9.認知症支援における高度なアセスメント力


2025.08.04 |投稿者:神内秀之介

認知症支援における高度なアセスメント力
〜主任ケアマネジャーが求められる「眼差し」と「技術」〜
認知症の進行は利用者一人ひとりに異なり、その支援においては画一的な対応が通用しません。主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、認知症を抱える利用者の生活をより良いものにするために、通常のケアマネジメントを超えた「高度なアセスメント力」が求められます。今回は、主任ケアマネジャーとしての視点を持ちながら、認知症支援で重要なアセスメント力について考えてみましょう。

1️⃣ アセスメントは単なる「評価」ではない
まず理解してほしいのは、アセスメントとは単なる「状態の評価」ではないということです。アセスメントとは、利用者の身体や認知機能だけでなく、その人生・価値観を理解し、適切な支援策を見出すための「包括的なプロセス」を意味します。
• 表面的な症状だけを見ない
認知症の「記憶障害」や「徘徊」といった表面的な症状だけにとらわれず、「なぜその行動を取るのか」を本人の背景や心理から見つめる視点が必要です。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「個別化(Individualization)」の理念を活用しましょう。利用者を一人の個人として理解し、その人らしい生活を追求することが、認知症支援のアセスメント力を高めるポイントです。

2️⃣ 「生活全体」を見るアセスメント
認知症支援では、利用者本人だけでなく、家族や生活環境全体を包括的に捉えることが重要です。認知症は、利用者の生活だけでなく、その家族や地域にも大きく影響を与えます。
• アセスメントの要素
o 生活環境:住環境が認知症の進行に適応しているか(手すり、照明、家具配置など)。
o 心理面:不安や孤独感、認知症によるストレスがどのように影響しているか。
o 家族の状況:家族がどの程度の介護負担やストレスを抱えているか。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「エコロジカルアプローチ」を活用し、利用者を取り巻く環境全体を観察しましょう。環境の改善が本人や家族のQOL向上につながることも多いです。

3️⃣ 行動の裏にある「理由」を探る
認知症による「問題行動」とされる事象(徘徊、暴言、拒否行動など)は、実は利用者自身が何らかの不快感や不安を表現しているサインである場合が多いです。主任ケアマネジャーには、その行動の背景にある「理由」を探る力が求められます。
• 行動の具体例と背景要因
o 徘徊:環境の変化や居場所を見失った不安。
o 暴言・拒否:介護者とのコミュニケーション不足や、意思が伝わらない苛立ち。
o 食事拒否:体調不良や食事内容への不満。
• 実践のポイント
直接の行動だけを見るのではなく、利用者の「気持ちや環境」を細かく観察し、対応策を考えることが重要です。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
ソーシャルワークの「共感(Empathy)」の理念を活かし、「なぜこの行動を取るのか」を利用者の視点に立って考える姿勢を持ちましょう。

4️⃣ 多職種連携でのアセスメント
主任ケアマネジャーとして、認知症支援では多職種との連携が必要不可欠です。医療職、福祉職、介護職など、さまざまな専門家の視点を取り入れることで、より正確で包括的なアセスメントが可能になります。
• 連携のポイント
o 医師や看護師との連携による身体的・医学的な視点の補完。
o 介護職からの現場での観察情報の共有。
o 家族からの意見や感情を含めた全体像の把握。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「多職種協働(Interdisciplinary Collaboration)」の理念を基に、各専門職の意見をまとめ、最善の支援策を導き出しましょう。

5️⃣ 「柔軟性」と「継続性」のあるアセスメント
認知症支援は一度のアセスメントで完了するものではありません。進行性の疾患である認知症では、利用者の状態やニーズが絶えず変化するため、「継続的に見直す」姿勢が重要です。
• 柔軟な対応
定期的にモニタリングを行い、状態の変化に応じてケアプランを調整します。
• チーム内での共有
アセスメント結果をチーム全体で共有し、一貫した対応を進めます。
• ソーシャルワーク視点でのヒント
「プロセス重視(Process-Oriented)」を意識し、利用者の状況に応じて柔軟に対応する姿勢を持ちましょう。

🌟 最後に:アセスメントが支援の「鍵」になる
認知症支援において、主任ケアマネジャーのアセスメント力は、利用者本人の生活の質を左右する大切な要素です。表面的な症状だけでなく、利用者の気持ちや背景、環境全体を捉える「深い眼差し」と「実践的な技術」が求められます。
認知症支援は簡単ではありませんが、あなたの高度なアセスメントによって、利用者や家族が笑顔を取り戻し、安心して暮らせる未来へとつながります。ソーシャルワークの理念を胸に、今日からの実践を一歩ずつ積み上げていきましょう!


 |  一覧に戻る | 

お問い合わせはこちら

介護経営のコンサルタント顧問契約。
経営者・理事長の経営参謀として、業務効率化から
利用者・入居者獲得まで、
様々な経営のアドバイスを行います。

営業時間:平日火曜日・水曜日・木曜日10時から16時


メールでのお問い合わせ