116.部下の意欲を引き出す目標設定


2025.07.28 |投稿者:神内秀之介

介護現場におけるミドルマネジャーの役割は、ただ業務を管理するだけではありません。チームの一人ひとりが自分の力を発揮し、やりがいを感じながら働ける環境を作ることも、その重要な役割の一つです。そのために欠かせないのが「目標設定」です。ただ数字や成果を求めるだけでは、部下の意欲を引き出すことは難しいでしょう。目標は、その人独自の価値観や得意分野、そして成長への思いと結びついたとき、初めて力強い原動力となります。
ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、部下一人ひとりの意欲を引き出す目標設定の方法について考えてみましょう。

  1. 「意味のある目標」を共に考える
    哲学者ヴィクトール・フランクルは、「人は意味を見出すことで困難を乗り越える」と述べました。同じように、目標の達成が「自分にとって意味のあること」と感じられなければ、長続きする意欲は生まれません。
    たとえば、部下と一緒に「この目標を達成することで、利用者さんにどんな良い影響があるのか」「自分自身にどのような成長をもたらすのか」を話し合ってみてください。目標が単なる業務の一部ではなく、自分自身の価値や信念と結びついたものだと実感できたとき、より強い意欲が引き出されます。目標に意味を持たせることが、意欲の源泉となります。
  2. 達成可能な「小さな目標」を設定する
    哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「成功は小さな一歩の積み重ねにある」と語りました。部下が大きな目標に挑むとき、それが漠然としたものであればあるほど、途方に暮れ、やる気を失ってしまうことがあります。そのため、目標を達成可能な「小さなステップ」に分解することが大切です。
    たとえば、「利用者さんとのコミュニケーションを改善する」という大きな目標を、「1日1回、利用者さんの名前を呼びながら笑顔で声をかける」といった具体的な行動に分けてみます。こうした小さな目標を積み重ねることで、達成感を感じやすくなり、次の挑戦への意欲が湧いてきます。小さな目標が、大きな成功へと繋がります。
  3. 部下の「強み」を活かす目標を設定する
    哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「人は自分の特性を活かすことで充実感を得る」と述べました。部下の意欲を引き出す目標を設定する際には、その人の強みや個性を十分に考慮することが重要です。
    たとえば、「コミュニケーションが得意なスタッフには利用者さんや家族への対応を中心とした目標を」「冷静で緻密な仕事が得意なスタッフには記録の精度を上げる目標を」といった形で、その人の得意分野を活かせる目標を設定します。自分の強みが認められ、それを伸ばせる目標が与えられることで、部下は「自分がこのチームにとって必要な存在だ」と感じられるようになります。強みを活かす目標設定が、意欲の火を灯します。
  4. 進捗を「見える化」して励ます
    哲学者アルベール・カミュは、「人は成果を感じられるときに最も努力を続けられる」と語りました。目標までの道のりを可視化し、進捗を確認できるようにすることで、部下のモチベーションを持続させることができます。
    たとえば、「今日達成したことを簡単な記録としてまとめる」「チーム全体で進捗を共有し、小さな成功を祝う」といった工夫を取り入れます。自分がどれだけ前進しているかを実感できることで、達成感が生まれ、次の目標に向けた意欲が高まります。進捗を見える化することが、継続の力となります。
  5. 成果だけでなく「プロセス」を評価する
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「人間の成長は、その過程の中にある」と述べました。目標達成だけを評価するのではなく、目標に向けて努力を続けるプロセスそのものを認めることが、部下の意欲を高める大きなポイントです。
    たとえば、「利用者さんとのコミュニケーションが増えたこと自体が大きな進歩だね」「前に比べて、自分から意見を言う機会が増えたね」とプロセスを具体的に評価する言葉を伝えることで、部下は自己成長を実感し、さらなる挑戦を続けたくなるでしょう。プロセスを評価することが、成長と意欲を後押しします。

まとめ
部下の意欲を引き出す目標設定には、「意味のある目標」「小さな目標の積み重ね」「強みを活かす設定」「進捗の見える化」「プロセスの評価」という5つのポイントが欠かせません。それは、単なる業務の達成を越え、部下一人ひとりの成長とやりがいを育む道でもあります。


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