景を丁寧に理解しましょう。
2️⃣ 感情を受け止める「聴く態度」を示す
感情的な衝突への対応では、まず当事者が抱えている「感情」に寄り添うことが大切です。相手の言葉や態度に焦点を当てるのではなく、その背後にある感情をしっかり受け止める姿勢が信頼を生みます。
• 傾聴のポイント
o 感情を否定しない:「そんなことで怒るのはおかしい」などと否定せず、受け止める。
o 相手の気持ちを言語化する:「困っていたのですね」「不安に感じていたのですね」と感情を代弁する。
o 話を遮らない:相手が気持ちを十分に伝えきるまで、途中で割り込まない。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「共感(Empathy)」を軸に、相手の感情に寄り添う姿勢を示すことで、状況を落ち着かせるきっかけを提供しましょう。
3️⃣ 中立的な立場で状況を整理する
感情的な問題を冷静に解決するためには、主任ケアマネジャー自身が中立的な立場を保ちつつ、対立の状況を客観的に整理することが不可欠です。誰かの肩を持つような姿勢では、かえって対立を深めてしまいます。
• 状況整理の方法
o 事実と感情を分ける:何が起きたのか(事実)と、その時相手がどう感じたのか(感情)を区別して整理する。
o 全員の意見を聞く:当事者だけでなく、周りの人の意見も参考に状況を把握する。
o 冷静な言葉を使う:「〇〇さんの主張はこういうもので、△△さんの意見はこうです」と、感情に左右されず構造を見える化する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「中立性(Neutrality)」を意識し、公平に双方の意見をまとめる姿勢を持ちましょう。
4️⃣ 解決に向けた「建設的な対話」を進める
感情的な衝突を乗り越えるためには、一方的な対応ではなく、当事者間で「建設的な対話」を促進する場を設けることが必要です。対立を「問題解決のプロセス」に転換しましょう。
• 対話を進めるステップ
o 共通のゴールを見つける:たとえば「利用者により良い支援を提供する」といった共通の目的を確認する。
o 歩み寄りを提案する:お互いの立場や意見を尊重しながら、妥協点や解決策を探る。
o 次の具体的な行動を決める:どのような行動や改善策を実践するか明確にする。
• 会話の例
o 「〇〇さんの視点で見るとこう感じるんですね。一方で△△さんはこう捉えている。このギャップをどう埋めると良いでしょう?」
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「調停(Mediation)」の考え方を活かし、対話を導く橋渡し役として機能しましょう。
5️⃣ 対立後のフォローアップを大切にする
衝突を解決したとしても、それで終わりではありません。解決後のフォローアップを通じて、関係性を修復し、以降同じような対立が起きないようにすることが重要です。
• フォローアップのポイント
o 進捗を確認する:決まった解決策が適切に実行されているかを確認する。
o 定期的に感情面を振り返る:気まずさや溝が残っていないか、両者に話を聞く。
o 新たなルールを設定する:再発防止のために、業務上のルールやプロセスを改善する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「プロセス志向(Process-Oriented)」の理念を取り入れ、解決からの成長を促す長期的な視点を持ちましょう。
🌟 最後に:感情の衝突を「信頼築き」のチャンスに
感情的な衝突は、一見するとストレスや不安を招くものに思えます。しかし、丁寧な対応を通じて対立を建設的なプロセスに変えることができれば、それは職場全体の成長と信頼関係の強化につながります。
主任ケアマネジャーとして、衝突を避けるのではなく、ソーシャルワークの理念を基盤に「関係修復と改善」に立ち向かいましょう。感情を受け止め、対立を乗り越える過程で、チーム全員が安心して働ける職場環境を築くきっかけをつくることができるはずです。一歩ずつ、信頼の輪を広げていきましょう!