105.「気づき」と「寄り添い」のリーダーシップ
2025.07.17 |投稿者:神内秀之介
介護の現場は、利用者さんと直接向き合う責任感あふれる日々が続く仕事です。それだけに、時にはスタッフの中に心や体の疲れが蓄積し、知らず知らずのうちに士気やパフォーマンスが低下してしまうことがあります。ミドルマネジャーとして、部下の疲れにいち早く気づき、適切にフォローすることは、チーム全体の健康と働きやすさを守るために欠かせないスキルです。
ここでは、哲学的な視点を交えながら、「部下の疲れを見抜く観察力」をどのように養い、実践に活かすかを考えてみましょう。
- 「表情」と「行動」に現れるサインを見逃さない
哲学者マルティン・ハイデッガーは、「人間はその存在を行動で示す」と語りました。部下の疲れは、言葉ではなく表情や行動の中に現れることが多いものです。その小さな変化を見逃さない「観察力」を持つことが大切です。
たとえば、最近笑顔が減っている、作業が遅れている、同じミスを繰り返している……といった変化があれば、それは疲れのサインかもしれません。「最近どう?」と軽く声をかけるだけでも、相手が本音を話すきっかけを作ることができます。行動や態度の小さな変化を見逃さないことが、支える第一歩となります。
- 「対話」の中に疲れのヒントを探る
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話は他者の真実を知る手段だ」と述べました。部下の疲れを見抜くためには、日常の対話を通じて、相手の内面にある状態を理解することが重要です。
たとえば、「最近忙しくない?」「何か気になることがあれば教えてね」と普段の会話の中で聞き出してみる。話をじっくり聴き、相手の感情に寄り添うことで、疲れの原因や状況を探ることができます。対話は部下との信頼関係を深める機会でもあります。対話を習慣化することで、相手の本心に気づく力が磨かれます。
- 「チームの視点」から気づく
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「一人では真実に気づけない。集団の中で見えるものがある」と説きました。部下の疲れを見抜くには、個人だけでなく、チーム全体の動きや雰囲気にも注目することが大切です。
たとえば、「最近、みんなの間でフォローが増えている」「あるスタッフに仕事が偏りがちだ」といったチーム内での動きから、誰かに負担が集中している兆候を見つけることができます。チーム全体の視点を持つことで、疲れの原因を根本的に取り除く対策が可能になります。チームの流れを読み取る力が、早期発見のカギとなります。
- 疲れの「予防」に目を向ける
哲学者アルベール・カミュは、「予防とは、未来を見据えた最善の選択である」と語りました。部下が疲れ切ってしまう前に、働きやすい職場環境を整えることも大切です。
たとえば、業務の負担が偏らないようスケジュールを調整したり、短い休憩をこまめに取れるようルールを見直す。また、感謝やねぎらいの言葉を日常的に伝えることで、心理的なストレスを軽減することも効果的です。疲れのサインが出る前から細やかなケアを施すことで、疲労を未然に防ぐ環境が作れます。予防の視点を持つことが、健康的な職場の土台を作ります。
- 自分自身の「余裕」を確保する
哲学者セネカは、「他者を助けるには、まず自分を整えよ」と語りました。部下の疲れを見抜きフォローするためには、リーダーである自分自身が冷静で余裕のある状態を保つことが欠かせません。
たとえば、忙しい中でも自分の体調やメンタルを整え、リフレッシュする時間を意識的に確保することが大切です。自分に余裕があれば、部下の状態に目を配る余力が生まれ、心の余白を持って相手に寄り添うことができます。自分の状態を整えることが、他者に気づくための第一歩です。
まとめ
部下の疲れを見抜く観察力を育むためには、「表情や行動の変化に気づく」「対話を重ねる」「チーム全体の視点を持つ」「疲れの予防策を施す」「自分自身の余裕を確保する」といった5つのポイントを意識することが重要です。それは、一見小さな工夫のように見えて、チーム全体の健康と安心を守るための大きな力になります。
