112.急なトラブル時の優先順位の付け方
2025.07.24 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、突然のトラブルや予期せぬ出来事が発生することが日常的にあります。利用者さんの急な体調変化やスタッフの欠勤、設備の不具合など、何から手をつければいいのか迷う状況に陥ることもあるでしょう。そんな時こそ、現場を支えるミドルマネジャーとしての「優先順位をつける力」が試される瞬間です。その判断が、チーム全体の動きとケアの質を大きく左右します。
ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、急なトラブル時にも冷静に優先順位をつけ、最善の行動を選ぶための方法を考えてみましょう。
- 「本質」を見極める
哲学者ルネ・デカルトは、「何事も本質を捉えることが理解の鍵である」と語りました。トラブルが発生したとき、まずはその状況の本質を冷静に見極めることが優先順位をつける第一歩です。
たとえば、「利用者さんの急な体調変化」と「備品の不足」というトラブルが同時に発生した場合、命に直結する可能性がある前者が優先されるべきでしょう。本質を見抜くためには、冷静に「これはどれだけ緊急性があるか」「誰に影響を及ぼすか」を判断する視点が必要です。本質を見極める力が、最適な優先順位を導きます。
- 「影響範囲」を考える
哲学者アルベール・カミュは、「一つの行動は、それが波のように広がる影響を考慮すべきだ」と述べました。同様に、トラブルが発生したとき、その出来事がどれだけ多くの人に影響を及ぼすかを考えることも優先順位を決める重要なポイントです。
たとえば、「一人の利用者さんの体調対応」と「チーム全体の動きが停滞する問題」が発生した場合、後者が多くの人に影響を及ぼすものであれば、リーダーとして先にそちらの対応を行うべきかもしれません。影響範囲を考えることで、より効果的な行動を選択できます。
- 「緊急性」と「重要性」を区別する
哲学者アリストテレスは、「重要なことを優先し、急なことに流されるな」と説きました。優先順位をつけるとき、目の前の緊急性に振り回されるのではなく、その事象の「重要性」を冷静に判断することが必要です。
たとえば、一見緊急に見えるタスクが、実は後回しにしても問題ない場合があります。一方で、すぐには目に見えないが、放置するほどリスクが高まる重要な問題は、優先して対応すべきです。このように、緊急性と重要性を整理し、冷静に見極めることで、優先順位を適切に設定できます。緊急性と重要性の区別が、最適な行動を可能にします。
- 「チーム」を信頼して委ねる
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「人は対話と関係性の中で成長する」と語りました。トラブルの際、自分一人で全てを抱え込むのではなく、チームに仕事を適切に委ねることも重要なスキルです。
たとえば、「私は利用者さんの体調対応をするので、備品の手配を誰かお願いできますか?」といったように、チームメンバーの力を信じて任せることで、自分が本当に優先すべきことに集中することができます。リーダーが冷静に指示を出すことで、チーム全体がスムーズに動き出します。信頼して委ねる姿勢が、円滑な解決へと繋がります。
- 振り返りを「次」に活かす
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「困難の中にこそ、次への学びがある」と述べました。トラブルを乗り越えた後は、その経験を振り返り、次回への備えを整えることが重要です。
たとえば、「今回の対応で何がうまくいったのか」「どうすればもっとスムーズに解決できたか」をチーム全体で話し合い、同じ問題が起きたときに迅速に対処できる仕組みを構築します。振り返りを繰り返すことで、優先順位をつける力がさらに磨かれます。振り返りが、成長と改善の礎となります。
まとめ
急なトラブル時の優先順位の付け方は、「本質を見極める」「影響範囲を考える」「緊急性と重要性を区別する」「チームに委ねる」「振り返りを次に活かす」という5つのポイントに集約されます。それは、混乱の中でも冷静さを保ちながら、チーム全体を効果的に動かすための判断力を養うプロセスでもあります。