124.部下の強みを活かすマネジメント


2025.08.05 |投稿者:神内秀之介

介護現場のミドルマネジャーにとって、部下一人ひとりの強みを見極め、それを活かしたマネジメントを実践することは、チームの力を最大化するために欠かせないスキルです。しかし、日々の忙しさの中で、「全員に同じように指示を出す」「誰かの不得意な部分を埋めることばかりに注力してしまう」という状況に陥ることもあるでしょう。
部下の強みを引き出し、それが最大限に活かされるチームを作ることは、個々のやる気を高めるだけでなく、チーム全体のパフォーマンスを向上させる鍵となります。ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、部下の強みを活かすマネジメントの考え方と方法について考えてみましょう。

  1. 強みを「見つける」ために観察する
    哲学者マルティン・ハイデッガーは、「重要なものは日常の中にひそんでいる」と述べました。部下の強みを見つけるためには、彼らが日々の業務の中でどのように振る舞い、どんな場面で輝いているかを注意深く観察することが重要です。
    たとえば、ある部下は利用者さんとの会話が得意で場を和ませる力を持っているかもしれません。一方で、別の部下は記録や計画作成といった緻密な作業に長けているかもしれません。このような「日々の中の小さな得意」を見逃さないことで、部下の強みを把握することができます。観察力が、強みを見つける第一歩です。
  2. 「他者との違い」を尊重する
    哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「人間はそれぞれ固有の力を持つ」と語りました。部下の強みを活かすためには、全員に同じスキルやアプローチを求めるのではなく、個性や違いを尊重し、それを活かすマネジメントを目指すことが大切です。
    たとえば、全員が同じように利用者さんへの声かけをするのではなく、得意分野に合わせて役割を分担する。コミュニケーションが得意な人には利用者さんとの対話を中心に、整理整頓が得意な人には備品管理や記録のフォローを任せるといった工夫をすることで、個性が力となります。違いを尊重することで、チーム全体の調和が生まれます。
  3. 強みを「伸ばす」フィードバックをする
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話の中で人は成長する」と述べました。部下の強みを活かすためには、それを単に見つけるだけではなく、具体的なフィードバックを通じて伸ばす働きかけが必要です。
    たとえば、「利用者さんへの自然な声かけが素晴らしいですね。その力を活かして、新人スタッフへの指導にも挑戦してみては?」と提案することで、部下は自分の得意分野をさらに磨き、新たな挑戦への意欲を持つようになります。ポジティブなフィードバックが、強みを深めるきっかけとなります。フィードバックが、部下自身の成長を後押しします。
  4. 「チームの中」で強みを活かす場を作る
    哲学者ゲオルク・ヘーゲルは、「全体は部分の調和の中で存在する」と語りました。部下の強みを活かすには、個人だけでなく、チーム全体の中でその強みが発揮される場を作ることが重要です。
    たとえば、「このスタッフが得意な部分を他の人が参考にできるように共有する」「強みを活かした役割分担を行う」といった形で、強みをチーム全体に広げることで、協力的で効率的な環境が整います。チーム全体で強みを活かす仕組みが、連帯感とパフォーマンスを向上させます。
  5. 強みを「評価」し、感謝を伝える
    哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「感謝は人の心を豊かにする」と述べました。部下が持つ強みに気づき、それを活かした時、その努力を評価し感謝の気持ちを伝えることは、彼らのモチベーションを維持するために大切です。
    たとえば、「〇〇さんの記録作成がチーム全体の効率を上げてくれました、ありがとう」といった具体的な感謝を部下に伝えることで、「自分の強みが認められている」と感じられ、さらなる意欲が湧きます。感謝を伝えることで、強みがさらに輝きます。

まとめ
部下の強みを活かすマネジメントを実現するためには、「強みを見つける」「違いを尊重する」「フィードバックで伸ばす」「チームで活かす場を作る」「感謝を伝える」という5つのポイントが重要です。それは、個々の力を最大化するだけでなく、チーム全体の調和を築き、利用者さんへのケアの質を向上させるプロセスでもあります。


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