111.「合理性」と「人間らしさ」のバランス


2025.07.23 |投稿者:神内秀之介

介護の現場は、多くの業務と責任が交錯する忙しい日常の中で、利用者さんに最善のケアを提供する場です。しかし、業務内容が多岐にわたるため、「効率よく動きたいのに、どうしても時間が足りない」と感じることもあるでしょう。現場全体の効率を上げることは、利用者さんへのケアの質を向上させるだけでなく、スタッフ一人ひとりの負担を軽減し、働きやすい環境を作るための鍵でもあります。

ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、現場の効率を上げるための工夫について考えてみます。合理性を追求しつつも、介護という「人と人」の仕事ならではの人間らしさを大切にする取り組みを探りましょう。

  1. 「全体像」を理解する
    哲学者ゲオルク・ヘーゲルは、「全体は部分の調和の中でのみ意味を持つ」と語りました。現場全体の効率を上げるためには、まずは「全体像」を理解することが重要です。

たとえば、「利用者さんの1日の流れ」と「スタッフの動き」を見える化し、誰がどの業務をどの時間帯に担っているのかを整理します。全体像を把握することで、業務が重複している部分や、逆に手薄になっている場面を見つけることができ、改善の余地が見えてきます。全体を俯瞰する視点が、効率化の第一歩です。

  1. 「仕組み」を整える
    哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、「システムが行動を導く」と述べました。現場の効率を上げるには、仕組みやツールを用いて業務の流れをスムーズにする工夫が欠かせません。

たとえば、記録業務で共有ツールやテンプレートを活用し、情報を迅速かつ正確に伝えられる仕組みを整える。また、申し送りの時間を短縮するために、事前にデジタルで情報を共有する仕組みを導入する。こうしたシステム化や仕組みづくりは、無駄を削減し、現場全体のスムーズな動きを支えます。仕組みを整えることは、現場の流れを効率化するための基盤です。

  1. 「役割」を明確にする
    哲学者ジャン=ポール・サルトルは、「人間は役割の中で自己を形成する」と述べました。現場の効率を高めるには、各スタッフの役割を明確にし、それに応じた動きを促すことが重要です。

たとえば、「この時間帯はAさんが利用者さんの食事介助、Bさんが記録作成を担当する」といったように、誰がどの業務を担うのかをはっきりさせることで、混乱を防ぎます。役割が明確になると、スタッフは自分が何を優先すべきかが分かり、効率的な動きが可能になります。役割を明確化することが、チーム全体のスムーズな連携を生み出します。

  1. 「優先順位」を見極める
    哲学者アリストテレスは、「重要なものを最優先にせよ」と説きました。多くの業務が同時に進行する介護現場では、効率よく動くために優先順位を見極める力が必要です。

たとえば、利用者さんの健康状態の変化や緊急対応が必要な場面を最優先とし、その他の業務は段階的に進める。業務の重要度を判断し、優先順位を明確にすることで、効率的かつスムーズに業務を進めることができます。優先順位を見極める力が、現場の動きを活性化させます。

  1. 「余白」をつくる
    哲学者セネカは、「休息は行動のエネルギーを生む」と述べました。現場全体の効率を上げるためには、忙しい中でも「余白」を作る工夫が必要です。

たとえば、「1日のスケジュールに5分間の短い休憩を取り入れる」「業務の合間にスタッフ同士が雑談できる余裕を持たせる」といった工夫を行います。この余白が、心身のリフレッシュを促し、次の業務に集中するためのエネルギーを生み出します。余白を大切にすることが、現場全体の活力を支える鍵となります。

まとめ
現場の効率を上げるためには、「全体像を理解する」「仕組みを整える」「役割を明確にする」「優先順位を見極める」「余白をつくる」という5つのポイントを意識することが重要です。それは、ただ単に効率を追求するのではなく、人間らしさと働きやすさを両立させるための道でもあります。


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