130.部下の悩みに耳を傾ける方法
2025.08.11 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、日々の業務の中で部下が不安や悩みを抱えることは珍しくありません。人間関係、利用者さんへの対応、業務の負担など、悩みの種はさまざま。しかし、その声をしっかりと受け止められる環境が整っていなければ、部下は孤立感を抱き、やがてモチベーションを失ってしまいます。ミドルマネジャーであるあなたに求められるのは、一人ひとりの声に「深く耳を傾ける力」です。
ただ話を聞くのではなく、相手の言葉に込められた本当の思いや背景を汲み取る「深い聴き方」を実践することで、安心感や信頼関係が生まれ、健やかなチーム環境が育まれます。ここでは、その「耳を傾ける方法」について考えてみましょう。
- 話を遮らず、受け止める
悩みを抱える相手が安心して心を開ける第一歩は、「ただじっくりと聞くこと」にあります。相手の話を途中で遮ったり、自分の意見を急いで伝えようとするのではなく、すべてを受け止める姿勢を持つことが重要です。
たとえば、「それは大変だったね」と相槌を打ちながら、相手が安心して話し続けられる雰囲気を作りましょう。ただ静かに耳を傾けることで、「この人なら自分の話を分かってくれる」という信頼感が生まれます。冷静な態度で受け止めるだけでも、相手の心は軽くなります。
- 視線を合わせ、態度で示す
悩みを打ち明ける部下が「本当に自分の話に集中してもらえている」と感じるためには、ただ耳で聴くだけではなく、態度でその意思を伝えることが大切です。
たとえば、相手の目をしっかり見て話を聞き、適切なタイミングでうなずき、体を少し前のめりにして話を聞く姿勢を示す。こうした細やかなサインが、部下にとって「自分の話を大切にしてもらっている」と感じられ、心を開くきっかけとなります。態度での表現が、言葉以上の安心感を与えます。
- 「共感」を大切にする
悩みを抱える人にとって、「自分の感情を誰かが理解してくれる」という共感の瞬間は、大きな安心感をもたらします。しかし共感とは、ただ「わかります」と言うだけではなく、相手の感情を具体的に言葉にして返すところまで行動を伴うものです。
たとえば、「その状況だと、戸惑ってしまう気持ちも分かるよ」「一生懸命やっているのが伝わるよ」といった形で、相手の気持ちを代弁することで、部下は「自分の思いが伝わった」と深く感じられます。共感の言葉が、部下の心を癒す力を持ちます。
- 問題の「背景」に目を向ける
悩みの中には、本人も気づいていない原因が隠れていることがあります。ただその場の問題を解決しようとするのではなく、「なぜその悩みが生まれたのか」に目を向けることが、長期的な解決策を見つける鍵となります。
たとえば、業務の負担が原因で悩んでいる部下には、その負担が発生している業務フロー全体を見直す。また、人間関係の悩みであれば、部下の感じている思いをくみ取りつつ、他の関係者との視点を合わせて調整する。問題の背景を掘り下げる質問を投げかけることで、新たな解決の糸口が見つかることもあります。
- 決して「解決」を急がない
部下の悩みを聞く際、「どうすれば解決できるか」とすぐに答えを提示しようとするのは逆効果になりかねません。相手が本当に求めているのは、すぐに解決してもらうことではなく、「一緒に考えてくれる仲間がいる」という安心感です。
たとえば、「すぐには答えが見つからないかもしれないけれど、一緒に考えよう」といった言葉をかけるだけで、部下の気持ちは大きく変わります。焦らずに、「一緒に前に進む」という姿勢を示すことが重要です。
まとめ
部下の悩みに耳を傾ける方法は、「話を遮らず受け止める」「視線や態度で集中していることを伝える」「共感を持って話を返す」「背景を掘り下げる」「解決を急がない」という5つのポイントで構成されます。それは、部下を孤立させず、「この職場には本音を話せる居場所がある」と感じてもらうための基本的な姿勢でもあります。