100.「良きケア」の探究
2025.07.12 |投稿者:神内秀之介
介護の現場で利用者さんの満足度を高めることは、介護職としての使命であり、チーム全体が目指す共通のゴールです。しかし、「満足」という目に見えないものを追求するには、一体どのようなアプローチが必要なのでしょうか。それは、単に目先の改善にとどまらず、利用者さんの心に寄り添い続ける「哲学的な探究」の過程とも言えます。
ここでは、哲学者たちの教えをヒントに、利用者満足度を高めるための現場改善にどのように取り組むべきかを考えてみましょう。
- 「相手にとっての満足」を問い直す
哲学者ソクラテスは、「問うことから知恵が始まる」と述べました。同じように、利用者さんの満足度を高めるためには、「利用者さんにとっての満足とは何か?」を問い続けることが出発点です。
たとえば、「どんな時間が楽しいと感じるのか」「どんなケアが安心につながるのか」といった質問を利用者さん一人ひとりに投げかけることで、その人ならではの価値観や希望が見えてきます。満足の定義は一人ひとり異なるため、まずはその多様性を理解することが重要です。問い直しの姿勢が、満足度向上の道筋を示します。
- 「小さな声」に耳を傾ける
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「真の理解は対話の中にある」と語りました。満足度を高める改善を行うには、利用者さんやスタッフから寄せられる小さな声に耳を傾けることが欠かせません。
たとえば、「この椅子だと座りやすい」「この音楽はリラックスできる」といった日々の些細な反応や言葉には、大きな改善のヒントが隠されています。そうした小さな声を積み重ね、反映させることで、日々のケアや施設環境が利用者さんにとってより心地よいものへと進化していきます。耳を傾ける姿勢こそが、現場改善の力を引き出します。
- 「現場の目」で課題を見つける
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「真実は足元にある」と述べました。利用者満足度を高めるためには、現場の視点で課題を見つけ出し、具体的な改善を行うことが重要です。
たとえば、「特定の時間帯にスタッフが忙しすぎて利用者さんに十分な声かけができていない」「共有スペースの動線が不自然で移動が大変」といった現場特有の問題に気づくこと。スタッフとのミーティングや現場観察を通じて、こうした課題を洗い出し、改善案を共有することで、現場に即した具体的な変化をもたらすことができます。現場に目を向けることが、満足度を高める最初の一歩です。
- 「チームで共有する」改善意識
哲学者マルティン・ブーバーは、「人は他者との関係の中で真に存在する」と語りました。現場改善を成功させるためには、一人で抱え込むのではなく、チーム全体で共有する意識が必要です。
たとえば、「この利用者さんにはこんな対応をしてみたら、表情が柔らかくなった」といった成功体験をスタッフ間で共有する。また、全員が意見を出せるミーティングを定期的に行い、「どうすれば利用者さんにもっと喜んでもらえるか」を共に考える場を作ることも効果的です。チーム全体で改善に取り組むことが、より大きな成果を生み出します。
- 「継続」と「検証」を習慣化する
哲学者アルベール・カミュは、「行動の意味は、それが繰り返される中で深まる」と述べました。改善は一度行ったら終わりではなく、継続的に取り組み、成果を検証しながらアップデートを重ねることが大切です。
たとえば、新しいケアアプローチを導入した後、その効果を利用者さんやスタッフからフィードバックしてもらい、「何がうまくいったのか」「さらに改善できる点はあるか」を定期的に見直します。このサイクルを回し続けることで、利用者満足度を高める取り組みが進化し続けます。改善を継続し、検証する姿勢が、現場の質を向上させます。
まとめ
利用者満足度を高めるための現場改善は、「満足を問い直す」「小さな声に耳を傾ける」「現場視点で課題を見つける」「改善意識をチームで共有する」「継続と検証を行う」という5つの要素に基づいて進めることが重要です。それは、日々の業務をただこなすのではなく、利用者さんの心に寄り添いながら現場を良くする努力の積み重ねです。
