13.ロールプレイを活用したOJT手法
2025.08.08 |投稿者:神内秀之介
〜新人ケアマネジャーの実践力を育む「体験型学習」〜
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)として、新人ケアマネジャーを育成する中で、実務の中で求められる対応力を身につけてもらうことは重要な目標です。そのために効果的な手法の一つが、「ロールプレイ」を活用したOJT(On-the-Job Training)です。ロールプレイは、現実に近い状況を想定しながら、実践的なスキルを安全に習得できる体験型の学習方法です。本コラムでは、ソーシャルワークの視点に基づき、ロールプレイの効果的な活用方法についてご紹介します。
1️⃣ ロールプレイの価値を理解する
ロールプレイは、理論と実践を結びつけるための「架け橋」となる学習手法です。特に新人ケアマネジャーにとっては、現場での具体的な場面を事前に体験することで、不安を軽減し、自信を持って行動できるようになるというメリットがあります。
• ロールプレイで得られる成果
o 実践的なスキルの習得:利用者や家族とのコミュニケーション、ケアプランの説明などを練習できる。
o 失敗から学ぶ:実際の現場ではできないような挑戦や試行錯誤が可能。
o 対応力の向上:予期せぬ状況への対処法やアイデアを学べる。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「行動と実践(Action and Practice)」の理念に基づき、実体験を通じた学びの価値を最大限に引き出しましょう。
2️⃣ ロールプレイの設計:具体的なシナリオを構築する
効果的なロールプレイを行うには、現実的で具体的なシナリオを準備することが大切です。新人が直面しやすい状況を想定し、課題や目標を明確に設定しましょう。
• シナリオ作成のポイント
o 現場に即した場面を設定:たとえば、「利用者の家族が介護方針について不安を抱えているときの対応」や「認知症の利用者がケアプランを拒否する場面」など。
o 明確な目標を設定:新人が練習を通じてどのスキルを身につけるべきかを事前に決める。
o 多様なケースを用意:簡単なものから複雑なものまで、段階的に取り組めるシナリオを準備する。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「状況の具体性(Contextualization)」の理念を取り入れ、現場で実際に起こりそうなリアルなシナリオにすることで、学びの効果を高めましょう。
3️⃣ ロールプレイの進め方:安全な場をつくる
ロールプレイを成功させるには、新人が安心して挑戦できる「心理的安全性」を確保することが重要です。失敗を恐れずに試行錯誤できる環境を整えましょう。
• 進め方のステップ
o 役割の設定:利用者役、家族役、ケアマネジャー役などを明確に分ける。
o 場面の説明:シナリオや背景を共有し、状況を理解してもらう。
o 実践:新人ケアマネジャーが主体となって対応を実演。
o 振り返り:ロールプレイ終了後に、良かった点や改善点を話し合う。
• 気をつけるポイント
o 批判をしない:新人が自信を失わないよう、失敗を学びの材料として前向きに捉える。
o ポジティブなフィードバックを優先:まず良い点を評価し、その後改善点を伝える。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「受容と共感(Acceptance and Empathy)」を基に、新人を尊重しながらフィードバックを行い、自信を育てましょう。
4️⃣ 振り返りプロセス:学びを定着させる
ロールプレイでの学びを定着させるためには、振り返りのプロセスが欠かせません。実際にやってみたことで得た気づきをしっかりと言語化し、次に活かせる形に整理しましょう。
• 振り返りの進め方
o 自分の感想を引き出す:新人自身に「何がうまくいったか」「どこが難しかったか」を自由に話してもらう。
o 具体的な改善策を共有:困難だった場面に対して、どのように対応すべきかを一緒に考える。
o 次の課題を設定:次回のロールプレイで練習するスキルや目標を明確にする。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「プロセス志向(Process-Oriented)」を組み込み、実践の結果を深く振り返り、持続的な成長につなげましょう。
5️⃣ ロールプレイを繰り返す:段階的な成長を促す
ロールプレイは、1回で完結するものではありません。繰り返し行うことで、新人ケアマネジャーが段階的にスキルを身につけ、自信を深めていくことが可能です。
• 成長のステップ
o はじめは簡単なシナリオで基礎を練習。
o 慣れてきたら、応用的なシナリオや複雑なケースに挑戦。
o 成長を具体的に評価し、自分の変化を実感できるようにする。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「継続的な学び(Lifelong Learning)」を念頭に置き、長期的な成長を支える仕組みをデザインしましょう。
🌟 最後に:ロールプレイがもたらす未来
ロールプレイは、新人ケアマネジャーが自信と実力をつける絶好の機会です。失敗を恐れずに安全に学べる場を提供することで、現場での対応力が格段に向上します。また、ロールプレイに参加することで、主任ケアマネジャー自身もチームを育てる喜びを感じることができるでしょう。
ソーシャルワークの理念を基盤に、実践力を育む「体験型学習」を積極的に活用し、新人ケアマネジャーと共に成長していきましょう。その一歩が、地域全体の支援力向上につながります。