117.介護現場でのタイムマネジメント


2025.07.29 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、利用者さんのケアから事務作業、チームメンバーへのフォローまで、時間をどのように使うかがその質を大きく左右します。しかし、日常的に忙しさに追われる中で、「もっと時間があれば……」と感じる瞬間は少なくないでしょう。限られた時間の中で、どのように効率よく動き、充実した成果を上げるかは、ミドルマネジャーにとって欠かせない課題です。
ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、介護現場でのタイムマネジメントの本質と、その具体的な取り組みについて考えてみましょう。時間をただ管理するだけでなく、価値ある行動を生み出すためのヒントを探ります。

  1. 「限られた時間」を受け入れる
    哲学者セネカは、「時間は人間にとって最も貴重な資源である」と述べました。まず大切なのは、「時間には限りがある」ことを受け入れることです。いくら効率を追求しても、24時間以上の時間を生み出すことはできません。
    そのため、忙しさに振り回されるのではなく、どのタスクに時間を使うべきかを冷静に見極め、「自分がコントロールできる範囲」に意識を集中させることが重要です。時間は増やせないからこそ、一瞬一瞬を大切にする姿勢が、充実した現場を生み出します。限られた時間を受け入れることが、タイムマネジメントの第一歩です。
  2. 「優先順位」を見極める
    哲学者アリストテレスは、「最も重要なものに集中することで、行動は意味を持つ」と語りました。介護現場では、多くのタスクが同時進行で発生するため、何を優先するべきかを正確に判断する力が求められます。
    たとえば、利用者さんの体調変化や緊急対応を最優先にしつつ、記録業務や事務作業は時間を調整して対応するなど、タスクの「緊急性」と「重要性」を整理する癖をつけましょう。優先順位を定めることで、混乱を防ぎ、最も重要な行動に集中できます。優先順位を見極める力が、時間を有効に活用する鍵となります。
  3. 「習慣化」で無駄を減らす
    哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、「繰り返されるルールの中に、人は自由を見つける」と述べました。タイムマネジメントを向上させるには、日々の業務を「習慣化」し、効率を高めることが有効です。
    たとえば、定時の申し送りや記録の手順を決め、ルーティン化することで迷いや無駄な動きを減らします。また、日々のスケジュールを事前に立てることで、「次に何をするべきか」を迷う時間を削減し、本来の業務に集中できる環境を作ります。習慣化が、スムーズな時間管理を可能にします。
  4. 「余白」を作る工夫をする
    哲学者アルベール・カミュは、「余白があるからこそ、行動は生き生きとする」と語りました。タイムマネジメントの中で、あえて「余白」を作ることも重要です。ぎっしり詰まったスケジュールでは、予期せぬトラブルや突発的な対応に追われ、かえって効率が悪くなってしまうことがあります。
    たとえば、利用者さんとのコミュニケーションやスタッフ同士の相談ができる短い時間をスケジュールに組み込むことで、余裕を持った動きが可能になります。この余白が、思いやりや柔軟性を生む土壌となります。余白を意識することで、現場全体の調和が生まれます。
  5. チームで「時間」を共有する
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話の中で真の理解が生まれる」と述べました。介護現場では、タイムマネジメントを個人だけで行うのではなく、チーム全体で時間を共有し、連携を深めることが効率化の鍵となります。
    たとえば、「この時間帯に利用者さんの食事介助を集中して行いましょう」「次の1時間で記録作業を分担しましょう」といった形で、全員が同じ時間感覚を共有することで、一体感のある動きが可能になります。チーム全体が「時間を共有する」という意識を持つことで、無駄を減らし、効率的に業務を進めることができます。チームで時間を共有することで、全体の動きがスムーズになります。

まとめ
介護現場でのタイムマネジメントを向上させるためには、「時間の限界を受け入れる」「優先順位を見極める」「業務を習慣化する」「余白を作る」「チームで時間を共有する」という5つのポイントを意識することが重要です。それは、単なる効率化ではなく、より良いケアと働きやすい現場を作るためのアプローチでもあります。


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