125.職場の「暗黙のルール」をアップデートする
2025.08.06 |投稿者:神内秀之介
介護現場には、長年の経験と習慣の中で形作られてきた「暗黙のルール」が存在します。それらは、最初は効率的な運営や業務の安定性を保つために役立つものだったかもしれません。しかし、時代の変化や現場のニーズが進化する中で、この「暗黙のルール」が逆に足かせとなり、チームの成長や利用者さんへのケアの向上を妨げてしまうこともあります。
「なんとなくこんな風にするのが当たり前」と思われているルールをそのままにしておくのではなく、現場の現実に合わせてアップデートする――それが、ミドルマネジャーの重要な役割です。ここでは、哲学的な視点を通じて、暗黙のルールを見直し、より良い職場作りを目指すためのアプローチを考えます。
- 「なぜそうしているのか」を問い直す
哲学者ソクラテスは、「無知を自覚することが知恵の始まりだ」と語りました。「暗黙のルール」が当たり前となっている職場では、なぜそれが行われているのかが忘れられたまま、ただ繰り返されていることがあります。
たとえば、「業務終了後の全体ミーティングは本当に必要か?」「この書類の手続きはなぜ必須とされているのか?」といった問いを立ててみることで、ルールの背景や目的を再確認できます。その中で、すでに役割を果たしていないルールや、改善の余地があるプロセスが見えてくるはずです。「なぜ」を問い直すことで、不必要な慣習が浮き彫りになります。 - 「現場の声」を拾い上げる
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「真の理解は対話の中にある」と述べました。暗黙のルールをアップデートするには、現場で実際に働くスタッフの声を聞くことが重要です。特に、ルールに関する不満や戸惑い、改善アイデアを引き出すことは有益です。
たとえば、「この手順はやりづらいと感じている人はいる?」「何かを変えるとしたらどんな方法が良さそう?」といった質問を投げかけ、意見を集める場を設けましょう。現場の声を反映することで、スタッフの納得感が高まり、変化への抵抗も少なくなります。現場の声を拾うことで、実行可能な改善案が生まれます。 - 変化を恐れず「試す」勇気を持つ
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「変化を受け入れることが、成長への第一歩だ」と語りました。「暗黙のルール」を見直す際、全てを一度に変えようとする必要はありません。まずは「試してみる」という姿勢で、小さな変化を取り入れることが大切です。
たとえば、「この業務の手順を一度だけ簡略化してみよう」「1週間だけ新しい申し送り方法を試してみよう」というように、短期間の実験として変更を試みます。その結果を振り返り、効果があれば徐々に取り入れるというアプローチが有効です。試す勇気が、新しいルールを作るきっかけになります。 - 「ゴール」を共有し、納得感を育てる
哲学者アリストテレスは、「共通の目的が人々を結びつける」と語りました。暗黙のルールを変更する際は、それが「何のための変化なのか」をチーム全員で共有することが重要です。
たとえば、「この変更は利用者さんの安全性向上につながる」「このルールを見直すことで業務の効率が上がり、スタッフの負担が減る」といったゴールを明確に示します。共通の目的を意識することで、ルール変更への理解と協力がスムーズになります。ゴールを共有することで、納得感と一体感が生まれます。 - 定期的に「振り返り」を行う
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「成長は振り返りの中にある」と述べました。一度ルールを変更したらそれで終わりではなく、定期的に振り返りを行い、その効果や課題を確認することが重要です。
たとえば、「変更したルールは現場でどれだけ機能しているか」「不便に感じている点はないか」といったフィードバックを定期的に集めて分析します。この振り返りのプロセスを続けることで、新しいルールが現場に根付き、さらに改善を重ねることができます。振り返りが、ルールを進化させる原動力となります。
まとめ
職場の「暗黙のルール」をアップデートするためには、「なぜを問い直す」「現場の声を拾う」「変化を試す勇気を持つ」「ゴールを共有する」「定期的に振り返る」という5つのポイントが重要です。それは、現場に適応した仕組みを作り上げ、チーム全体の効率と働きやすさを向上させるための道筋でもあります。