120.職場の課題を見つけ出す観察力
2025.08.01 |投稿者:神内秀之介
介護現場では日々の忙しさの中で、「目の前の業務に追われて気づかなかった課題」や、「なんとなく感じる違和感」が、チーム全体の効率や利用者さんへのケアの質に影響を与えることがあります。その課題をいち早く見つけ出し、解決策を講じることは、ミドルマネジャーとしての重要な役割のひとつです。しかし、課題はしばしば表面的に現れるものではなく、細やかな観察力と柔軟な思考が求められます。
ここでは、哲学的な視点を通じて「職場の課題を見つけ出す観察力」をどのように磨き、実際の改善につなげるかを考えてみましょう。
- 「小さな変化」に目を向ける
哲学者マルティン・ハイデッガーは、「本質は日常の中に隠されている」と述べました。職場の課題は、目立つ形で現れることは少なく、日々の中で起こる小さな変化や違和感の中に潜んでいます。
たとえば、スタッフの動きが以前よりスムーズでなくなった、利用者さんの表情に微妙な疲れが見える、といった小さなサインに気づくこと。このような変化を見逃さず、「どうしてこの変化が起きたのだろう」と考えることが課題発見の第一歩です。小さな変化を見逃さない目が、課題を見つけ出す力を育てます。 - 「当たり前」を疑う
哲学者ソクラテスは、「問うことこそが知恵の始まりである」と語りました。職場で長年の慣習や「当たり前」とされているルールや手順が、実は非効率や課題を生み出している可能性があります。
たとえば、「なぜこの業務はこの順番で行われているのか」「このルールは本当に今の現場に合っているのか」と、自ら問いを立ててみることで、目に見えなかった課題に気づけることがあります。「当たり前」を疑う姿勢が、新しい視点をもたらします。深く問う力が、現場の隠れた課題を浮き彫りにします。 - 「利用者さんの視点」で考える
哲学者エマニュエル・レヴィナスは、「他者の存在に向き合うことが倫理の出発点である」と述べました。介護現場の課題を探るためには、利用者さんの立場に立って現場を観察することが重要です。
たとえば、「利用者さんがもっと安心してケアを受けられるにはどうすれば良いか」「この設備や対応が本当に利用者さんにとって適しているか」といった視点で現場を見ることで、利用者さん自身が口にしないけれど感じている課題に気づけることがあります。利用者さんの立場に立つことが、課題の本質に近づく道筋を作ります。 - チーム全体の「流れ」を観察する
哲学者ゲオルク・ヘーゲルは、「全体は部分の調和の中に存在する」と説きました。職場の課題は、個々のスタッフや業務だけでなく、チーム全体の流れや連携の中に現れることもあります。
たとえば、「同じ業務に時間がかかっている」「情報の伝達ミスが目立つ」といった現象があれば、チーム全体の動きを観察し、「どこで停滞が生じているのか」「どの部分の連携が弱いのか」を探ることが重要です。チーム全体を俯瞰する視点が、課題の改善につながります。 - 振り返りを「習慣化」する
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「振り返りは成長をもたらす」と語りました。課題を見つけ出す観察力を磨くためには、日々の業務を振り返る時間を意識的に作ることが欠かせません。
たとえば、「今日気づいた小さな違和感は何か」「改善できるポイントはなかったか」といった問いを定期的に考えるだけでも、課題に気づく力が向上します。また、ミーティングなどでチーム全体に同じ問いを投げかけることで、より多くの視点から課題を発見することができます。振り返りの習慣が、現場の進化を促します。
まとめ
職場の課題を見つけ出す観察力を磨くためには、「小さな変化に目を向ける」「当たり前を疑う」「利用者さんの視点で考える」「チーム全体を俯瞰する」「振り返りを習慣化する」という5つのアプローチが有効です。それは、現場の効率やケアの質を向上させるだけでなく、チーム全体の成長を支える重要な基盤でもあります。