第5章『一歩目の精度・・・その計画に、誰の暮らしが映っているか』
2025.08.05 |投稿者:神内秀之介
「中期計画、ちゃんと読んでる?」
主任にそう聞かれて、沙耶はどきっとした。
頭の中には「地域連携」「ICT導入」「職員育成強化」などの文字。
でも、それが自分たちの来月の動きとどうつながるのか、よくわかっていなかった。
そのとき、会議資料の中に「単年度計画(2025年度)」という紙を見つけた。
そこには、施設研修の回数、記録ツールの改善、地域交流イベントの試行などが記されていた。
沙耶は思った。「これは、“未来の要素”を今の動きに翻訳した地図かもしれない」
彼女は夜勤の休憩中、職員同士の雑談に耳を澄ませた。
「今年も地域の夏祭り、法人で何か関われるかな」
「新しい記録システム、ちょっと使いこなせるか不安…」
「職員研修、内容がもっと現場寄りになるといいんだけど」
その言葉が、単年度計画と重なった。
夏祭りの“地域交流イベント”への参画。
ICT記録ツールの“操作研修”。
職員育成の“現場ヒアリング反映”。
沙耶はこう感じた。
「計画って、“言葉で書かれた未来”じゃなくて、“誰かの願いの現在形”なんだ」
彼女は法人の研修担当者にメモを渡した。
「研修計画、現場職員が“どうなりたいか”の声を反映できないでしょうか。
例えば“新人が記録に自信をもてる研修”とか、
“中堅が後輩支援を学べる場”とか」
その後、単年度研修計画に“職員タイプ別学習支援項目”が追加された。
また、“現場からの提案を反映する余白欄”が設けられた。
ある日、沙耶は法人職員にこう語った。
「中期計画は、“理念の地図”。
単年度計画は、“ケアの歩幅”。
大事なのは、地図と歩幅のずれを見つけて、直せる構造があること」
評価項目【5 Ⅰ-3-(1)-② 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。】
それは、“整った表”だけでなく、「“現場の声が反映される翻訳力”と“歩幅の調整力”」によって評価される。
その年、法人の単年度計画資料の最後に、沙耶の言葉が載った。
「計画の中に、職員の“希望語”が見えるとき、
その一歩目は、ただの業務じゃなく、未来への参加になる」
職員の小さな声が、法人の大きな地図に触れる・・・
それは、“制度と暮らしが手をつなぐ瞬間”なのかもしれない。
#福祉サービス第三者評価を広げたい