第16章『人を活かす設計図——総合的な人事管理の再定義』


2025.08.16 |投稿者:神内秀之介

「この人、もっと輝ける場所がある気がする」
沙耶は、夜勤明けの職員・高橋の記録を読みながらそう感じた。
ケアの質は高い。利用者との関係も良好。
でも、彼の表情には“何かが足りない”ように見えた。

法人では、総合的な人事管理の仕組みが整備されていた。
採用から配置、評価、昇進、研修、退職後のフォローまで。
人事管理台帳には、職員一人ひとりの履歴が記録されている。
でも沙耶は思った。「記録はある。でも、物語はあるだろうか」

彼女は人事管理を“人を活かす設計図”として再定義した。
制度の枠組みを超えて、職員の“希望”と“可能性”を見つける仕組みへ。

まず始めたのは、「人事カルテ」の刷新だった。
従来の履歴・資格・評価に加え、以下の項目を追加した:

  • 「この職員が得意とすること」
  • 「この職員がやりたいこと」
  • 「この職員が苦手だが、挑戦したいこと」
  • 「この職員が大切にしている価値観」

これらは、年1回の人事面談で記録され、
配置や研修、昇進の判断材料として活用された。

次に導入したのは「人事会議の再構築」。
従来の“数字と評価”中心の会議から、
“職員の物語”を共有する場へと変えた。

たとえば、ある職員が「認知症ケアに関心がある」と語ったら、
その声をもとに専門研修を提案し、配置転換を検討する。
評価は“過去の実績”だけでなく、“未来への意欲”も加味されるようになった。

高橋には「夜勤の安定感」だけでなく、
「利用者の生活支援に関心がある」という記録が残っていた。
沙耶は彼を日中の生活支援ユニットに異動させた。
数か月後、彼は「この仕事、やっと自分のものになった気がする」と語った。

評価項目【15 Ⅱ-2-(1)-②――「総合的な人事管理が行われている」。】
それは、「“制度としての管理”と“人としての理解”が融合しているか」が問われる。

沙耶は記録の余白にこう書いた。
「人事管理とは、職員の“可能性の地図”を描くこと。
その地図がある限り、職員は迷わず進める」

人を管理するのではなく、
人の物語を読み解き、活かすこと。
それが、総合的な人事管理の本質なのだと思う。

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