123. 他部門との連携をスムーズにする方法
2025.08.04 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、多職種や他部門との連携が不可欠です。看護部門、リハビリ部門、栄養部門、さらには事務部門など、さまざまな専門性を持つ人々と協力しながら利用者さんのケアを支えていくためには、チームワークが鍵となります。しかし、部門間の目標や価値観の違い、情報共有の不足などが原因で、連携がスムーズにいかず、ストレスや課題を抱えることも少なくありません。
ここでは、哲学的な思考を取り入れながら、他部門との連携を円滑にする方法について考えてみます。それは、効率を追求するだけではなく、信頼と相互理解を基盤とした「調和」を目指すアプローチです。
- 共通の「目的」を明確にする
哲学者アリストテレスは、「行動は目的を持つことで意味を成す」と語りました。他部門との連携をスムーズにするためには、まず「共通の目的」を明確にし、それを全員で共有することが重要です。
たとえば、「利用者さんが安心して日常生活を送れる環境を作る」「一人ひとりの生活の質を高める」といった大きなゴールを改めて確認し、その目的に向かって部門ごとの役割を整理することで、連携に一貫性が生まれます。共通の目的が意識されることで、部門間の動きがスムーズになります。一致した目的意識が、協力の基盤を作ります。 - 「違い」を尊重する
哲学者エマニュエル・レヴィナスは、「他者の違いを受け入れることが真の倫理の始まりである」と述べました。部門ごとに専門性や価値観が異なるのは当然ですが、その違いを尊重することが連携を円滑にする第一歩です。
たとえば、「看護部門では急性のケアを重視する」「リハビリ部門では長期的な身体機能の向上を目指す」といったように、それぞれの視点や役割を理解し、互いを補い合う姿勢を持つことが重要です。他部門の立場や視点を尊重することで、協力しやすい空気が生まれます。違いを受け入れることが、調和への道を開きます。 - 「対話」を重ねる
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話によって理解が深まる」と語りました。他部門との連携がうまくいかないと感じる場合、対話が不足していることがよくあります。定期的な対話を通じて、誤解や認識のズレを解消することが大切です。
たとえば、定例ミーティングやカンファレンスを活用して、「利用者さんにとって何が最善か」を中心に意見を出し合う機会を持ちましょう。また、カジュアルな場での対話も大切です。「最近どうですか?」と一声かけるだけでも、信頼関係が深まります。対話は、信頼と協力を築く最も効果的な手段です。 - 情報共有を「見える化」する
哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、「明確なコミュニケーションが行動を決定する」と述べました。他部門との連携では、情報共有の仕組みを整え、誰もが必要な情報にアクセスできるようにすることが非常に重要です。
たとえば、利用者さんのケアプランを共有するためのシステムやツールを活用する。必要な情報を一目で分かる形に整理し、タイムリーに更新することで、「どの部門とどのように連携しているのか」が明確になります。情報の透明性が、誤解や連絡ミスを防ぎます。情報の「見える化」が連携をスムーズにします。 - 課題を「チームで解決する」姿勢を持つ
哲学者ジャン=ポール・サルトルは、「人間は他者との関係の中で自由を見つける」と述べました。他部門との間で課題が生じた場合、それを一方的に解決しようとするのではなく、チーム全体で共有し、解決策を模索する姿勢が大切です。
たとえば、連携がうまくいかない原因について、「何がうまくいかなかったのか」「次に同じことが起きないようにどうすれば良いか」を部門間で話し合い、解決策を一緒に考える。この「共に考える」プロセスが、連携を強化する大きな一歩となります。チームで課題を乗り越える姿勢が、協力関係を強固にします。
まとめ
他部門との連携をスムーズにするためには、「共通の目的を明確にする」「違いを尊重する」「対話を重ねる」「情報共有を見える化する」「課題をチームで解決する」という5つのポイントを意識することが重要です。それは、単なる業務の効率を超え、信頼と協調の上に築かれた本当の意味での協働を実現するためのプロセスです。