第9章『評価という羅針盤・・・改善は、誰かの気づきから始まる』


2025.08.09 |投稿者:神内秀之介

「評価って、誰のためにやるんでしょうか?」
新人研修で沙耶がそう質問すると、講師の事務局長は笑みを浮かべた。
「“誰かの頑張りを測るため”じゃなくて、“何をもっとよくできるか探すため”だよ」

その言葉に、沙耶の頭の中で“評価=減点方式”というイメージがゆらいだ。

法人では年に一度、サービスの質向上に関する評価会議が開かれていた。
利用者アンケート、職員ヒアリング、事故発生状況、ヒヤリ報告、加算取得状況など。
一つ一つのデータが、サービスの“今の姿”を照らしていた。

その年、「食事時の誤嚥リスクが高まっている」という評価結果が示された。
過去半年で誤嚥関連のヒヤリ報告が増加。
それに対する対応策が不十分であることが指摘された。

会議後、法人では「食事支援強化プロジェクト」が立ち上げられた。
・現場職員への口腔ケア研修
・栄養士との連携による嚥下対応食の見直し
・食事介助時の記録項目追加
・利用者ごとの“食事の注意点一覧”作成

沙耶は記録業務の担当として、職員から聞き取った“食事中の違和感”を整理し、一覧表にまとめた。
ある職員の言葉が心に残った。
「△△さん、最近“口に運ぶスピード”が変わってきてる気がする」

その“気づき”は評価項目になり、改善策として「食事スピード観察記録欄」が新設された。

数か月後、再評価が実施された。
誤嚥リスクの報告件数が減少。
職員の“食事支援意識”が高まり、声かけや姿勢誘導にも変化が生まれていた。

その成果は法人内に共有され、他の課題にも“気づき→評価→改善→再評価”というサイクルが活かされるようになった。

評価項目【9 Ⅰ-4-(1)-② 評価結果にもとづき組織として取組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。】
それは、「“見つかった課題”を放置せず、職員の気づきを起点にして、組織的に対応していく構造があるかどうか」で問われている。

沙耶はある報告書にこう書いた。
「評価は“見直し”じゃなく、“未来の地図”です。
課題が見つかることは、誰かが“違和感”に気づいたということ。
だから評価には、ケアの心が宿っていると思います」

ケアの現場の小さな声が、組織の改善を導く羅針盤になる・・・
そのサイクルこそが、“福祉の質”を育てていく土壌なのかもしれない。

#福祉サービス第三者評価を広げたい


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