第21章『未来のケアを育てる場所・・・実習は、共に育つ時間』


2025.08.21 |投稿者:神内秀之介

「実習って、何を教えればいいんですか?」
若手職員の理佳が、初めて実習生の担当になった日、沙耶にそう尋ねた。
沙耶は少し考えてから答えた。
「“教える”より、“一緒に考える”ことが大事かもしれない。
実習って、未来のケアを育てる時間だから」

法人では、福祉系大学・専門学校からの実習生受け入れを毎年行っていた。
受け入れマニュアル、指導担当者の配置、実習評価表の整備。
制度としての体制は整っていた。
でも沙耶は思った。「制度があるだけじゃ、実習は育たない。
“この職場で学べてよかった”と思える空気が必要だ」

彼女は「実習生育成体制の再設計」に取り組んだ。
まず、実習生受け入れ前に「職員向けオリエンテーション」を実施。
実習の目的、指導のポイント、実習生の背景を共有し、
“育てる側の準備”を整える場を設けた。

次に、「実習生の学びの記録ノート」を導入。
毎日の気づき、疑問、感動を記録し、
担当職員とのふりかえり時間で共有する。
それは、“実習を通じて育つ物語”を可視化する仕組みだった。

ある実習生がこう書いていた。
「利用者さんが“ありがとう”と言ってくれた。
でも、自分の声かけが本当に良かったのか分からない」
その記録に対し、理佳はこう返した。
「“分からない”って思えることが、ケアの入り口だよ。
その迷いがある限り、あなたはきっといい支援者になる」

沙耶は、実習生の最終報告会を“語りの場”として再構築した。
パワーポイントではなく、“自分がこの職場で何を感じたか”を語る時間。
職員も参加し、「この実習生の言葉に、自分も初心を思い出した」と語る場面もあった。

評価項目【20 Ⅱ-2-(4)-①――「実習生等の福祉サービスに関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。」】
それは、「“制度的な受け入れ”だけでなく、“育てる文化”が根づいているかどうか」が問われる。

沙耶は記録の余白にこう書いた。
「今日、実習生が“この仕事、やってみたいと思いました”と言った。
その一言が、職場の育成力だと思う」

実習とは、未来のケアを育てる時間。
そしてその時間は、職員自身の“初心”を育て直す場でもある。

教えることは、育つこと。
そして育つことは、福祉の未来を耕すことなのだ。

#福祉サービス第三者評価を広げたい


 |  一覧に戻る | 

お問い合わせはこちら

介護経営のコンサルタント顧問契約。
経営者・理事長の経営参謀として、業務効率化から
利用者・入居者獲得まで、
様々な経営のアドバイスを行います。

営業時間:平日火曜日・水曜日・木曜日10時から16時


メールでのお問い合わせ