136.部下を叱る時の注意点
2025.08.17 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、一人ひとりのミスが利用者さんの安全やケアの質に影響を与えることがあります。そのため、ミスや改善点をただ見過ごすわけにはいきません。しかし、部下を叱る必要がある場面において、感情的になったり、単なる指摘で終わったりすると、かえって相手のやる気や関係性を損ねる危険性が高まります。
叱るという行為は、ただ非を罰するためではなく、相手の成長と信頼を目的とした行動であるべきです。では、部下を叱る際にどのような注意点を心掛ければ、相手にとって前向きな関係性や学びが生まれるのでしょうか。ここでは、適切な叱り方のポイントを考えてみましょう。
- 「感情」ではなく「事実」にフォーカスする
叱る時に注意したいのは、感情的にならないことです。感情に任せた叱責は、相手に恐怖を与え、心を閉ざす原因になりかねません。重要なのは、「その時に起きた事実と具体的な出来事」にフォーカスし、冷静に伝えることです。
たとえば、「どうしてミスをしたんだ!」と感情的に詰め寄るのではなく、「昨日の記録に入力漏れがあったんだけれど、どういった経緯だったのか教えてもらえる?」と具体的な事実に基づいて話を始めることで、相手も納得しやすくなり、解決に向けた建設的な対話が始まります。 - 「叱る場所」を選ぶ
職場全体の前で叱責するのは、相手に必要以上の羞恥心や立場へのダメージを与えてしまう恐れがあります。部下を叱る際には、プライバシーが確保された静かな環境で、一対一で話すように心掛けましょう。
たとえば、ミスに気付いた時も、周囲がいる場で軽々しく「これはどうなってるの?」と注意するのではなく、「少し時間をもらえるかな」と時間を取り、別室や落ち着いた場所で対話をする。こうすることで相手は安心して話を聞くことができ、コミュニケーションがスムーズになります。 - 相手の「背景」にも目を向ける
叱る際には、目の前の行為だけを見るのではなく、その行為の背景や理由を探ることが大切です。どんな理由があったとしてもミスは変わりませんが、「どうしてそうなったのか」について理解を示すことで、信頼と改善への糸口が生まれます。
たとえば、「この作業を急ぐ必要があったのは何か理由があったのかな?」と問いかけることで、「実は別の業務との両立が難しくて……」など、時間配分や作業フローに潜む課題が見えてきます。背景を理解することで、個人だけでなく職場全体の改善にもつながる対話が可能です。 - 叱りながらも「未来」を見据えた話をする
叱るだけでは、相手は一時的に萎縮するだけで、根本的な成長にはつながりません。そこで、「改善の方針」や「次に同じミスを繰り返さないための方法」を一緒に考える姿勢が重要です。
たとえば、「次回は小さなミスも気付けるように、ダブルチェックの仕組みを取り入れてみるのはどうかな?」「この業務は忙しい時には負担が大きいから、他の人と共同で進める方法を考えてみない?」など、建設的な提案を交えることで、相手が未来に向けた意識を持つことができます。 - 「信頼」と「可能性」を伝える
叱る行為は、相手の成長を願って行うものです。そのため、「あなたを信じている」という前提や、「ミスがあってもあなたにはこれだけの可能性がある」というポジティブな視点を相手に伝えることで、安心感と自己肯定感を育むことができます。
たとえば、「今回のミスは確かに大きいかもしれないけど、普段のあなたの素晴らしい働きが損なわれるわけではないよ」「あなたの価値は、この1つのミスで変わるものではないんだ」という言葉を添えることで、相手は「自分はここで必要な存在」と感じるようになります。
まとめ
部下を叱る時の注意点は、「感情ではなく事実にフォーカスする」「適切な場所で話す」「行動の背景を理解する」「未来を共に考える」「信頼と可能性を伝える」という5つのポイントに集約されます。これらを実践することで、叱る行為が単なる指摘ではなく、相手の成長やチーム全体の信頼へとつながるものになります。