25.クレーム対応の戦略的アプローチ
2025.08.20 |投稿者:神内秀之介
〜主任ケアマネジャーが導く「解決」から「信頼築き」へ〜
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、利用者や家族、時には関係機関からのクレームや苦情に対応する場面に直面します。クレーム対応はネガティブな印象を持たれがちですが、実際には「信頼関係を築き直す貴重なチャンス」とも言えます。適切な対応をすることで、不満を解消するだけでなく、安心感や信頼を新たに生むことが可能です。今回は、ソーシャルワークの視点を基に、戦略的なクレーム対応の進め方をご紹介します。
1️⃣ クレームを「学びの機会」と位置づける
クレームは、単なる「問題」ではなく、業務の改善や対応力を磨くための貴重なフィードバックでもあります。利用者や関係者が何を不満に感じ、どのような期待を抱いているのかを可視化することで、サービスの向上が可能になります。
• クレームがもたらす価値
o 問題の本質を理解する機会:利用者や家族が本当に困っていることや、抱いている希望を知るきっかけになる。
o 改善につながるヒントを得られる:指摘された問題点を見直し、現場全体の質を向上させる材料となる。
o 信頼を再構築するチャンス:「真摯に対応してくれた」と思ってもらうことで、信頼を深める機会になる。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「受容と共感(Acceptance and Empathy)」の理念を活かし、苦情を尊重し、前向きに受け止める姿勢を持ちましょう。
2️⃣ 初動がカギ!迅速かつ冷静な対応を心がける
クレーム対応で最も重要なのは「初動」です。クレームを受けた際の最初の対応が、その後の解決プロセス全体に大きな影響を与えます。
• 初動のポイント
o すぐに対応する:クレームは放置せず、できるだけ早い段階で受け止める。遅れると不信感が増加する可能性がある。
o 冷静な態度を保つ:感情的にならず、丁寧かつ落ち着いた態度で対応する。
o 相手の話に耳を傾ける:話を遮らず、最後までじっくりと聞く。メモを取ることで「受け止めている」印象を与える。
o 感謝を伝える:「教えていただきありがとうございます。」という一言が相手に安心感を与える。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「共感(Empathy)」を持ち、相手の立場に立って物事を考えることで、相手の気持ちを受け止める姿勢を示しましょう。
3️⃣ 問題の本質を探るコミュニケーション
クレームの解消には、一見表面的に見える問題だけでなく、その裏にある「本当の原因」を探り出す必要があります。相手の立場や背景を考えながら、丁寧にコミュニケーションを取りましょう。
• 効果的な聞き方のポイント
o オープンクエスチョンを活用する:広い範囲で意見を引き出す。「何が気になりましたか?」「どのあたりが困りましたか?」など。
o 感情に寄り添う:「そのように感じたのですね。その点について一緒に考えさせてください。」と気持ちを受け止める姿勢を示す。
o 背景情報を確認する:利用者や家族の状況、過去の経緯などを把握し、より適切な対応を探る。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「個別化(Individualization)」を重視し、一つ一つの事例をその人らしい背景の中で理解しましょう。
4️⃣ 具体的な解決策を提案し、合意を得る
問題の本質が明らかになった後は、解決に向けた具体的なプロセスを示します。解決策を提案する際には、相手の意見を十分に尊重し、納得してもらえる形にまとめることが重要です。
• 解決策の提示方法
o 選択肢を提示:可能な解決策を複数示し、相手に選んでもらうことで納得感を高める。
o 現実的な提案:実現可能な範囲で解決策を検討し、無理のない方法を選ぶ。
o 次のステップを明確化:解決までの流れや、対応の進行状況を説明し、相手の不安を軽減する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「権利擁護(Advocacy)」の視点を持ち、利用者や家族の利益を守る対応策を提案しましょう。
5️⃣ 対応後のフォローアップで信頼を強化する
解決策を実行した後は、それが適切に機能しているか確認し、相手に安心感を与えるフォローアップが必要です。最後まで責任を持つ姿勢が、信頼関係を深める大きな鍵となります。
• フォローアップの進め方
o 解決の報告:問題がどのように解決されたか具体的に説明する。
o 継続的な確認:解決後も定期的に利用者や家族の状況を確認し、新たな課題がないかをチェックする。
o 感謝の言葉を伝える:「貴重なご意見をいただき、改善につなげることができました。本当にありがとうございます。」とお礼を伝える。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「プロセス志向(Process-Oriented)」の精神で、対応の結果やその後の状況を継続的に見守りましょう。
🌟 最後に:クレーム対応から築く新たな信頼
主任ケアマネジャーとしてのクレーム対応は、単なる問題解決ではありません。それは、利用者や家族、そしてチームメンバーとの関係を再構築し、さらなる信頼を育むための大切なプロセスです。
ソーシャルワークの理念を基盤に、相手の立場に立ち、本当に必要とされている解決策をともに考えましょう。丁寧で誠実な対応が、利用者や家族に安心感を与え、主任ケアマネジャーとしてのあなたへの信頼をさらに高めてくれるでしょう。クレーム対応は課題であると同時に、あなたと相手を結びつける機会でもあるのです。