131.新しい介護技術の導入を進める方法


2025.08.12 |投稿者:神内秀之介

介護現場には、利用者さんの生活の質を向上させ、スタッフの業務負担を軽減するために、さまざまな新しい技術やツールが登場しています。介護ロボット、デジタル記録システム、センサー技術などの進化は目覚ましく、それらを導入することで現場全体の効率化や質の向上が期待できます。

しかし、一方で新しい技術に対する「導入コストが高そう」「本当に現場で使いこなせるのか」といった抵抗感や、「使い慣れた方法の方が安心だ」と感じる心理的なハードルも少なくありません。この「変化の壁」を乗り越え、職場全体で新しい介護技術をスムーズに受け入れるためには、どのような工夫が求められるでしょうか。

ここでは、変化を恐れず、楽しむ心を持ちながら、新しい技術の導入を進めるための方法を考えてみましょう。

  1. 目的を明確にし、共通認識をつくる
    新しい技術を導入する際に重要なのは、それが「何のために導入されるのか」をスタッフ全員が理解することです。「ただ新しいから」という理由では、現場のモチベーションは生まれません。全員が納得できる目的を共有することが成功への第一歩です。

たとえば、「夜勤中の利用者さんの転倒リスクを減らすためにセンサーを導入する」「日々の記録業務を効率化し、利用者さんとの時間を増やすためにデジタルシステムを活用する」といった具体的な目的を明示し、その効果を丁寧に説明しましょう。目的が共通認識となることで、スタッフは前向きに取り組む姿勢を持てるようになります。

  1. 小さな一歩から始める
    どんなに優れた技術でも、いきなり短期間で職場全体に浸透させようとすると、混乱や抵抗を招いてしまうことがあります。大きな変化を一度に求めるのではなく、小さな実験的な導入から始めることが、成功の鍵です。

たとえば、1~2人のスタッフに試験的に新しい技術を使ってもらい、その使い勝手や課題を共有してもらいます。そして、「実はこんな風に業務が楽になった」といった前向きな成果を他のスタッフにも伝え、少しずつ導入の範囲を広げていく。こうした「小さく始める」方法が、現場全体の不安を和らげます。

  1. 技術に「寄り添う時間」を用意する
    新しい技術は、スタッフがそれを「自分の仕事の一部」として慣れ、安心して使えるようになるまでに時間を要します。この過程で感じる「使いづらい」「慣れない」といった声に耳を傾け、丁寧にサポートすることが不可欠です。

たとえば、導入初期には適切なトレーニングを行い、質問や不満があればすぐ相談できる体制を整えます。また、「操作に慣れるまで無理をしなくて良いですよ」と一言添えることで、心理的負担を減らし、少しずつ使いこなせる環境を整えることが重要です。新しい技術に「寄り添う時間」が、恐れを安心に変えます。

  1. 経験を「共有」する場を設ける
    新しい技術の導入は、スタッフ同士がその効果や課題を話し合い、知恵を共有する中で深化していきます。大切なのは、現場の経験を個別のものに留めず、チーム全体で共有する仕組みを持つことです。

たとえば、定例のミーティングやワークショップで、「この技術を使ってみたところ、こんな結果が出た」「ここを改善すればさらに良くなると思う」という具体的な体験談を共有します。ポジティブな結果が共有されれば、「やってみよう」という空気が広がり、チーム全体が一丸となって新しい技術を受け入れる準備が整います。

  1. 成功を一緒に喜び、評価を伝える
    新しい技術を適切に導入できたとき、その成果を全員で喜び、達成感を共有することは、次のチャレンジへの原動力になります。「成功体験をチームで共有する」文化を育むことで、職場全体の雰囲気が明るくなります。

たとえば、「新しいシステムのおかげで時間が短縮できたね」「このツールを使ったことで利用者さんが笑顔になったね」と前向きな成果を具体的に示し、チーム全体でその成功を祝います。小さな成功を喜ぶことが、新たな技術に挑むポジティブスパイラルを生み出します。

まとめ
新しい介護技術の導入を進めるには、「目的を共有し納得を得る」「小さな一歩から始める」「寄り添いながら慣れる時間を確保する」「経験を共有し合う場を作る」「成果を共に喜ぶ」という5つのポイントが重要です。それは、ただ効率化を求めるだけではなく、スタッフ全体が「変化を楽しむ心」を持てるようにするプロセスでもあります。


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