132.部下の意見を取り入れた現場改善
2025.08.13 |投稿者:神内秀之介
部下の意見を取り入れた現場改善――「気づきの連鎖」がつくるチームの未来
介護の現場をより良くするためには、利用者さんとの直接的な接点を持つ部下の存在が欠かせません。彼らは毎日現場での実際の課題や改善のヒントに触れており、その「現場の声」こそが、職場全体を進化させる貴重な財産と言えます。しかし、忙しい日々の中でその声が埋もれてしまい、改善のチャンスを見逃していることも少なくありません。部下の意見を取り入れた現場改善を進めるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
ここでは、「意見を引き出し、それを支えに現場を進化させる」という考え方を通じて、チーム全体で未来を作り上げる方法を考えてみましょう。
- 意見を「安心して言える場」をつくる
部下が意見を出すためには、「何を言っても大丈夫」という心理的安全性が何よりも重要です。この安心感がなければ、どれほど良いアイデアを持っていたとしても、部下はそれを口にすることをためらってしまうでしょう。
たとえば、ミーティングの際に「どんな小さなことでも思ったことを聞かせてください」と前置きをし、「なるほど、それはいい視点ですね」とまず意見そのものを肯定的に受け止める姿勢を示します。意見が否定される心配がなく、自分の発言が認められる場だと感じられれば、部下は自然と積極的に発言するようになります。 - 「現場の実感」を引き出す質問をする
意見を引き出そうとする際に、ただ「何か意見はありますか?」と聞くだけでは、具体的な答えが返ってこないことがあります。そこで役立つのが、「現場の実感」からスタートする質問です。
たとえば、「最近の利用者さんのケアで気になったところはありますか?」「こうした業務フローを変えたら働きやすくなる部分はありますか?」といった形で、明確な状況を提示しながら意見を促すことで、部下はより具体的なアイデアや課題について話しやすくなるでしょう。 - 意見に「価値」を与え、行動に移す
どんなに良い意見が出てきても、それをただ「聞いて終わり」にしてしまっては、現場の改善にはつながりません。そして部下も「どうせ意見を言っても無駄だ」と感じてしまいます。意見を受け取ったら、必ず何かしらのアクションを行い、その価値を実感してもらうことが重要です。
たとえば、部下が提案した改善策を小規模から試験導入し、その結果を全員で共有する。実際に意見を取り入れたことをきちんと伝えるだけで、部下は「自分たちの声が職場を変えている」と感じ、自発的に改善に参加するようになります。小さな成功体験の積み重ねが、職場全体の成長を支えます。 - チームで「気づきの連鎖」を生む
一人ひとりの意見を尊重し、それを見える形で改善に活かすことで、全体としての「気づきの連鎖」が生まれます。誰かの意見が反映されることで他のスタッフも「自分でも提案してみよう」と感じ、職場全体が積極的な改善の雰囲気に包まれるようになります。
たとえば、ミーティングを「提案を歓迎する場」として位置づけ、次回までに考えたことを簡単に共有する習慣を作ります。「自分も意見を持ち寄る」という意識が強まることで、静かだった現場に新しい活気が生まれるでしょう。 - 結果を「全員で振り返る」場を設ける
改善策を実行したら、その結果を振り返り、スタッフ全員で評価し合う場を設けます。この振り返りこそが、次の改善を生む重要なステップです。
たとえば、「あの意見を取り入れてこれだけ効率が上がったね」「実際にやってみて、こうするとさらに良くなりそう」といったフィードバックをチーム全体で共有する。一人ひとりの行動や考えを職場全体で振り返ることで、改善のプロセスに一体感が生まれ、さらに良いアイデアを提案し合える環境が整います。
まとめ
部下の意見を取り入れた現場改善を実現するためには、「意見を安心して言える場をつくる」「実感に基づく質問を投げかける」「意見を行動に移し、価値を示す」「チーム内で気づきの連鎖を育てる」「結果を全員で振り返る」という5つのステップが重要です。それは、一人ひとりの意見を大切にしながら、現場全体を進化させるプロセスでもあります。