122.部下の意見を引き出すための工夫
2025.08.03 |投稿者:神内秀之介
部下の意見を引き出すための工夫――哲学が教える「対話」と「信頼」の育て方
介護現場のミドルマネジャーとして、チーム全体をスムーズにまとめ、利用者さんへの最高のケアを提供するためには、部下一人ひとりの意見やアイデアを引き出すことが欠かせません。しかし、「何か意見はありますか?」と問いかけても、場の空気が静まり返ってしまうことも多いのではないでしょうか。その背景には、部下が「意見を聞いてもらえないかもしれない」「話すことで責任が重くなるかも」と感じている可能性があります。
ここでは、哲学の視点を取り入れながら、部下の意見を自然と引き出すための工夫について考えてみます。意見が言いやすい職場環境を作ることは、チームの力を最大化し、利用者さんにもより良いケアを届ける大切な一歩です。
- 「聞く姿勢」を整える
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話は互いの理解を深める場である」と語りました。部下の意見を引き出すためには、まず「話をちゃんと聞いてもらえる」と感じてもらうことが必要です。それは、ただ耳を傾けるだけでなく「聞く姿勢」を相手に示すことでもあります。
たとえば、部下が話している間はスマホを見たり、他の作業をしない。「うん」とうなずいたり、「それはどういうこと?」と興味を持って質問をする。このように「あなたの話を真剣に聞いていますよ」と伝える態度が、部下に安心感を与え、意見を話しやすくする第一歩です。聞く姿勢が、対話の扉を開きます。 - 「否定しない場」をつくる
哲学者エマニュエル・レヴィナスは、「他者との関係は尊重から始まる」と述べました。部下が意見を出しにくいと感じる理由の一つに、「否定されるのが怖い」という心理があります。意見を引き出すためには、どんな考えや感情も尊重される場をつくることが重要です。
たとえば、部下が意見を述べた際、「それは違うよ」と否定するのではなく、「それは面白い考え方だね」とまず受け入れること。その上で、意見の背景や目的を丁寧に聞いていくことで、部下は「この職場では何を言っても大丈夫だ」と感じ、積極的に発言するようになります。否定しない姿勢が、意見を引き出す土壌を育てます。 - 小さな「問い」を投げかける
哲学者ソクラテスは、「問いかけることが知恵の始まりである」と説きました。部下が自ら考え、意見を言いやすくするためには、大きなテーマを投げかけるのではなく、小さな問いを分かりやすく提示することが効果的です。
たとえば、「この利用者さんにはどんな声かけが効果的だと思う?」「次回のミーティングでは何を改善すると良いかな?」といった問いを投げかけることで、部下は具体的なシーンを思い浮かべながら、自分の意見を表現しやすくなります。小さな問いが、意見を引き出すきっかけになります。 - 「実際の行動」に繋げる
哲学者ジョン・デューイは、「学びは行動の中で深まる」と述べました。部下の意見が具体的な行動や変化につながった時、その意見の価値が実感され、次の意見がより出しやすくなります。
たとえば、部下が出した意見を採用し、「この方法を試してみよう」とみんなで実行してみる。そして、その結果や成果を共有することで、「自分の意見が職場に貢献している」という達成感が得られます。意見を行動につなげるサイクルを作ることで、部下の発言意欲をさらに高めることができます。行動に結びつけることで、意見の価値が生まれます。 - 継続的に「意見」を求める文化を育む
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「一貫性が信頼を生む」と語りました。日常的に意見を求める姿勢を持ち、一貫して部下の声を大事にしていくことで、職場全体に「意見を出しても良い」という文化が根付いていきます。
たとえば、定期的なミーティングで「最近気づいた改善点はある?」「何か困っていることは?」と意見を求める場を設ける。また、日常の中でも「どう思う?」と気軽に話しかけることで、意見を言うことが当たり前の空気を作り上げます。意見を求める姿勢の継続が、職場文化を変えます。
まとめ
部下の意見を引き出すためには、「聞く姿勢を整える」「否定しない場をつくる」「小さな問いを投げかける」「意見を行動に繋げる」「意見を求める文化を育む」という5つのポイントを意識することが大切です。それは、単に意見を出させることではなく、チーム全体の力を引き出し、働きやすい職場環境を作るためのプロセスでもあります。