15.成長につながる記録のチェックポイント
2025.08.10 |投稿者:神内秀之介
〜主任ケアマネジャーが指導で活かす「記録の力」〜
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)として、新人ケアマネジャーの指導をする上で、記録は非常に重要なツールです。記録には、利用者の生活の質を向上させるための情報が詰まっています。しかし、それだけではなく、新人ケアマネジャー自身にとっても「成長の軌跡」を確認する貴重な資料となります。記録を振り返ることで、成功体験や改善点を見つけ、次のステップへつなげることが可能です。今回は、ソーシャルワークの視点から「成長につながる記録のチェックポイント」を考えてみましょう。
1️⃣ 記録は単なる「業務」ではなく「学びの場」
記録は、単に利用者や支援内容を記述するためのものではありません。むしろ、記録を通じて新人ケアマネジャーが自己の考えや実践を整理し、振り返り、学びを深めるための「成長ツール」として活用できるのです。
• 記録を学びに変えるポイント
o 「なぜこの支援を選んだのか?」といった背景や意図を明記する。
o 支援の結果や利用者の反応を具体的に記録し、振り返る材料とする。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「プロセス志向(Process-Oriented)」を活用し、記録を単なる結果の記述ではなく、「考えるプロセス」の一部として位置づけましょう。
2️⃣ 記録を振り返る際のチェックポイント
新人ケアマネジャーの成長を促すためには、記録の内容を定期的にチェックし、具体的なフィードバックを行うことが重要です。以下のポイントを押さえて記録を確認しましょう。
✅ 利用者視点が反映されているか
• 利用者の状況やニーズが具体的に記されているか?
• 記録に「利用者の声」が適切に反映されているか?
例:
「利用者が『自宅での生活を続けたい』と希望しているが、現状では買い物や調理に課題があり、週に1回の訪問支援を提案」
✅ 課題と目標が明確か
• 利用者の課題が具体的に整理されているか?
• 支援目標が明確で、達成可能な形で設定されているか?
例:
「短期目標:2週間以内に訪問介護サービスを導入し、食事支援を開始する」
✅ 支援内容が適切かつ実行可能か
• 提案した支援内容が現実的で、利用者の生活に即しているか?
• 多職種との連携が考慮されているか?
例:
「訪問看護師と協力して、服薬管理について利用者・家族へ指導を行う計画を立案」
✅ 結果や次のアクションが記載されているか
• 支援の結果や利用者の反応が具体的に記載されているか?
• 次のアクションや改善点が明記されているか?
例:
「訪問介護の開始後、利用者は『一人で食事の用意をしなくて済むので助かる』と話していた。次回は食事以外の支援ニーズについて確認する予定」
3️⃣ 記録を新人ケアマネジャーの「成長記録」にする
新人ケアマネジャーにとって、日々の記録は自分の「成長の軌跡」となるものです。記録を振り返り、どう成長しているかを実感できるようにサポートしましょう。
• 成長を実感するポイント
o 初期の記録と現在の記録を比較し、進歩した点を確認する。
o 過去の記録から、新しい支援のアイデアを見つける。
• 具体例
o 初期の記録:「利用者のニーズが漠然としている」
o 現在の記録:「利用者の要望を具体的にヒアリングし、短期目標と長期目標を分けて記載」
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「エンパワメント(Empowerment)」の理念を活かし、新人が自分の成長を認識し、自信を持てるように働きかけましょう。
4️⃣ フィードバックを通じて学びを深める
記録のチェックを行った後は、フィードバックのプロセスを大切にしましょう。記録をもとに、新人ケアマネジャーと建設的な対話を行うことで、さらに深い学びを引き出せます。
• フィードバックのポイント
o 良い記録の部分を具体的に褒める:新人のモチベーションを高める。
o 改善点を一緒に考える:次回の記録で改善できるポイントを具体的に伝える。
o 次の目標を設定する:「次はここを意識して記録してみましょう」と次のステップを明示する。
5️⃣ 記録の質を高める環境を整える
新人ケアマネジャーが質の高い記録を残せるよう、職場全体でサポート体制を整えることも重要です。
• 環境づくりのポイント
o 記録のテンプレートを用意:わかりやすい記録フォーマットを提供する。
o 記録にかける時間を確保:業務負担が多い中でも、記録を書く時間を優先的に確保する。
o 定期的な研修を実施:記録のスキル向上を目的とした研修や勉強会を行う。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「環境調整(Environmental Modification)」を基盤に、記録作成の効率化と質の向上を支える体制づくりを目指しましょう。
🌟 最後に:記録は「支援」と「成長」の架け橋
新人ケアマネジャーにとって記録とは、単なる業務の一環ではなく、「学び」と「成長」を支える重要なツールです。主任ケアマネジャーとして、記録を通じて利用者支援の質を高めるだけでなく、新人の専門性を育てる役割を担いましょう。
記録の中には、その人自身の努力や学びの軌跡が詰まっています。その価値を一緒に見つけ、次の成長につなげることで、新人ケアマネジャーと共に地域ケアの未来を築いていきましょう!